1980年──、いまから約40年前。女性の「性」の本音を語る「モア・リポート」が誕生し、延べ1万2千人を超える女性たちの性を見つめてきました。

そして多様性社会を生きる今、「モア・リポート」と並行して性別を問わずジェンダーレスに20・30代の体験談を取材し、彼らの恋愛やセックスの本音に迫る「モア・ボイス」の連載をお届けします!

妻とだけセックスできない。30代夫の気持ち

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ーDATAー

宇佐美さん(仮名)30代 /会社員/既婚/男性

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宇佐美さん(仮名/30代)は、あることをきっかけに「妻だけED」状態に。その後、妻に求められても勃起しない状況に悩みながらも、彼なりの対処方法を見つける。しかしそれは、根本的な解決ではないと話す。

「妻だけED」になった原因

妻だけEDはなぜ? 30代夫「一度レスにの画像_1

――宇佐美さんは性の悩みを抱えている?

妻の美紀子(仮名/30代)にだけ勃起せず、「妻(彼女)だけED」状態です。でも悩んでいたのは一時期で、今は対処方法が見つかったので悩んでいません。(以下同、宇佐美さん)※ED=勃起不全(Erectile Dysfunction)の略。




――なぜ「妻(彼女)だけED」状態になったのでしょうか?

自分では、明確に原因はわかっています。だからといって、解決できる問題ではないんです。




――何が原因だったのでしょうか?

僕たち夫婦は結婚してすぐに第一子を授かり、美紀子は里帰りして出産しました。出産から数ヶ月後、美紀子が実家から自宅に戻ってきた時、僕が彼女にセックスを求めたのですが強く拒絶されたんです。




――どのように美紀子さんから拒絶されたのですか?

彼女に突き飛ばされ、「こっちは育児で疲れているのに!」「何考えているの!?」「気持ち悪い!」と叫ばれました。




――その時、宇佐美さんはどう思いましたか?

今振り返ってみたら、産後3ヶ月の妻に求めるなんて、僕がサイテーだったと思います。だけど当時は、「そんな強く拒否しなくてもいいじゃん……」と拗ねてしまいました。あまりに美紀子がキレていたので、自分の中で彼女への気持ちがすーって冷めていくように感じました。

「妻だけED」だと気づいた日

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――これまで美紀子さんから拒否された経験はありましたか?

一度もありませんでした。美紀子のほうから求められることも多かったくらいです。結婚前に美紀子のマンションで半同棲生活をしていた時は、“騒音注意”の張り紙がエレベーターに貼られるほど激しいセックスを毎日のようにしていましたから(笑)。

「拒否される」ということに対して、免疫がなかったのかもしれません。これまでの恋人からも拒否された経験はほとんどなかったんです。だからこそ、すごくショックだった。同時に「もういいや」という気持ちになりました。




――この一件から、セックスレスになったのですか?

はい。その後、僕から求めることも、美紀子から求められることもなくなりました。でも、子どもが2歳になった頃に美紀子は第二子の妊活について口にするようになり、「〇〇日よろしくね」とセックスする日を約束するようになりました。いわゆる「計画的なセックス」を美紀子が求められるようになったんです。



――宇佐美さんは「計画的なセックス」には応じたのでしょうか?

応じるも何も、勃たないのだからどうしようもないですよね。美紀子はその日のために、ちょっとセクシーな下着を身に着けていたのですが、性的な興奮はなく勃起することはありませんでした。




――では、妊活はできなかったのでしょうか?

そうですね。「仕事で疲れていてごめん」「ちょっと体調悪いみたい」と言って、何度か切り抜けていました。毎月断り続けていると、「また?」と美紀子も不機嫌に。嘘をつくのも限界になってきていました。最初は相手を限定せずに、EDを疑っていました。




――EDの要因として、拒否された記憶がフラッシュバックするのでしょうか?

フラッシュバックとか、大袈裟なものではありません。だけど、とにかく気分がのらない。妻のことは好きだけど、そういう対象ではない。体は心と繋がっているんだなと、本当に強く感じましたね。


――自身が「勃たない」ことは美紀子さんには伝えたのですか?

夫婦関係が悪くなりそうで、そんなことを言えるわけありません。妻に対して性欲は湧かないけど、愛情はあります。一緒に映画を観たり、キスやハグをしたり。仲のよい夫婦だったからこそ言えなかったんですよね。



――その後、どのようにして「妻だけED」だと気づいたのでしょうか?

職場の飲み会の時に、先輩に「最近勃たないんですよね」と冗談交じりに話したんです。そうしたら先輩が「俺も」と言い、お酒の勢いもあって、そのままふたりで人生初めての風俗に行ったんです。そこで、普通に勃起して「妻だけEDなんだ」と気づきました。

妻には相談せず、見つけた対処方法は……?

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――その後、美紀子さんは第二子を出産されています。自然妊娠で授かったのでしょうか?

はい。妊活をして、授かりました。「妻だけED」に対しての解決方法を見つけたんです。




――どのような解決方法ですか?

クリニックに相談し、勃起不全の薬をもらって服用しました。安全性も高い薬ながら、効果は的めん。美紀子には内緒で薬を飲んでいました。




――それは解決方法なのでしょうか?

根本的な解決にはなってはいないけど、そうするしかなかったんですよね。



――今後もEDについて、夫婦間で話し合う予定はありませんか?

ないですね。伝えることで美紀子を傷つけたくないと気持ちが一番ですが、もしかしたら産後の時のようにキレられるのではないかという思いもあります。「妻だけED」の事実を伝えずに薬を飲んでいるのは、夫婦関係を円満にするために必要な秘密のひとつだと考えています。



――もし今後、美紀子さんに誘われたらどうされるつもりですか?


その時はまたこっそり薬を飲みます。第二子が産まれてから夫婦間のセックスは、ほとんどなくなりました。でも、それが一般的な夫婦の性生活ではないでしょうか。だから今のところ、「妻だけED」で悩むということはありませんね。





――どうしたら「妻だけED」を防げたと思いますか?

僕の場合は、強く拒否されたのがきっかけで「妻だけED」になってしまったので、事前にふたりで産後のセックスについて話し合えていたら防げたのではないかと思います。

「そんなことで?」と思う女性もいるかもしれないけど、「意外と男性はデリケートだぞ」と伝えたいです。

レス解消のためにコミュニケーションを取るなど克服へのアドバイスはありますが、個人的には“レスに一度なってしまったら、元に戻らない”と考えています。

取材・文/毒島サチコ

ライター・インタビュアー
毒島サチコ

MORE世代の体験談を取材した「モア・リポート」担当のライター・インタビュアー。

現代を生きる女性のリアルな恋愛観やその背景にひそむ社会的な問題など、多角的な視点から“恋愛”を考察する。