1980年──、いまから40年前。女性の「性」の本音を語る「モア・リポート」が誕生し、2017年までに延べ1万2千人を超える女性たちの性を見つめてきました。

そして、恋愛やセックスがいっそう多様化している現在。MORE世代の体験談を取材した新「モア・リポート」をお届けします!

まさか自分が性病に!?

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繁澤さん(仮名)30歳  /未婚  /職業:出版
初体験:18歳  /経験人数:5人 /セックスとは:愛情表現
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最初は膀胱炎だと思った……

性感染症になったHさんのイメージ写真
――性感染症に感染したんですか?

はい。先月、クラミジアに感染していることが分かりました。
症状が進行していて、一時は絶食、入院しなければいけない状態にまでなりました。(以下、繁澤さん)

――クラミジアで入院まで?

そうなんです。
通常だと、抗生剤を飲んで1週間くらいでよくなるようなんですが、私の場合は、感染に気付かず悪化してしまい……。
ある日突然、お腹に激痛が走って。
総合病院にかけこみ、3日間点滴治療を受けました。


――なぜ、感染に気づかなかったんでしょうか? 

最初は膀胱炎だと思ったんです。
症状も、少し尿の出が悪いなぁとか、おりものが水っぽいなぁ、とか軽いものだったので。
泌尿器科の病院に行って尿検査を受けて、膀胱炎の薬をもらいました。

でも、薬を飲んでも症状が良くなるどころか悪化して……。
少しずつおへその右あたりに鈍痛を感じるようになり、37度くらいの微熱が続くようになったんです。

病名がなかなか分からぬ間に症状は悪化

病院のイメージ写真
――その後どうしたんですか?

一週間後にもう一度同じ病院へ行って、「残尿感も腹痛もあり、症状がよくなりません」と相談しました。
レントゲンをとってもらったんですが、原因が分からず。位置的に肝臓や胃腸のあたりだから、内科にいって相談してみてくださいと言われました。

――それで内科へ?

いいえ。

その日の夜にネットでいろいろと調べてみると、自分の症状が、クラミジア感染症に似ていることが分かりました。半年間、彼氏としかセックスをしていなかったので、まさか……?とは思いつつ。

ネットには、クラミジアを放置すると不妊症になるとか子宮外妊娠の原因になるとか、怖いことがたくさん書いてありました。
それで、婦人科へ行って、きちんと診断を受けようと思ったんです。

泌尿器科の先生が男性だったので、はずかしくて言えなかったんですが、この頃には、おりものの匂いがきつくなっていたり、血が混ざったりもしていて、なおさら性感染症を疑っていたところだったんです。

 ――婦人科ですぐにクラミジア感染だと診断されたのですか?

婦人科の先生に症状を伝えると、恐らくクラミジア感染が進行して、菌がお腹の中に広がって痛みが出ている可能性が高いと告げられ、抗菌剤を出してくれました。

クラミジア検査の結果は3日後なので、またその時に来るように言われ、その日は帰宅しました。

――感染しているかもと告げられた時、どう思いましたか?

覚悟していたとはいえ、自分が性病に……とショックでした。

ネットの情報では、感染から発症まで、1~4週間と書いてありました。その間、彼氏以外の人とセックスをしていないので、ますますいろいろ考えこんでしまいました。

――いつ感染したのかわからないのですね。
 
心当たりがないんです。
ここ半年、セックスしたのは彼氏だけ。
そう考えたら「彼氏が浮気したんじゃないか」とか「風俗に行ったんじゃないか」とか、いろいろ想像しちゃって。

3日後、検査結果を聞きに行くと、やはり陽性でした。
そしてこの日に、今まで鈍痛だったお腹の痛みが急に激痛に変わり、歩けなくなったんです。

3日間絶食し点滴治療をすることに

性感染症になったHさんのイメージ写真
――婦人科の薬も効かなかったんですか?

いいえ。
私の場合、すでに菌がお腹の中に広がっている状態だったので、薬では治療しきれず点滴が必要に、ということでした。
すぐに、婦人科の先生に紹介状を書いてもらい、鎮痛剤を飲んでタクシーに乗り込み、大きな病院へいきました。

病院で色々検査をしてもらうと、クラミジア感染が進行して、腸や肝臓に癒着という状態を引きおこしていることが分かりました。
3日間、絶食し、抗生剤と栄養剤の点滴を受けることになったんです。

クラミジアは感染したことに気づかない人も多く、知らないうちに、私のように重症化してしまう人も多いそうです。また、胃腸炎などと誤診されることも多いようです。
放置すると、不妊の原因にもなると聞いて、ゾッとしました。

会社にも連絡して休みをもらうことにしたんですが、「性病にかかって」とは言えなくて。適当な病名でごまかしました。

性病感染を、パートナーにどう伝える?

性感染症になったHさんとパートナーのイメージ写真
――パートナーには、どう伝えたんですか?

 一瞬「黙っておこうかな」、なんてことも考えました。
でも私がこんな状態になっていることを、やっぱり早く伝えなければと思い直しました。

それで、彼氏がお見舞いに来たタイミングで「実は……」と切り出し、検査を受けてほしいと伝えました。

 ――彼の反応は?

「浮気したの?」と問い詰められました。
私は「あなたとしかセックスをしていない」と言ったんですが……。

でも……、疑われてもしょうがないんです。

実は私、半年以上前に一度浮気をしたことがあって。
それを彼氏も知っていたので「またか」と思ったんだと思います。

逆に、「あなたに心当たりは?」と彼氏にも聞いてみたんですが「絶対にない」の一点張りでした。それで会話は終了。

彼氏は怒ったまま、検査を受けて。彼も陽性でした。


 ――その後、彼とふたりで話し合いはしましたか?

入院中は、私は歩くのもやっとだったので、しませんでした。
朝ベットから起き上がるときも激痛が走り、大変な状況でした。腸を休めるために3日間絶食していたので、身体もだいぶ弱っていました。

彼氏と話し合う元気もなかったんです。

入院4日目から点滴が外れ、薬に切り替わりましたが、まだ食事は摂れず、1週間はゼリーなどで過ごしました。

痛みは10日くらい続き、2週間たってやっと通常の生活を送ることができるようになりました。

信頼関係を壊しかねない。性感染症は心のダメージも大きい

――その後は?

医者に「いつ感染したんでしょうか?」と聞いてみても「それは分からない」という回答でした。

真相は闇の中です。

性感染症は、身体のダメージはもちろん、心のダメージも大きかったです……。
治療が終わり、日常生活を取り戻すことはできましたが、彼との確執はそのままです。

近々ふたりで話し合う予定です。
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取材・文/毒島サチコ