【創刊45周年特別連載】45歳。私が選ぶ道 ——山口もえさん

今回のゲストは20代の頃から変わらない天真爛漫なキャラクターで人気の山口もえさん。ふんわりした優しさの奥には、しんの通った揺るぎない価値観が。悩める私たち世代の背中を押す考え方は必読です。

2022年MORE10月号掲載企画から、インタビュー記事をお届けします。

「人生は思いどおりにならないことだらけ。でも、それが私の人生を豊かにしてくれました」

山口もえさんインタビュー「人生は思いどおの画像_1
「どんなに振り返っても過去は変わらないんだから後ろは振り向かない、前だけを向いて歩く」

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10&20代の頃

私が芸能界に飛び込んだきっかけは小さな勘違い。“ダンスレッスン無料”というチラシのうたい文句に誘われ、ダンス教室だと思って門を叩いたら、そこがまさかの芸能事務所だったんです(笑)。小学校の学芸会で『さるかに合戦』をやった時、演じたのは柿に当たってすぐに死んでしまうカニの役でした。恥ずかしがり屋で人前に出るのが苦手、表舞台に立つなんて考えたこともなかった私が「この仕事をやってみよう」と思ったのは……。実はヨコシマな気持ちからなんです。私が初めて出演したのはおみそのCMだったのですが、そこでたくさんのおみやげをいただき「なんて素晴らしい仕事なんだ」と思ってしまったんですよね。どうやら私、“無料”に弱いみたいです(笑)。
山口もえさんインタビュー「人生は思いどおの画像_2
20歳頃。仕事の幅も広がって怒とうの毎日だった

30代の頃

21歳の時に出演した『マツモトキヨシ』のCMが話題になったのをきっかけに、タレントや女優のお仕事もさせていただくように。20代は仕事に精進する日々でした。そして人生の大嵐に突入したのが30代。最高の幸せも人生のどん底も、想定外の出来事をいくつも経験。結婚して、子供をふたり産んで、離婚して、夫(爆笑問題の田中裕二さん)と再婚。また子供をひとり産んで……。自分がステップファミリーの一員になることも想像すらしていませんでしたからね(笑)。

30代、負けずに踏んばった。だから、今の私がいる

大嵐はたくさんの悩みも運んできたけれど、私がいちばん格闘したのは家庭と仕事の両立だった気がします。10代の頃から続けてきた仕事を大切にしたいけど、それを選べば子供との時間が削られ、子供を選ぶと仕事ができない。どこに比重を置くか悩み、いつも自分のことは後回し。怒とうの勢いで毎日があっという間に過ぎ去り、あまりの忙しさに当時の記憶がスポンと抜け落ちているほど。たまにふと思うんですよ、「私、次男に離乳食をあげたっけ?」って。それすらも思い出せなかったりして(笑)。

子供と向きあう日々の中で見つけた新しい自分、誰かのために生きることで得た強さ、家族と共に人生を歩く喜び……。30代は本当に大変でしたが、それと同じくらい得たものもたくさん。人生は思いどおりにいかないこともあるけれど、ムダなことはひとつもなくて。「あの出来事があったから、あそこで踏んばったから、今の私がいるんだ」とすべての出来事がつながっていく。

つらいことや大変なことを目の前にすると「これは跳ね上がるための一歩だ」と考える、私はポジティブなのかもしれません。どんなに振り返っても変えることができないからこそ、過去は振り返らずに前を向いて歩く。それもまた嵐の中で私が学んだこと。幸せを他人軸でなく自分軸で考えるのも大切なことです。隣の芝生が青く見えるのはお互いさま。どんなに幸せに見えても誰もが悩みや個人の事情を抱えている。みんな同じだからこそ比べたりねたんだりする必要はないんですよね。それでもモヤモヤする時は「100年後、生きている人なんていないもんな」と考えればいいんです。自分の不幸や失敗や命ですら、いずれは消えてなくなる。そう考えるとすべてがちっぽけなことに思えますから(笑)。

45歳の今

私の30代は“母として”そして“妻として”が最優先でした。子供が成長して少しずつ余裕が出てきた40代、今の私は「自分の幸せをもっと楽しんでもいいのかな」と考えています。というと、すごく大きな何かを始めそうな雰囲気ですが、私の楽しみといえば「普段は子供がいるから食べないタイ料理をひとりでこっそり食べにいく」くらいなんですよ(笑)。幸せの価値観は人それぞれ。グラス半分の幸せで満足できる人もいれば、グラスなみなみの幸せじゃないと満足できない人もいる。だったら、私は前者でありたい。だって、そのほうがトクしてる感じがするじゃないですか(笑)。何を求め、何に幸せを感じるのか、自分の心の声にちゃんと耳を傾け、小さな幸せをひとつひとつ拾い上げながら、これからも歩いていきたいですね。

悩める読者へのアドバイス

未来は「ノープラン」でもいいんです
振り返ると、私の人生って本当にノープラン(笑)。でも「こうじゃなきゃ」がないからこそ、自分の気持ちに正直になれたのかも。想定外の現実も楽しみながら受け入れられたのだと思います

PROFILE

Moe Yamaguchi
1977年6月11日生まれ、東京都出身。95年のデビュー後、バラエティなどを中心に明るいキャラクターで人気に。ホリスティックビューティアドバイザー、野菜ソムリエプロなどの資格も持つ。一男二女の母
Moe’s 45years
17歳 CMにてデビュー
21歳 写真集『moe?』発売
   『マツモトキヨシ』のCMのマミちゃん役が話題に
22歳   『号外!!爆笑大問題』レギュラー出演
      以後、『たかじんのそこまで言って委員会』、『志村けん一座』など多くのバラエティ番組や舞台に出演し人気に
28歳 結婚
30歳 第一子出産
33歳 第二子出産
      出産後もバラエティなどを中心に活動の場を広げる
38歳 再婚
39歳 第三子出産
(主な活動の一部を抜粋)
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撮影/YUJI TAKEUCHI(BALLPARK) ヘア&メイク/HIROKO(SECESSION) スタイリスト/濱中麻衣子 取材・原文/石井美輪