1980年──、いまから40年前。女性の「性」の本音を語る「モア・リポート」が誕生し、2017年までに延べ1万2千人を超える女性たちの性を見つめてきました。

そして、恋愛やセックスがいっそう多様化している現在。MORE世代の体験談を取材した新「モア・リポート」をお届けします!

20代最後に人生初の彼氏が出来た

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宮﨑さん(仮名)30歳 /未婚 /職業:地方公務員
初体験:29歳 /経験人数:1人/セックスとは:お互いの気持ちを伝え合う方法୨୧┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈୨୧

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――29歳の時に初めて彼氏が出来たんですね?

はい。人生で初めて彼氏が出来たのは29歳の秋です。
今年の春に別れるまで、半年間付き合っていました(以下、宮﨑さん)

――29歳まで、恋愛は?

あまり人を好きになった経験がなくて。
大学生の時に、3つ年上のサークルの先輩にあこがれて、好きになったことがあるくらいです。

――その先輩とは?

何もなかったですね。私が先輩のことを好きなのは周りもみんな知っていて、多分本人にもバレていたと思います(笑)。でも、特に進展はなく……。大学を卒業してもしばらく好きでしたが、あるとき先輩の恋愛対象が女性じゃないことが分かって。告白するとか、付き合うとか、そういう感じにはならなかったです。

――その後は? 

大学を卒業して、公務員として地元の市役所で忙しく働いていました。

田舎なのでみんな結婚も出産も早く、30歳前になると、同世代の友人たちが続々と結婚していくんです。周りに「結婚は?」ときかれることも増えて……少し焦りを感じ始めました。

うちの市では、未婚の30歳前後の男女には「婚活推進おばさん」が、お見合いをあっせんしてくれるんです。私も年上の神社の神主さんを紹介されました。

 「あぁ、私は恋愛を一度も経験せずに結婚するのか…」と、その時思いましたね。でも、それでもいいかなって。
結婚と恋愛は別だと思っていたし、今から恋愛をするのは時間の無駄だ、と思っていたからです。

 でも、ちょうど同じ時期に、知り合いの方から「いい人がいるよ」と紹介されて。

それが、私より3つ下のトシロウ(26歳・保育士)でした。

初体験はホテルで。お互い初めての恋人

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――トシロウさんはどんな人でしたか?

トシロウは、市内の保育園に勤めていました。私も彼も、人と接する仕事だったし、辛いことがあったときは話を聞いてくれました。トシロウの優しい性格にもひかれて、すぐに好きになりました。何度かデートを重ねて、付き合うことになったんです。

 ……実は、彼にとっても、私が初めての彼女で。

――お互いはじめての恋人で、苦労したことはありますか?

やることなすこと、すべてが初めてでドキドキしました。お互い仕事も忙しく、実家暮らしだったので、基本は土・日のどちらかでデートする感じでした。

 ──では、はじめてのセックスも、トシロウさんだったんですね?

はい。初セックスは、地元のラブホテルでしました。私はもちろん処女で、緊張していたら「大丈夫?」とか「痛くない?」とか優しく声をかけてくれました。

ものすごく緊張して、よく覚えていないけれど、素敵な初体験だったと思います。

次の日も、トシロウがわざわざ電話をかけてきてくれて「体調大丈夫?」って。優しいですよね。どんどん好きになっていきました。

噂が原因で彼との関係に亀裂が

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――その後は?

その後もデートを重ねていたのですが、市内でコロナ感染者が増えてしまって。
お互い人と接する仕事なので、私から「会うのは控えたほうがいいね」とトシロウに伝えました。

ちょうどそのころ、ささいな喧嘩をしました。私があいまいなLINEを送ったことが納得いかなかったみたいで、トシロウからキツめのLINEが連続して……。

私はコワくなってしまって、優しかった彼が急に変わってしまった、と一日中泣いていました。

それで、職場の先輩に「彼って、モラハラっぽい気質があるのかも……(泣)」と相談したんです。

 ――トシロウさんはモラハラだったんですか?

 いいえ、そんなことはありません。
今考えれば、普通のカップルの感情的になったときのLINEだったと思います。

でも、私は男性とつきあうのが初めてだったので、どう対処していいか分からなくて、長文で返信したり、ひたすら謝ったりしていました。

会って話せば、すぐに済むことだったと思うのですが、コロナもあってなかなかタイミングが合わず……。やっと話しができても、お互いどこかでモヤモヤが残っていたんだと思います。

それから一か月後、私が職場の先輩に相談した内容が、数人の知人を介してトシロウの耳に入ったんです。

「トシロウ、お前モラハラなの?」って。

 ――相談した内容が本人に伝わってしまったんですね

はい。トシロウはすごくショックを受けていたようでした。
「モラハラ」という言葉だけがひとり歩きして。噂を流した先輩や知人も、私たちのことを心配して話しただけで悪気はなかったはずなのに、彼をすごく傷つけてしまったんです。

私は「ただ相談しただけで」と謝ったんですが、狭い市だし、すぐに噂は回るから「そういうことを言ったとしても、仲直りした時に先輩に報告してほしかった」と。

きっと私が裏でトシロウの悪口を言っていると思って、トシロウは私のことを信じられなくなっていたんだと思います。
――それからは?

トシロウからの連絡頻度が減って。
私はその状況に焦って寂しくなって、余計にこじらせてしまいました。

――噂がきっかけで、トシロウさんと距離ができてしまったのですね。

はい。そのまま半年記念日を迎えました。
記念日の日、トシロウからお祝いをして、じっくり話そうと提案があったんです。

そこで、お互い不満に思っていることを話したり、私の家庭環境のことを聞いてくれたり……。私は自分の意見を言うタイプではないから、聞いてくれたこと、心が開ける人に出会えたことがとても嬉しくて。
いろいろあったけど、私はこれからもトシロウと一緒にいたいと思ったんです。 

でも翌日、次のデートの約束をしようと連絡したら、別れを告げられました。
トシロウは私を信じられなくなってしまったんだと思います。

トシロウと付き合ったのは結局半年で、今別れて8か月くらい経ちます。
ショックで仕事が手につかなくなった時期もあったし、体重も10kg減りました。

初彼氏との別れ。30代のこれからのこと

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ーまだトシロウさんのことは好き?

今も好きです。先日TSUTAYAに行ったら旧作レンタルで『花束みたいな恋をした』が安くなっていて、借りたんです。見ながらいろいろなことを思い出してしまいました。

別れ話をした時、お互いがすれ違っていて、本当は別れたくないし好きだけれど、別れたほうがいいという結論になってしまったこととか、映画の主人公と自分がシンクロして、わんわん泣きました。

別れ話の時、トシロウが「頑張りたいこともあるし……」って言ったことも思い出しました。
「頑張りたいことってなに?」って聞いたんです。「なんでそんなこと聞くの?」と聞かれたので「トシロウのことを応援したいから」と言いました。

トシロウ、その言葉を聞いて泣きだしたんです。
「俺が偏屈なのが悪いんだ……」って。

苦しめたのは私なのに。きっと彼も、グチャグチャになっていたんだと思います。

それまでお互いの夢をしたことはなくて、別れ話の最後にそういう話ができて、私もトシロウと同じように頑張ろう。そう思いました。 

失恋したけれど、彼を好きだという気持ちや、別れの時の約束が、今の自分を支えています。

今はトシロウとの約束を胸に秘めて、仕事を頑張ろう!と考えています。
頑張っていたら、またトシロウに会える気がするから。
取材・文/毒島サチコ