感情別・心のゆらぎコントロール術

さまざまな感情で気持ちがゆらぐのは、心のセンサーがきちんと機能しているサイン!  自分の感情の波に溺れることなく客観的に受け止める「マインドフルネス」を実践するうえで役に立つ、具体的なアクションを感情別にピックアップ。

不安・モヤモヤ

心がゆらぐ、不安やモヤモヤを抱えた状態

「未来」×「わからないこと」が不安を膨らませる原因に

不安を感じる理由は、自分の「未来」について「わからない」ことがあるから。とはいえ、あれこれ妄想してやみくもに行動したり、見ないふりをすれば、不安が芋づる式に膨らんでフリーズしてしまうだけ。「来月の予定さえ立てづらい今の状況では、わからないことが多すぎて不安が大きくなるのは当然。まずは、“今、ここ”に集中し、不安を書き出して“見える化”してみましょう」(臨床心理士・関屋さん、以下同)

【Action】ボディスキャン

臨床心理士・関屋裕希さんおすすめの「ボディスキャン」のやり方
❶仰向けで足を軽く開き、手のひらは天井に向ける。❷両手をお腹にのせ、呼吸とお腹の動きを観察。❸①の姿勢に戻り、意識を左足の親指へ。左足の指→足裏→かかと→足の甲→足首→ふくらはぎ→太もも→右足(順番は左と同じ)→骨盤→腰→お腹→胸→肩→両手→顔→頭→全身を観察。
「必ずしも何かを感じる必要はありません。意識を自分の体に戻してあげるイメージで」

【Action】わからないことを書き出してみる

不安に感じていることについて、3つのカテゴリに分けて書き出してみると効果的。書き出すカテゴリは、納期や内容といった「明確なこと」、作業プロセスや予想されるトラブル・対策など「実はわかっていること」、そして想定外のトラブルや相手の反応のような「本当にわからないこと」。「ただ漠然とわからないままでは不安が膨らむだけ。書き出すことで状況を客観的に捉えやすくなります。ただ、『本当にわからないこと』は今の時点では解決のしようがないのでいったん手放し、予測できる状況になったら対応を考えましょう」

落ち込み・悲しみ

落ち込み・悲しみを抱えた状態

落ち込んでしまう理由は、自分の「過去」にあり

「あの時、こうすればよかった」、「なぜあんなことを言ってしまったんだろう」と過去の失敗を思い出し、自分を責めるネガティブヴォイスを吐き続けていると、落ち込みのスパイラルへ真っ逆さま。「落ち込みは誰もが日々感じる感情。過去ではなく“今”に意識を向けることで客観性が生まれ、同じ場面に遭遇しても目を背けずに、取るべき行動を実践することで悪循環から抜け出せます」

【Action】セルフナレーションで実況中継

ネガティブな心の声から距離をとるために実践したい簡単テク。自分の体の感覚や思考、感情を観察しながら、今の状態に実況中継のつもりでナレーションをつけていくだけ。「足の指先に冷たいという感覚がある」、「私には“疲れたから早く休みたい”という考えが浮かんでいる」、「私には後悔の気持ちがある」など、何度も繰り返すうちに「あの時、落ち込んだのはこんなふうに考えていたからなんだ」と気づけるように。

【Action】食事や香りで五感を意識する

過去の失敗を何度も思い出してしまう時は、感覚モードにスイッチを入れることで反すう思考の悪循環から抜け出すきっかけに。たとえば、アロマやハーブティーの香りを楽しんだり、香りに触れることで起きる心や体の変化に意識を向けて。「“マインドフル・イーティング”といって、色や質感、盛りつけや香り、口当たり、音、味など五感を意識しながら食事をすることも、マインドフルネスを身につけるトレーニングです」

