結婚前からレス。妊活のためだけセックスする夫婦は不幸せ？【モア・リポート61】

1980年──、いまから約40年前。女性の「性」の本音を語る「モア・リポート」が誕生し、2017年までに延べ1万2千人を超える女性たちの性を見つめてきました。

そして、恋愛やセックスがいっそう多様化している現在。20代、30代の体験談を取材した新「モア・リポート」をお届けします！

୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧

ーDATAー

矢代さん（仮名） ／30代／会社員／既婚

୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧

ーー結婚前からセックスレスに？

はい。今の夫とは5年の交際期間を経て結婚したのですが、現在までセックスレス歴は10年以上です。（以下同、矢代さん）

ーーセックスレスになった経緯は？

つきあって3年目くらいに同棲をはじめたのがきっかけです。

一緒に生活するようになって夫から誘われることがなくなったんです。私からセックスを誘うようになったのですが「疲れてるから」「明日仕事が忙しいから」と断られることが増えました。

ーー同棲当時、セックスレスを理由に別れることを考えなかったのですか？

なかったですね。私は夫のことが好きだったので、セックスを断られたとしても「この人しかいない！」と思っていました。デートもよくしていたし、人柄も良く、結婚するならほかの人は考えられませんでした。

ーー2人の間にレス以外の問題がなかったのですね？

そうですね。結婚したら新婚の新鮮さが生まれ、「レスは改善されるはず！」と信じ込んでいたのもあります。そんな中、夫からプロポーズされ結婚に至りました。

ーー結婚してレスは改善されましたか？

まったく改善されませんでした。私から何度誘っても、断られ続ける日々。私は24歳で結婚したのですが、周囲の友人はセックスも恋愛も楽しんでいたので、なぜ私だけレスに悩んでいるんだろうと寂しい日々でした。

ーーそもそもなぜレスになってしまったのでしょうか？

夫から言われたのは、「距離が近くなりすぎた」ということ。結婚前に同棲して、毎日一緒にいることで、家族になった＝エロを感じない、と。

ーー彼女ではなく家族になってしまった、ということですね。

はい。そうなってしまったのは、同棲時の私の行動も原因かもしれません。私たちはワンルームマンションに住んでいて、脱衣所がなかったんです。夫の前でも気にせず、裸で歩くこともあったので（笑）。

今更ながら、同棲しても結婚しても、“女”でいる努力は持っておけばよかったと思っています。

ーーその後どうなりましたか？

結局、新婚生活も変わらずレスという状況でしたが、お互い子どもがほしいという思いは共通していました。毎月、私が「今日お願いね」と排卵日前後に夫に声をかけ、セックスは子づくりのための作業になりました。

ーー子づくりのためのセックスは、どんなセックスですか？

「シャワー浴びてくる？」と声をかけて、2人ともシャワーを浴びたら「じゃあお願いします」という感じ。ロマンチックな雰囲気づくりも、キスもしません。作業です。

ーーその後、お子さんを出産されていますよね。

はい。子どもが生まれてからは、私たちの関係性は父と母になりました。決して性欲がなくなったわけじゃないけれど、夫に対する“性欲”はなくなりました。それから完レス（※完全にセックスレス）３年を経て、２人目がほしいと私から妊活を持ち掛け、２人目を産みました。

ーー3年間の完レスの間、旦那さんはどうしていたのでしょうか？

妊活中に「この3年間、どうしてたの？」と聞いたら「1人でしてたよ」と言っていました。「性欲がないわけじゃないけど、2人でしたいって気分ではない」とピシャリ。1人だけすっきりしてんじゃないよ！ とツッコミたくなりましたね。

ーー2回目の妊活中のセックスも作業的だったのでしょうか？

そうですね。私自身も「キスとか雰囲気とか、どうでもいいから早くやろう！」みたいなマインドになっていました。

私の中の心境の変化もありました。子育てを始めて、レスの悩みはちっぽけなものに感じるようになったんです。でもそれは、レスられ続けた結果、“そう考えるしかなかった”という方が正しいのかもしれません。

ーーレスで悩んでいた際は、離婚を考えた時もあるそうですね。

何度か考えました。結婚した当時は24歳で若く、周りは恋愛真っ盛りの時期なのに、セックスを拒否される体験は耐え難いものでした。でももし離婚したとして、周囲に「なんで離婚したの？」と聞かれたら、レス以外の理由が見当たらない。

離婚理由って、実は借金があったとか、DVがあったとか、そういう決定的な理由があるケースが多いと思うんです。でも私にはなかった。レスといっても、結婚後すぐに子どもができたという事実はあるわけで。

ーー子どもがいるからレスではない、と思う人も世の中には多そうです。

そうですよね。レスは周りに理解してもらうことが難しく、そして子どもができたことで離婚は夫婦だけの問題ではなくなりました。いろいろな要因で「私さえ我慢すれば、誰も不幸にならない」と考えるようになったんです。

ーー矢代さんは「わら子」というペンネームで、レスについて語るブログを運用されています。ブログには、結婚前にレスになり、パートナーと結婚すべきか悩んでいる女性からの相談が届くことがあるそうですね。

はい。そういう時私は「既にレスなら結婚後もレス。私と同じ道をたどるよ。それでもいいなら結婚を」と伝えています。

「結婚したらレスが改善する！」と期待している人もいると思いますが、変わりません。結婚して変わるのは戸籍だけです。独身だからこそ、レス問題について真剣に考えてほしい、とアドバイスするようにしています。

ーーセックスレスが継続中の夫婦生活ですが、今後のことはどう考えているのですか？

今後もずっとレスが続いていくと思います。
だからといって今すぐ不倫したいとか、既婚者マッチングアプリをやってみようとか、そういう気持ちはまったくありません。

独身なら、浮気をしても「独身だから」という理由で許してもらえるかもしれません。でも、夫婦の場合は不貞行為にあたります。この結婚制度にずっととらわれてきましたが、最近はいつか子どもの手が離れたら「女として楽しもう」と思っています。 

ーー「女として楽しみたい」とは具体的にどのようなことですか？

絶対に不倫はダメ！ と決めつけるのではなく「家庭を大事にして家族に迷惑をかけなければ、それぞれが外で楽しんでもいいんじゃないか」ということです。

夫に拒否されはじめた時は、つきあっているのに、結婚しているのになぜ拒否されるのかと疑問しかありませんでした。 

ですが私も産後、夫に対して性欲がなくなり、数回セックスを拒否したことがあります。その時、セックスレス＝嫌いになったわけではない、という夫の気持ちが少しだけわかった気がしたんです。