1980年──、いまから約40年前。女性の「性」の本音を語る「モア・リポート」が誕生し、2017年までに延べ1万2千人を超える女性たちの性を見つめてきました。

そして、恋愛やセックスがいっそう多様化している現在。20代、30代の体験談を取材した新「モア・リポート」をお届けします!

「仕事と子育ての両立はできる?」育休3年、職場復帰1年で退職

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ーDATAー

伊東さん(仮名)33歳 / 職業:会社員

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伊東さん(仮名・33歳)は、3人の子どもを育てている。3年間の育休を取得し、職場復帰したものの、忙しさから育児に向き合えず子どもに「こんなママでごめんね」と謝る日々。結局、1年で会社を退職することに。「仕事と子育ては両立できるのか?」多くのワーママの向き合う問いに、伊東さんの本音を聞いた。

まずは前編を読む。育休から復帰のワーママの本音「余裕がなくボロボロ。私には両立できない」

3年間の育休を取得後、会社を1年で退職。

育休から職場復帰したワーママの本音「働きの画像_1

――育休から復帰後、育児と仕事の両立はどうでしたか?

職場復帰してから自分に余裕がなく、子育てに向き合えない日々が続きました(以下同、伊東さん)。

長女が癇癪(かんしゃく)持ちで、感情の切り替えが苦手なこともあって急に怒ったり、泣いたりすることがあります。本当は優しく寄り添ってあげたいのに、冷たく当たってしまったり、きつく怒ってしまったりしました。

その後、罪悪感にさいなまれ「ごめんね」と泣きながら長女を寝かしつけていました。とにかく自分に余裕がなかった。今振り返ってみてもあの時の自分はボロボロだったと思います。



――それで会社を1年で退職することにしたのですね。

そうですね。当時は専業主婦になることは考えられなかったので、転職を目指し、いろいろ調べました。調べているうちに、フリーランスという働き方も視野に入れるようになりました。



――フリーランスの、どのような職種ですか?

中高の保健体育の免許と健康運動指導士の資格を大学の時に取得していたので、それらを活かし、親子でできるヨガのインストラクターとしてオンラインレッスンをしようと思いました。



――会社員の頃と比べて、収入に変化はありましたか?

収入に関しては会社員(時短で働いていた時代)より低い月のほうが多いけれど、多い月もあります。現在は土台作りの時期だと考えていて、ゆくゆくは安定して会社員時代の給料以上の収入にするのが目標です。

でも、会社員時代と圧倒的に異なるのは、時間の余裕です。自分自身にもゆとりがもてるようになりました。

働き方を変えて気付いた「友達とランチにいったあと、子どもに優しくできる」

育休から職場復帰したワーママの本音「働きの画像_2

――時間に余裕ができたことで、自分自身にも余裕ができたのですね。

はい。今まで自分の時間や体を犠牲にして子どもと向き合ってきたし、子育てとはそうあるべきだと思っていました。でも今は自分自身を大切にすることが、そのまま子どもを大切にすることにつながるのだなと感じるようになりました。フリーランスになって会社員時代よりも子どもたちとの関係がずっとよくなりましたから。



――会社員時代は自分を大切にできていなかったと思いますか?

できていなかったと思います。周囲から見たら、私は仕事も楽しく、子育ても楽しんでいるように見えたかもしれません。自分でも「両立できる」と思っていました。
「仕事は楽しい、子育ても楽しい」という気持ちは本音です。でも、いっぱいいっぱいでした。



――いっぱいいっぱいになった時、どのように対処していましたか?

会社員時代はリカバリーできる時間はもちろん、リカバリーしようとする気持ちすらありませんでした。でもフリーランスになってからは、自分で自分の機嫌をとれる余裕ができたと思います。

友達とランチにいったあと、子どもたちに優しくできる。そういう気付きがあったのは働き方を変えてからです。


――フリーランスになってから第3子を出産されたのですね。

はい。会社員時代は3人目なんて到底考えられなかったけれど、フリーランスになってはじめて3人目を考えるようになりました。今年出産し、現在は6歳・4歳・0歳の子どもを育てながら、仕事をしています。

仕事と子育ては両立できる?「私には難しかった」

育休から職場復帰したワーママの本音「働きの画像_3

――今までの経験を振り返って、仕事と子育ては両立できると思いますか?

職場復帰するまで「仕事と子育ては両立できる」と思っていたんです。でも実際やってみると私には難しかった。何かを犠牲にしないとやっていけないと、それで会社員である自分を手放しました。


もちろんフルタイムで働きながら子育てをされている方もたくさんいると思います。でも私個人の経験としては、会社員として働くことで家族の時間を犠牲にするのが苦しかったんです。子どもとの時間をもっと取りたい。そのためには好きな仕事で収入も安定しているけれど、会社を辞める必要がありました。そして、“子育てと両立できる”フリーランスを選びました。


――現在の生活はどうですか?

子どもとの時間が取れるようになって、ちょっとしたことでも幸せに感じるようになりました。子どもは生きる原動力になっています。自分自身の機嫌も必ず取るようにしています。それが子どもたちがご機嫌でいることにつながっている気がします。



――子育てを楽しむ秘訣はなんだと思いますか?

「ママだから」という理由で諦めることは少ない方がいいと思います。限られた時間の中で、小さなことでもチャレンジし続けるママの姿をきっと子どもは見ているから。

取材・文/毒島サチコ

ライター・インタビュアー
毒島サチコ

MORE世代の体験談を取材した「モア・リポート」担当のライター・インタビュアー。

現代を生きる女性のリアルな恋愛観やその背景にひそむ社会的な問題など、多角的な視点から“恋愛”を考察する。