12星座全体の運勢

「大きな物語に取り込まれていく」

6月21日の夏至の日の夕方16~18時にかけて、蟹座1度で部分日食(新月)が起こり、晴れていれば日本全国で欠けていく太陽が観測できます。これは日食と新月、そして一年のうち最も日が長くなる夏至が重なる特別なタイミングであり、時代の移り変わりの上でもひとつの節目となっていきそうです。そのキーワードは、「大きな物語」。これは例えば「むかしむかし、あるところに……」といった語りで始まる昔話のように、歴史ないし共同体のもつ空間的・時間的射程の中に自らを位置づけ直していくことで、個人として好き勝手に振る舞う自由を失う代わりに、手で触れられる夢のような生々しい物語の中へと取りこまれていく。今季はそんな"クラい”感覚の極致をぜひ味わっていきたいところです。

牡牛座(おうし座)

今週のおうし座のキーワードは、「交通」。

牡牛座のイラスト
考えてみれば、死者であれ何であれ、異界との交通というものをほとんど遮断してしまったように感じる東京のような大都会は人が生きていくには不自然きわまりない場所であり、例えば京都のように死者たちの世界が周辺に広がり、地下には地獄への通路も開かれている街の方が、やはり"異界との交通”という点では風通しがよく自然なように思われます。

もちろん、"異界”は必ずしもはっきりと明確にイメージされてきた訳ではなく、漠然としていて混乱していますが、そこには決して"迷信”という言葉では割り切れない何かが含まれているのではないでしょうか。

例えば、日本の浄土教の祖と称され、平安中期に生涯にわたり比叡山横川に隠棲した源信(げんしん)は、浄土に往生するためのイメージや方法論を、切実で現実的な願いに応えるような形にして、広めていきました。

一箱の肉体は全く苦である。貪り耽ってはならない。四方から山が迫ってきて逃げるところがないのに、人々は貪愛によって蔽われ、深く色・声・味・触の欲望に執着している。永遠でないのに永遠に続くと思い、楽しみでないのに楽しみと思っている。(中略)まして刀山・火湯の地獄がそこに迫っている。

すぐそこに地獄が迫っている、それは刀が歯列のように永遠と並んでいる山であったり、煮えたぎるマグマをたたえた大釜とじつに鮮烈ですが、楽園に限らずこうした地獄の世界のイメージですら切り捨ててしまえば、生きている者の世界もまた殺伐とした貧しいものになってしまうように思います。

翻って、あなたには今どんなロードマップが見えていて、そこには分岐や選択の余地はあるでしょうか。

やがて自分がそこへ行き着くかも知れない世界や、その選択にあたってどんな準備をしなければならないかが今季のテーマになってくるおうし座にとって、どれだけ視野を狭めず、より豊かなヴァリエーションを展開していけるかが焦点となっていくはずです。


出典:川崎庸之・秋山虔・土田直鎮/訳『往生要集 全現代語訳』(講談社学術文庫)
12星座占い<6/14〜6/27>まとめはこちら
<プロフィール>
慶大哲学科卒。学生時代にユング心理学、新プラトン主義思想に出会い、2009年より占星術家として活動。現在はサビアンなど詩的占星術に関心がある。
文/SUGAR イラスト/チヤキ