ブレイディみかこさんが日本の20代について感じたこと「“いい子でいなきゃいけない”と思って過ごしている部分もあるんじゃないかな」
from ブレイディみかこ & MORE 新しい季節、20代の女子たちへ
MOREで毎号エッセイを連載するブレイディみかこさんから、春、新生活を迎える20代の皆さんの背中をそっと押してくれるような言葉のエールが届きました。
ブレイディみかこプロフィール
英国・ブライトン在住のライター、コラムニスト。『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社)など著書多数。本誌では読者との座談会をもとに、20代の現状を独自の視点で切り取ったエッセイ「心を溶かす、水曜日」を連載中
ブレイディみかこ × モア編集長 薬師神葉子
ブレイディさんが、日本の20代について感じたこと、彼女たちに届けたいことについてモア編集長が聞いてみました。
「失敗する経験こそが、人生の選択肢を広げてくれるものなのかもしれない」
薬師神:モアは今、「選べる私、最高だ!」をキャッチフレーズに、主体的に選ぶことを応援しています。ブレイディさんは日本の20代女子にどんな印象を受けていますか?
ブレイディ:まず思ったのは、みんなすっごくいい子だな、ということで。でもそれってある意味「いい子でいなきゃいけない」と思って過ごしている部分もあるんじゃないかなと思いました。
薬師神:SNSなどの普及もあって今の20代は「素敵なこと」を目にする機会が昔より格段に多くなっているので「失敗してはいけない」という空気が世の中に漂っていることも理由のひとつかもしれないです。
ブレイディ:そうですよね。でも、失敗って決してネガティブなことだけではない気がします。そこから得るものって本当に大きいから。あと、何か自分が壁にぶつかった時の本当の意味での解決策はSNSのようにほかの人が提示しているデータの中にはないと思うんです。だからこそ自分の手で実際に経験して「ダメだった」ってことは実はかけがえのないものだったりする。
薬師神:春は、新しいことが始まることも多く、普段以上に「うまくやらなきゃ」と緊張する20代が多い季節。そんな時季にこそ、このエッセイや連載で何かに挑戦したり選択したりする時の不安な気持ちがほぐれるといいなと思っています。
ブレイディ:ありがとうございます。今の日本でモア読者の20代の皆さんが、何かを一気に大きく変えることはなかなか難しいと感じるかも。でもひとりひとりが少しずつ視野を広げていけば、必ず選択肢は増えていくはずです。今回のエッセイや毎号の連載を通して「こんな世界、こんな考え方もあるんだ」と少しずつでもいいので新しい視点を感じてもらえるといいな、と。それがモアで連載をする私の使命だとこっそり思っているんです。
エッセイ/ブレイディみかこ 撮影/吉田 崇 ヘア&メイク/川添カユミ(ilumini.) モデル/飯豊まりえ スタイリスト/大平典子 ※MORE2023年5月号掲載