現在放送中のTBS火曜ドラマ『ファイトソング』。間宮祥太朗さん演じる芦田春樹のかつてのバンド仲間・烏丸薫として、かなりクセのある役で注目を集めている俳優・東啓介(ひがし・けいすけ)さん。 
“俳優・東啓介”を形作ってきたものについて、おうかがいしました。

声優の仕事はブレーキとアクセル

――最初は舞台『テニスの王子様』(2ndシーズン、2013~14年)、そして2021年末にオンエアされたドラマ『つまり好きって言いたいんだけど、』(テレビ東京 ドラマParavi)、先日オンエアされたオーディオドラマ『六人の嘘つきな大学生』(NHK)など、多くのお仕事を経験してみて、いかがでした? 
 
東啓介:舞台とドラマに関しては、身体表現の差はありますけど、演じる内容のベースは変わらないと思っています。でも、声だけの演技は難しい。普段しゃべっている時って、普通の会話のスピードで多少言葉が聞き取れなくても、そのまま流していっちゃったりしますよね。声優の演技では、ちょっと行間を空けて話すようにしないと、視聴者の脳内解釈=読解に時間がかかってしまうので、演じてる自分たちが解読しやすいようにしていかなきゃいけない。1回ブレーキを踏んでから、もう1回アクセルを踏む、みたいな感じの演技がめちゃくちゃ難しいなと思いました。でも、いろいろ吸収できるのはありがたいです。 
それぞれのお仕事の特徴を理解できたら、もっと魅力的な何かができるんじゃないかな、っていうのはすごく感じています。
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舞台でこてんぱんにされて、ひろがった世界

――俳優として、大きく意識が変わったのはどんなタイミングでしたか? 
 
東啓介:ミュージカル『スカーレット・ピンパーネル』(2017年)で、演出家の石丸さち子さんに出会えた時です。石丸さんは蜷川幸雄さんのもとで、俳優・演出家としてずっと活動されていらっしゃった方でしたが、技術的な面でも、内面的な面でもめちゃめちゃ、こてんぱんにされました。本当に真正面からぶつかって来てくださる方です。 
それまで僕が活動していた2.5次元の舞台の世界でも、いわゆる歌舞伎でいう“型”のように、型でやらなきゃいけないことはある程度できるようになっていたのですが、内面がそれに追いついているのかって言ったら、そうでもなかった。それが追いつくよう、指導してくださったのが石丸さんでした。 
 
具体的な話をすると、石丸さんの演出で初めて主演を務めたロックミュージカル『5DAYS 辺境のロミオとジュリエット』(2018年)で、後半の10分間くらい、大泣きをしなきゃいけない場面があったんです。10分間、たったひとりで観客を引き付けなきゃいけなかった。 
『ロミオとジュリエット』を現代版にしたお話なのですが、自分で死のうと思っても、やっぱり怖くて死ねない。死ぬべきだと思っているのに死ねない自分へのイライラがあり、でもやっぱり死は怖いという感情もあって、涙が止まらない。そんな感情を表現する時に、その稽古で石丸さんにかなり厳しく演技指導をされて、結果的にそのシーンではめちゃめちゃ泣いたんですね。 
それまで経験したことのない、“ひとりの人物の疑似体験”を初めて感じて、すごく不思議な感覚でした。「なにこれ、涙が止まらない」みたいな気持ち。自分が普通に過ごしてる時、そんなに大泣きをして、感情を大きく吐き出した経験なんてなかったので。 
 
――かなりの難問を出されましたね……。 
 
東啓介:ええ。まさにお題として出されたと思うんです。「役者として、お前はどう表現するんだ」、という。石丸さんには「最後は東にかかってるから」って言われて……。僕が演じたハワルという役は、生きることを選択して、この出来事をみんなに伝えていく、ということで終わっていくんですけど、そこに至る心理描写を10分間、泣きながらの変化で見せなきゃいけなくて……。 
 
――デビュー5年、22歳の時ですよね。 
 
東啓介:しかも、泣いたら感情を引きずっちゃうのに、石丸さんが「引きずるな、前を向くんだよ!」と(笑)。もしかすると、自分じゃない人生だからこそ、あの演技をできたんじゃないかなとも思います。ハワルを経験して、“役者としての何かをいただいたな”と思いました。主役っていうのもありがたかったですし。でも、どんな役だとしても、そういうものを体験できることは、人生においてひとつの深みになると思いました。
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尊敬する三浦春馬さんのように“架け橋”になりたい

