1980年──、いまから約40年前。女性の「性」の本音を語る「モア・リポート」が誕生し、2017年までに延べ1万2千人を超える女性たちの性を見つめてきました。

そして、恋愛やセックスがいっそう多様化している現在。20代、30代の体験談を取材した新「モア・リポート」をお届けします!

経験人数は10人以上。交際経験はゼロ。

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ーDATAー

浜名さん(仮名)27歳 / 職業:会社員

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20歳の時「男性経験がないのはヤバい!」と思い、マッチングアプリで恋活を始めた浜名さん(27歳・仮名)。しかし、アプリで出会う男性は体目的の人が多く、気づけば交際経験ゼロにもかかわらず、経験人数は増えていた……。彼女が体を許してしまう理由とは?

マッチングアプリでの“ワンナイト”を繰り返した過去

ワンナイトは10人以上。交際経験なし20の画像_1

――交際経験はないけれど、男性経験がある?

はい。男性とつきあった経験はありませんが、経験人数は10人を超えています。(以下、浜名さん)



――それはなぜですか?

2年前までアプリで恋活をしていたのですが、アプリで出会った人と初回デートをした後、ホテルに誘われることが度々ありました。それで体の関係を持つと、後でこちらから連絡をしても音信不通になるケースがほとんど。誰とも交際に至りませんでした。


――つきあうまえに体の関係を持つのはなぜですか?

誘ってくれたのに断ったら、相手に申し訳ないと思ってしまうんです。同時に体が目的だとしても、誘われると「私のこと誘ってくれるんだ!」と嬉しく思ってしまう気持ちもありました。特に自分のタイプの人だと、なおさらそう感じていましたね。

「きもい」といわれた中学時代。外見でいじられた思春期

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――「断るのが申し訳ない」という気持ちになるのはなぜでしょうか?

私はたぶん、自己肯定感が低いんですよね。中学生の時に外見でクラスメイトにいじられた経験があって、「きもい」と言われたり、男子に話しかけるとあからさまに嫌な顔をされたり、ということがありました。

周囲の反応から「自分の外見ってよくないんだ」と感じていたし、モテたことがなく、男性から言い寄られた経験もなかったんです。だからアプリで出会った男性から、たとえ体目的で「ホテル行こう」と言われているとわかっていても、求められると「私でも誘ってくれるんだ!」と嬉しくなってしまう自分がいます。



――中学時代の経験が原因で、自己肯定感が低くなったと感じたのですね。

そうですね。恋愛では嫌な思いもたくさんしましたが、私は結構惚れやすいタイプで、高校時代はクラスメイトに好きな人がいたんです。毎日深夜に何時間も電話したり、頻繁にふたりで会ったりもしていました。



――彼とはつきあっていたのですか?

いいえ。「つきあっている」と思っていたのは私だけでした。ある時、彼から「俺は彼女とかかつくらないから」と宣言され、告白する前に失恋しました。

でも、高校生くらいの時って、つきあっている、つきあっていないの境目って難しいですよね。結局ただの口約束ですから。

“20歳になって経験がない”という焦り

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――その後の恋愛はどうでしたか?

大学生になって3つ年上の男性を好きになりましたが、告白もできず、結局片思いで終わりました。気付けば20歳になっていたので「20歳になって交際経験がないのはヤバい!」と自分の中で焦りが出てきて、アプリを始めたんです。



――アプリをやってみてどうでしたか?

アプリを使ってみると、かっこいい人が多いことに驚きました。当時の私は「女子大生 20歳」の肩書だけでかっこいい人ともマッチングできました。女子大生ブランドって凄いなと思いましたね。

「自分でも、かっこいい人に興味を持ってもらえるんだ!」と嬉しくなり、誘われればつきあう前でも体の関係を持ちました。



――体の関係を持ったあと、彼らとはどうなりましたか?

だいたいの人はその後、音信不通になりました。私がかっこいい、つきあいたいと思った人ほど、遊んでるんですよね。一度セックスをした私のことはもうどうでもいいって感じでしょうか。

そういう経験を重ねていくうちにだんだん感覚が麻痺してきて、会った人がイケメンだったら「つきあえなくても、イケメンに“抱いてもらえる”だけでいいや」という気持ちに変化。セックスに対してのハードルがどんどん下がっていきました。



――セックスに対してのハードルが、つきあうハードルよりも低かった?

そうですね。先日「交際経験なし」の若者が増えているというのをテレビで見ました。その中には私のように「体の関係を持ったけど、つきあえなかった人」も少なからず含まれてるんじゃないかなって思いますね。

私にとって、セックスのハードルよりつきあうハードルの方が断然高かったです。

職場で好きな人ができてアプリをやめた

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――現在27歳ですが、ここ2年はアプリを使っていないとか。どうしてですか?


25歳の時、職場に好きな人ができたんです。久しぶりに、自然に好きになった人です。その人が退職するとなった時、そのタイミングでアプリを辞めて食事に誘いました。

でも結局、彼とも体の関係だけになってしまったんです。



――それはなぜですか?

彼もよくよく話してみると遊んでいる人だったんです。憧れの存在だったので、ホテルに誘われた時に「付き合えなくてもいいや」という気持ちになり、体の関係を持ってしまいました。

3回くらい会ったあと、彼との関係も終わりました。この時から、「アプリで出会った人と同じような関係を繰り返している。このままじゃいけないな……」という気持ちがどんどん強くなっていきましたね。その後、私も転職しました。



――現在はどうですか?

転職先で好きな人ができました。ランチに誘ったり段階的にアプローチをしていて、今いい感じです。アプリは一切使っていなくて、好きな人に一直線です。



――今回は段階を踏んで恋愛をしたいと思っているのですね。

そうですね。でも、どうやって恋愛を進めていったらいいかわからなくて不安な思いもあります。アラサーになって交際経験がないっていうのは、大きなコンプレックスです。



――今後どうしていきたいと思いますか?

アプリでマッチした人たちと体の関係だけ持ち続けた過去は変えられないし、今も「私が幸せになってもいいのだろうか……」みたいな気持ちはあります。自己肯定感は低いままです。

だけど、今後はちゃんと段階を踏みながら好きな人に向き合っていきたいと思っています。「交際したい」という今の気持ちを大切にしたいです。

取材・文/毒島サチコ

ライター・インタビュアー
毒島サチコ

MORE世代の体験談を取材した「モア・リポート」担当のライター・インタビュアー。

現代を生きる女性のリアルな恋愛観やその背景にひそむ社会的な問題など、多角的な視点から“恋愛”を考察する。