怒り・イライラ

怒り・イライラを抱えた状態

価値観の「違い」がある以上、思いどおりにいかなくて当然

仕事への姿勢や人間関係、衛生観念など、物ごとに対する価値観は十人十色。怒りやイライラはそんな価値観の違いを「自分の思いどおりにいかない」と捉えてしまうことが要因になっているのだそう。「周囲に『〜すべき』という自分ルールを当てはめていませんか? 自分とは違う考え方があることを受け入れ、『自分は自分、あの人はあの人』と自分と周囲との境界線を引くことで落ち着いて対処できます」

【Action】3分間呼吸法

臨床心理士・関屋さんおすすめ「3分間呼吸法」のやり方
❶椅子に座り、両足を床につける。❷何度か伸びをして、自然に背すじが伸びた状態にする。❸背もたれは使わず、両手はひざの上にのせる。目を閉じて3分間ほど自然に呼吸を繰り返しながら、呼吸のリズムを観察する。
呼吸の深さなどはコントロールせず、観察すればOK。あらゆる感情のゆらぎに効果的です」

【Action】歩行瞑想

臨床心理士・関屋さんおすすめ「歩行瞑想」のやり方
「頭がカッとなっている時は、いちばん遠い足裏が地面についている感覚に意識を向けて」。
❶体の力を抜いて深呼吸し、立った状態で足裏の感覚に意識を向ける。❷狭い歩幅で、ゆっくり歩き始める。重心を移動させる足の動きや足裏の感覚の変化などを観察する。❸慣れてきたら普段の歩幅で実践する。

嫉妬・マウント

嫉妬・マウントの感情を抱えた状態

他人と比べることで生まれる「私も欲しい!」という思い

誰かと比べることで生まれる「自分が持っていないもの」を持つ人への「羨ましい」という思いが、いつしか嫉妬という感情になり、批判的な言動へとつながってしまうことも。「完全に他人や周囲に注意が向いている状態なので、自分の内側に意識を向け直しましょう。『これは本当に自分が欲しいもの?』と問いかけ、自分にとって大切なことや優先順位に立ち戻って

【Action】マインドフルネスヨガで基本に戻る

臨床心理士・関屋さんおすすめ「マインドフルネスヨガ」のやり方
「回数や時間は自分で決めることが大切。体の感覚に向きあうことで、意識を向けて育てるべきは他人ではなく、自分自身だという根本に立ち戻れます」。
❶あぐらをかく。❷首をゆっくり左に倒して伸ばし、斜め前&後ろにも伸ばす。右側も同様に行う。❸左手を左のひざに添えたら、右腕を上へ伸ばしながら体を左側へ倒す。反対側も同様に。❹両手を肩にのせる。❺ゆっくりと大きく前に回し、同じように後ろ回しも行う。

【Action】ぬり絵に没頭してみる

『「ONE PIECE」ぬりえ』集英社
今月号の付録「大人のためのリラックスぬり絵」の色の見本のほか、ポストカードも6枚収録!
『「ONE PIECE」ぬりえ』(集英社 ¥660税込)
“今、ここ”に意識を向けるマインドフルネスは、日常の動きすべてがトレーニングの対象に。たとえば、ぬり絵なら、自分がどんな色で塗りたいのかを確認しながら進めるプロセスは、まさに今の自分に向きあう作業。「絵を描こうとすると『上手に描かなきゃ』と評価や判断を気にしてしまいがちですが、ぬり絵はそれを気にせず好きな色を選べるので、マインドフルな姿勢を邪魔することなく今ここでの経験に集中しやすいと思います」

教えてくれたのは…

不安・嫉妬・イライラ。感情のコントロールの画像_10
臨床心理士 関屋裕希さん
専門は職場のメンタルヘルス。著書に『感情の問題地図』(技術評論社)など。心の元気を保つための、科学的根拠に基づく方法や関連情報を発信するウェブサイト「いまここケア」の開発にも携わる
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監修/関屋裕希 イラスト/ery 取材・原文/国分美由紀 構成・企画/渡部遥奈(MORE)