1980年──、いまから40年前。女性の「性」の本音を語る「モア・リポート」が誕生し、2017年までに延べ1万2千人を超える女性たちの性を見つめてきました。
そして、恋愛やセックスがいっそう多様化している現在。MORE世代の女性の体験談を取材した新「モア・リポート」をお届けします!

バイセクシャルのSさんの話

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ーDATAー
桜木さん(仮名)30歳 / 未婚 / 職業:会社員
初体験:16歳 / 経験人数:15人 / セックスとは:信頼のある好きな人とするのであれば、究極のコミュニケーション。そうでなければ性欲の発散方法
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バイセクシャルのSさんと恋人

女性同士はセックスレスになりやすい?

ーー今、お付き合いしている人は?

3年半お付き合いしている女性がいます。私はバイセクシャルで、性別は女性ですが、男性とも女性とも性的な関係を持った経験があります。今のパートナーは、レズビアンです。(以下、桜木さん)

ーー出会いは?

友人に「素敵な友達がいるから、紹介したい!」と言われたのがきっかけです。会ってすぐに意気投合しました。

私は職場や友人たちにも、自分がバイセクシャルだということを話しているので、人に言えなくて苦しい……、という経験はなかったのですが、恋人は、周囲にカミングアウトできずに悩んでいました。でも、私と付き合ったことをきっかけに、みんなに話せるようになって、今では公認のカップルです。

ーー関係は良好ですか?

3年半一緒にいるので、信頼関係は築いていますが、付き合って1年半くらいでセックスレスに悩むようになりました。日に日にセックスの頻度が減ってきて、2年半たった頃には、2か月に1回あるかないかの頻度になっていました。

女性同士のセックス、オーガズムに達したかどうかの判断は?

バイセクシャルのSさんと恋人
ーーなぜ、セックスレスに?

私にもともと性欲があまりなかったんです。別にしなくても、“精神的に安心できればいい”というタイプで。パートナーにとっては、セックスは大切なことなんですけど……。

ーー男性とのセックスと異なる点はありますか?

女性同士の場合、男性器の挿入がないので、一般的に、指を挿入して刺激することで「セックスをした(最後までいった)」という意味になります。攻める人のことをタチ、受け身の人のことをネコと表現したりします。男性器の挿入はないけど、タチが挿入する側の立場ということになります。

ネコは、タチに攻められて、身体的なオーガズムを感じ、タチは、ネコをイカせることで、精神的なオーガズムを感じます。
バイセクシャルのSさんと恋人
ーーネコ同士、タチ同士のカップルの場合は?

そこは、付き合う前にほとんどすりあわせができているのであまり問題にならないです。

タチ同士、ネコ同士というカップルもいないこともないですが、少ないのではないでしょうか。

LGBTのマッチングアプリだと、プロフィール欄に自分がどちらかを選択する項目があるので、最初から認識共有ができます。出会いの場でも、お互い会った瞬間にそういう話になるケースが多いです。たとえば、ネコの中には、行為の時に全く動かない「ドネコ」の人もいますし、タチの人の中には“体を触られたくない!”という人もいるので、そうしたすりあわせは、付き合う前に必ずしますね。

ーー桜木さんは、タチ、ネコどちらなのですか?

私は「ネコ」で、パートナーは指で私をイカせることで、精神的にオーガズムに達する「タチ」です。

ーー毎回オーガズムに達しますか?

今のパートナーとはそうですね。私は男性ともセックスをしたことがありますが、その場合は、ネコだったということになります。でも、オーガズムに達したことがあるのは、女性としたときだけです。

ーーそれはなぜ?

過去を振り返って、私が男性との性行為でオーガズムに達したことがないのは、付き合った男性が前戯や性交の仕方について一方的な理解をしていて自分本位な性行為だったからではないか、と考えています。
一方、女性同士だと、体のどこを触ったら気持ちいいかとか、そういうことを言葉にしなくても分かりあえるんです。

ーーセックスは肉体的なものというイメージがありますが、本当は多様性があるということですね。

はい。肉体的な快楽よりも、精神的な快感のほうが、私はずっと大事だと思っています

セックスレスから生まれた「オープン・リレーションシップ」という形

バイセクシャルのSさんと恋人
ーー今もパートナーとは、セックスレスが続いていますか?

はい。、パートナーとは昨年11月から、オープン・リレーションシップ(※恋愛的な「付き合い」がある人間関係において、相手がほかの人物との恋愛関係や性的関係を持つことを、あらかじめ合意すること)を結んでいます。

セックスレスについては何度も話し合ったのですが、根本的な解決には至らず。その際、恋人のほうからオープン・リレーションシップの提案がありました。

「精神的にはつながっているし、一緒にいたい。肉体的なセックスレスが原因で別れるくらいなら、オープンリレーションシップという選択肢もありなのでは……」と。

身体的な関係は、時間とともに変化していくもの。それは、男性と女性のカップルでも同じことだと思います。本当に信頼しあっている恋人同士なら、身体的な関係は、オープンでもいい、という考え方や選択は、もっとあってもいいのではないかな、と思います。
取材・文/毒島サチコ