公開中&近日公開予定の話題作の中から、キーワードに沿った2本のイチ押し映画と、その他のおすすめ映画をご紹介します。

【今月のキーワード】ラブストーリーは“恋愛”だけじゃない

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クリスマスシーズンが近づくと甘くせつないラブストーリーが恋しくなるけれど、今回はあえて、家族の愛を描いたラブストーリーをご紹介。人気ドラマ『THIS IS US/ディス・イズ・アス』を手がけたダン・フォーゲルマン監督が、ニューヨークとスペインを舞台に何十年にもわたる壮大なストーリーを書き上げた。登場するのは数奇な運命でつながるふたつの家族。この人たち、実はかなり不運続き。7歳の時に事故で両親を亡くした女性がいたり、妊娠中の妻を突然失って心が壊れてしまった男性がいたり、胸が張り裂けるような悲しみに直面した人たちばかり。それでも救いがあるのは、自己憐憫に浸り続けるのではなく、悲しみと共存しながら人生を切り開いていく強さと、誰かをまるごと愛する優しさを持っていること。思えば、私たちが今存在していることは、両親や祖父母、そのまた先祖のラブストーリーが連なって生まれた奇跡。自分の中にある過去の大勢の家族の愛を思えば、どんなにつらい出来事に直面しても、登場人物たちのように勇敢に乗り越えられる気がしてくる。

【今月のイチ押し★シネマ1】『ライフ・イットセルフ 未来に続く物語』

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妻アビー(オリヴィア・ワイルド)の出産を目前に控えたウィル(オスカー・アイザック)は、想像を絶する事故に直面。その顛末に深く関わっていたのは、ニューヨークを旅行中のスペイン人少年だった。●公開中
©2018 FULL CIRCLE PRODUCTIONS, LLC, NOSTROMO PICTURES, S.L. and LIFE ITSELF AIE. ALL RIGHTS RESERVED.

【今月のイチ押しシネマ2】ボブ・ディラン『タイム・アウト・オブ・マインド』

監督が執筆中によく聴いていたことから、劇中で重要な役割として登場するのが、1997年に発表されたボブ・ディランの名作アルバム『タイム・アウト・オブ・マインド』。哀愁を帯びた曲が多い中、映画の最後に使われるのはロマンティックで甘いラブソング『Make You Feel My Love』。多くの歌手がカバーしてきたこの名曲の歌詞には、大切な人を無条件に受け入れて守り抜く思いがこめられた、まさに映画の家族愛に通じるメッセージが。
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ふたりめの妻と離婚した後に発表されたこのアルバムには、愛を喪失したディランが嘆きを歌った曲を多く収録。脚本を渡されたディランは楽曲の使用を快諾し、劇中では7曲が使われている。
CD¥2100(ソニー・ミュージックレーベルズ)

【まだまだあります、おすすめシネマ!】『カツベン!』と『パリの恋人たち』

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『カツベン!』
周防正行監督の5年ぶりの新作は無声映画に説明をあてる活動弁士をテーマにしたドタバタ喜劇。泥棒一味から追われたり、ライバル活動弁士とのいざこざに巻き込まれたりする、主人公の成田凌の困り顔はまさにハマり役。頼りないのにやっぱり応援したくなる。●12/13〜全国公開
©2019「カツベン!」製作委員会
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『パリの恋人たち』
ルイ・ガレルが監督と主演を務め、リリー=ローズ・デップが共演した恋愛映画。単純に言うとひとりの男をふたりの女が取りあう話だけど、パリジェンヌたちの高度な恋愛テクニックと気まぐれに唖然。大人の社会勉強をぜひ本作で。●12/13〜Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開
©2018 Why Not Production
原文/松山 梢