1980年──、いまから約40年前。女性の「性」の本音を語る「モア・リポート」が誕生し、2017年までに延べ1万2千人を超える女性たちの性を見つめてきました。

そして、恋愛やセックスがいっそう多様化している現在。20代、30代の体験談を取材した新「モア・リポート」をお届けします!

セックスレスを解消した夫婦のエピソード

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ーDATAー

深瀬さん(仮名)36歳 / 職業:会社員

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深瀬さん(仮名・36歳)は、夫との性欲ギャップに悩んでいた。毎日セックスをしたい深瀬さんと、月1回でいい夫。夫に拒否され続けた彼女は「愛されていないのでは」と不安を感じるように。しかし諦めずに夫と何度も話し合いをした結果、解決の糸口を見つける。

まず前編を読む。結婚して直面した夫婦の性欲ギャップ「拒否されることで自信を失った」

性欲ギャップのある夫婦が決めた、“ある約束”とは

夫婦が直面した性欲ギャップ。どうやって解の画像_1

――結婚してから、性行為の回数が減った?
10年付き合った元カレとは毎日するのが当たり前だったので、夫にセックスを拒否されると自分に魅力がないんじゃないか、と思えてすごくしんどかったですね。どんどん自分に自信がなくなっていきました。それで夫に、毎日は無理でも週2回くらいはしてほしいと泣きながら伝えたこともあります。(以下同、深瀬さん)




――話し合ってみてどうでしたか?

夫から「僕はしなくても夫婦生活を続けられる自信があるよ」「一緒にいるだけで幸せ」と言われました。だけどそれは夫の気持ちで、セックスをしたい私の気持ちはおいてけぼりになっていると憤りは消えず、号泣することもありました。結婚して最初の1年は毎日のように話し合っていましたね。




――話し合ってもなかなか解決しなかったのですね。

最初はそうでしたね。でも、結婚5年目になる今は解決しています。




――どうやって解決したのですか?

話し合いを重ねた結果、ふたりで“ある約束”をするようにしたんです。




――“ある約束”とはどんなものですか?

「次いつセックスをするか」を決めることです。夫から「また今度」とか「疲れているから」という理由で断られた時、私がなによりも不安だったのは「次いつできるかわからない」ことでした。

結婚している以上、私の性欲は夫にしか向けることはできない。約束をするようになるまでは「次いつ?」このまま一生できなかったらどうしよう、と感じていました。





――その気持ちを伝えて、「次」の予定を決めるように話し合うようになったのですか?

いえ。話し合って決めたというより、話し合いの中で偶然この解決策を見つけたという感じです。
話し合いをしても解決策が浮かばず、最終的に夫が「ごめーん、今日はしんどいでーす!」とおちゃらけモードになるのがお決まりのようになっていて(笑)。それで私が「じゃあ、いつできるんですかー!」とツッコむと、夫が流れで「来週の金曜日はどうですかー?」と言ったんです。その時、私の気持ちがすごく楽になりました。それから、夫は毎回予定日を伝えてくれるようになったんです。




――その日はできなくても、代替案を提示してもらったのですね。

代替案があって、我慢のゴールが見えていると、不思議とぴたっと性欲がおさまることに気付きました。なによりもセックスを断られても次回があるとわかることで、彼からちゃんと愛されていると実感することができました。

私がその日まであからさまにご機嫌でいるので夫も「今週土曜だね~」と言ってくれたり、私も「どんな下着をつけようかな~」と言ってみたり(笑)。最初は「また今度」と断るだけだった夫が、デートの予定を決めるように「じゃあ〇日ね♪」とその日を楽しみにしてくれるようになりました。



好きだからこそ“しない”選択もある

夫婦が直面した性欲ギャップ。どうやって解の画像_2

――話し合いを重ねたからこそ、たどり着いた解決策だったのですね。

なによりも夫が話し合いにちゃんと応じてくれる人だったことが大きいと思います。話し合いが長くなりそうな時は、私に温かいココアを淹れてくれました。
セックスを断られたある日、私が夫に「好きで結婚したのに!」と泣いて怒ったことがあります。その時、夫は「好きじゃないから、セックスしないのではない」と本音を話してくれました。



――どんな本音でしたか?

夫が断ったのは、「仕事で疲れていると、セックスを丁寧にできないから」という理由でした。実際、夫は「こんなに大事にしてくれるの?」というくらい本当にセックスが丁寧なんです。絶対私が嫌がることはしないし、脱がせ方しかり、ムードしかり……。ピロートークまで丁寧なんです。

それを聞いて私は「クオリティを下げてもいいから頻度を増やして! 質より量!」みたいなことを言ってしまったんですが(笑)。今は彼の気持ちが理解でき、「私を好きでいてくれるからこそ、あの時しなかったんだ」と思えるようになりました。

子どもを出産し、自分自身の性欲の変化も

夫婦が直面した性欲ギャップ。どうやって解の画像_3

――現在結婚5年目になりますが、今の夫婦生活はどうですか?

円満です! 結婚当初、私は「毎日したい」、夫は「月1回あればいい」という感じでしたが、互いに無理のないところで現在は週2回くらいで落ち着いています。

私も夫も、したいときは「したい」と我慢せずに伝える。そのうえで無理強いはせず、お互いできる時はする。手を抜いたセックスになりそうな時は断る、ということにしています。




――今もふたりの間に性欲の差は感じますか?

いいえ。性欲ギャップはもう感じないですね。出産を経て、私の性欲も少しずつ落ち着いてきたこともあります。




――出産や育児を機に、性欲が変化したという話はよく聞きます。

ライフスタイルの変化が性欲に影響したこともありますが、私の場合は妊娠中に夫がセックス以外でも「ちゃんと私を愛してくれているな」と思えることをたくさんしてくれたことも大きいです。




――たとえばどんなことですか?

つわりでしんどい時に労わってくれたり、気晴らしにちょっとしたデートを提案してくれたり。その後は不思議とセックスをしたような満足感がありました。





――セックス以外で「愛されている」と感じたのですね。

はい。毎日セックスをしていた頃の20代の私は、愛されていることをセックスで実感していたんです。でも今はセックス以外のところで、夫の愛情を感じることが多いです。




――年齢や経験を重ねて性の価値観が変化したということでしょうか?

セックスは夫婦円満のために必要だと思います。その気持ちは昔も今も変わりません。だけどこれから先、年齢を重ねて体が衰え、セックスができなくなる日がくるかもしれません。それでも夫となら一生幸せに暮らしていけると思えるんです。

取材・文/毒島サチコ

ライター・インタビュアー
毒島サチコ

MORE世代の体験談を取材した「モア・リポート」担当のライター・インタビュアー。

現代を生きる女性のリアルな恋愛観やその背景にひそむ社会的な問題など、多角的な視点から“恋愛”を考察する。