――そこから舞台のスターダムへの階段を駆け上がっていく……。デビュー直後から、“30歳までに帝国劇場へ”という目標をおっしゃってたのに、2019年にミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』に出演して、24歳に前倒しで達成。 
2020年にはミュージカル『ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド ~汚れなき瞳~』で帝国劇場と双璧を成す日生劇場の舞台にも立ち、さらにコロナ禍で延期になっていた『ジャージー・ボーイズ』は、2022年秋の公演が決定しました。 
 
東啓介:“本当に歌が歌える人じゃないと『ジャージー・ボーイズ』のメンバーには入れない”とずっと聞いていたので、まさか自分が入れるとは思ってなかったです。2020年に舞台がいったん中止になり、コンサート配信という形になった時に、“こんなにうまいキャストたちと一緒に歌うのか”と、さらに緊張したのですが……全力を尽くすのみです。コロナ禍の中で結んだ絆で2022年の上演を迎えられることは、本当にうれしいです。 
 
――以前、別媒体でのインタビューで、“舞台と映像を行き来するような役者になりたい”とおっしゃっていましたが、現段階での実現率は? 
 
東啓介:まだ2%ぐらいですね。舞台は2年後3年後の出演が決まっているけれど、映像の仕事は年単位ではなく、月単位や日単位というギリギリで決まることが多く、僕は舞台をやり続けているので、主にスケジュール的なところで、なかなか両立が難しいです。といっても、映像の世界では、まだ新参者で未熟者。今の僕にできることは、まずはいただいたお仕事に最善を尽くすこと。それが結果的には、両立できることへの近道なんだと思います。 
 
――お仕事で大事にしていることは? 
 
東啓介:感謝です。忘れちゃいけないのは、誰かと一緒に仕事ができることへの感謝だなと思っています。ほかのキャストやスタッフの方、今もまさに、こうやってインタビュー取材を組んでくれることへの感謝もそうです。そのひとつひとつをどんどん広げて行きたいと思っています。 
 
――目標は具体的に定めるタイプですか? 
 
東啓介:はい。舞台と映像のお仕事を両立したいので、それをどうやってできるかなっていうのは常に考えています。それとは別に、俳優としての大きな目標として掲げているのは、三浦春馬さんのような存在になりたい、ということです。僕は、ずっと三浦さんの名前を挙げさせていただいてるのですが、彼は映像メディアとミュージカルの架け橋となってくれていた大きな存在なので、いつか僕もそういうふうになっていきたいです。まだまだ映像分野では駆け出しなので、まずは、いろんな方に“東啓介”という名前を目にしていただけるよう、とにかくやるしかないかなと。映像も舞台も、あと配信でも、2022年は動き続けていたいですね。風の時代から、水の時代になりましたし(笑)! 
 
2022年は、占い的に水がキーワードなんだとか。水は“浸透”を意味し、周りに広がっていくことを意味するといいます。つまり、今年、東さんの活躍を目にする機会がジワ~っと増えるかも⁉  
風や水には形がないけれど、だからこそどんな形にもなれる。東啓介さんは、挑戦し経験することで自分自身を大きく強く変化させてきました。テニス、音楽、書道に絵画など、常に幅広い分野への関心を持ち続ける彼の、役者としての引き出しの多さがもたらす未来が楽しみです。

プロフィール 

ひがし・けいすけ ●1995年7月14日生まれ。東京都出身。2013年、『テニスの王子様』(2ndシーズン)で俳優デビュー。その後は様々なミュージカル作品に出演し、ミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』(2019年)では帝国劇場の舞台にも立ち、近年ではミュージカル『イン・ザ・ハイツ』やミュージカル『マタ・ハリ』などにも出演。2021年からは映像作品にも活躍の幅を広げる。火曜ドラマ『ファイトソング』(TBS系毎週火曜よる10時放送)に烏丸薫役で出演。また、今秋、日生劇場で上演されるミュージカル『ジャージー・ボーイズ』への出演が決定している。

東啓介 公式サイト&公式SNS

■公式ホームページ https://www.watanabepro.co.jp/mypage/10000062/ 
■公式Twitter @keisuke_higashi 
■公式Instagram @keisuke_higashi_official

番組公式サイト

■火曜ドラマ『ファイトソング』 
https://www.tbs.co.jp/fight_song_tbs2022/
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撮影/齊藤晴香 ヘア&メイク/yuto スタイリスト/青木紀一郎 取材・文/中川 薫