働く女性が感じるジェンダーバイアス「子どもを持たない選択を受け入れて」【モア・リポート73】
1980年──、いまから約40年前。女性の「性」の本音を語る「モア・リポート」が誕生し、2017年までに延べ1万2千人を超える女性たちの性を見つめてきました。
そして、恋愛やセックスがいっそう多様化している現在。20代、30代の体験談を取材した新「モア・リポート」をお届けします!
「子どもを産まない」と決めた女性の本音を取材
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ーDATAー
細田さん(仮名)32歳 / 職業:会社員
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会社員の細田さん(仮名・32歳)は自分の人生において「子どもは産まない」と決めている。理由を聞くと、子どものいない女性に対するジェンダーバイアスが見えてきた。
30代女性「子どもは絶対に産まない」
――細田さんは、子どもを産まないと決めているのですか?
はい。私は昔から子どもを産まないと決めています。(以下、細田さん)
――昔とはいつからでしょうか?
小学生の時からです。子供の頃から、日本の社会は女性ばかりが酷使される社会だと感じていました。
妊娠や出産は命がけなのに、その後の育児のほとんどを女性が担うことになるとか、妊娠中は病気にかかっても飲めない薬があるとか、自分を犠牲にしてまで「子どもを持ちたくない」と思っていました。
――「子どもを持ちたくない」と強く思ったきっかけはありますか?
大きなきっかけはありませんが、結婚した友人たちの話を聞いたり、周囲の意見を聞けば聞くほど、子どもを持ちたくない気持ちは強くなっています。やはり出産・育児は、女性の負担が大きすぎると感じています。
――どのようなところに負担があると感じますか?
身体的・精神的な負担に加え、キャリアが途切れてしまう可能性があることです。働きながら、出産し育児をすることを想像するとハードルが高いと感じるし、育児のほとんどを女性が担っている厳しい現実があると感じています。
女性社員は「子どもを産むことが前提」
――それはどんな時に感じましたか?
強く感じたのは、大学生の就活の時です。ある会社の面接の際、男性の人事の方に「うちは女性が活躍している会社だよ」と言われて。
それは、産休・育休などの福利厚生が充実していて、女性が出産後も働ける会社であることのアピールでした。でも、育児に参画する男性に対しての説明は一切ありませんでした。
――「女性は出産し、育児をすることが前提」という話し方だったのですね。
そうですね。私は出産を考えていなかったのに、「あなたもいずれ子どもを産むでしょ」という感じで話されたのがすごく嫌でした。
会社のホームページには、働く女性のロールモデルとして、出産・育児をして、キャリアアップする女性が掲載されていて、「産まなかった」女性社員は無視されていました。
また、育児に参画する男性社員の説明もありませんでした。男性の人事の方の「私たちは(出産する)女性に理解があります」というアピールに、とても気持ち悪さを感じましたね。
結局その会社には就職しませんでした。
――では、現在は別の会社で働いているのですか?
はい、幸いなことに今働いている外資系の会社は、とても働きやすくて恵まれています。
――今の会社でずっと働いていきたいと思っていますか?
そうですね。でも、キャリアアップをすごくしたいとは思っていません。子を持たない女性はバリキャリ、みたいな世間のイメージがありますよね。それにも嫌悪感があります。私は前提として、生きるために働いていますから。
子どもを持たない選択=チャイルドフリーという考え方
――子を持たない=バリキャリのように、社会が出産適齢期の女性に向ける無意識のバイアスはたくさんありそうです。
はい。それに生きづらさを感じている私のような女性も多いと思います。私は数年前に「チャイルドフリー」という言葉に出合い、気持ちが少し楽になりました。
――チャイルドフリーとはどのような言葉ですか?
子どもを持たない選択をすることによって、自分自身の人生を豊かにしていく考え方です。こういう考え方がもっと広がっていいはずなのに、日本でこの言葉は浸透していません。今の社会はどうやって産ませようかしか考えていないですよね。もしこの記事を読んでいる方で、子どもを持ちたくないと思っている人がいたら、チャイルドフリーについてぜひ調べていただければと思います。
――今後、どんな社会になってほしいと思いますか?
女性支援=子育て支援というのも訂正してもらいたいですね。女性支援というなら、子ども以前に「女性がひとりで当たり前に生きていける社会」を目指さないといけないと思います。
――もし社会が変わったとしたら、細田さんは子どもを持ちたいと思いますか?
いいえ。社会が変わっても子どもを持ちたいとはまったく思いません。私はもともとマルチタスクが苦手だし、何より自分の自由時間が奪われることが嫌だからです。だからといって、子どもを欲しい人が産みやすくなることへの支援は否定しません。
ですが「社会が変われば、女性は子どもを欲しがるはず」という期待のもとで政策が進められると、もともと欲しくない人や子育てより自分の自由とお金が大事だと思う人は、まるで悪魔かのような扱いに。
私のように子どもを産まないと決めている人の「子どもを産むより、自分の自由を大事にしたい」という主張が、当たり前に受け入れられる社会であってほしいと思います。
取材・文/毒島サチコ