12星座全体の運勢

「大きな物語に取り込まれていく」

6月21日の夏至の日の夕方16~18時にかけて、蟹座1度で部分日食(新月)が起こり、晴れていれば日本全国で欠けていく太陽が観測できます。これは日食と新月、そして一年のうち最も日が長くなる夏至が重なる特別なタイミングであり、時代の移り変わりの上でもひとつの節目となっていきそうです。そのキーワードは、「大きな物語」。これは例えば「むかしむかし、あるところに……」といった語りで始まる昔話のように、歴史ないし共同体のもつ空間的・時間的射程の中に自らを位置づけ直していくことで、個人として好き勝手に振る舞う自由を失う代わりに、手で触れられる夢のような生々しい物語の中へと取りこまれていく。今季はそんな"クラい”感覚の極致をぜひ味わっていきたいところです。

蠍座(さそり座)

今週のさそり座のキーワードは、「恋の夢」。

蠍座のイラスト
明恵(みょうえ)という華厳宗中興の祖でもある中世の僧のことは、今日では彼ほど几帳面に夢を記録した人が他にいないことで知られていますが、そもそも彼は一生不犯(一生を通して異性と交わらないこと)を貫いたとされるほど、とても信仰心の篤い人で、実際にその夢の多くも仏に関するものでした。

ただし、実際の夢の内容を見ていくと、これがなかなかに生々しいものが多いのです。例えば、彼が若い頃に見た夢には次のようなものがありました。

同十一月六日の夜、夢に見た。(中略)建物の中に威厳ある美女がいた。衣服などはすばらしかった。しかし、世俗的な欲望の姿ではなかった。私はこの貴女と一緒にいたが、無情にもこの貴女を捨てた。この女は私に親しんで、離れたがらなかった。私は彼女を捨てて去った。まったく、世俗的な欲望の姿ではなかった。

気持ちが惹かれていた女性を無理にでも捨てたという短い内容の中に、「世俗的な欲望の姿ではなかった」という言い訳がましい言葉が二度も登場しており、彼はその夢解きすなわち夢占いをして、「女は毘盧遮那仏(仏)なり」と結論し、夜中に起き出して道場で座禅を組んだそうです。

明恵にとって仏を愛する心は、世間の男女の愛を超えたものでありながら、どこまでも性的なものでもあり、彼が仏に近付く手立てとしたのは世俗的な欲望を使って世俗を超えようという非常に強烈なものでした。

こうした狂気すれすれまで何かを恋焦がれる力強さというは、現代社会ではもはや許容されなくなりましたが、精神的高揚や憧れの対象を改めてどこかに見出していかんとしている今季のさそり座にとっては、彼の垣間見せてくれた圧倒的な情熱は一つの指針となってくれるはずです。


出典:奥田勲・平野多恵・前川健一/編『夢記』(勉誠出版)
12星座占い<6/14〜6/27>まとめはこちら
<プロフィール>
慶大哲学科卒。学生時代にユング心理学、新プラトン主義思想に出会い、2009年より占星術家として活動。現在はサビアンなど詩的占星術に関心がある。
文/SUGAR イラスト/チヤキ