インティマシー・コーディネーターが日本に上陸してから4年。日本が抱える課題は?【いげちゃんのコツコツSDGs】
日々、よく耳にする“SDGs”という言葉。なんのために取り組むの? 私にできることは何? SDGsに興味を持ち始めた井桁弘恵が、そんな疑問に向きあいます!
Vol.29-2 インティマシー・コーディネーターという職業を通して、性的同意を考える
「インティマシー・コーディネーター」という仕事を知っていますか? この新しい職業の日本における黎明期から活躍している西山ももこさんに、「性的同意」についてお話を伺いました。
教えてくれたのは……
日本初のインティマシー・コーディネーターから4年。変化を感じることは?
インティマシー・コーディネーターがドラマにも登場⁉
インティマシー・コーディネーターとして活動されていて、何か変化を感じることはありますか?
2023年に、インティマシー・コーディネーターが、「2022ユーキャン新語・流行語大賞」にノミネートされたり、ドラマに登場したりと、この職業の認知度は確実に上がっていますが、名前だけが広く浸透して、仕事内容が正確に世の中に伝わっていない印象があります。
それは、どういった点で感じられるのですが?
たとえば最近、映画やドラマの制作内部の人がインティマシー・コーディネーターの役割を担おうする事例も耳にしました。しかし、それでは本末転倒。制作者というだけで、すでにパワーバランスが存在しているので、本来の目的である出演者が安心して話せる環境の確保ができていません。この仕事というのは、第三者の立場から公平かつ客観的なアドバイスやサポートを提供することが求められるので。
今後、インティマシー・コーディネーターがより一層普及していく中で、この職業の役割や重要性を適切に啓蒙していくことが、これからこの業界が抱える課題のひとつだと思いますね。
西山さん「勉強をすることで、セクハラ・パワハラの限度もわかってくる」
海外では、インティマシー・コーディネーターがあふれている!
現在、インティマシー・コーディネーターは日本に数人しかいないということでしたが、実際日本で彼らを必要とする現場を回すには、何人くらい必要なんですか?
5〜6人はいるといいですね。海外にはインティマシー・コーディネーターがあふれていて、2020年時点では200人くらいでしたが、現在はもっと増えています。基本的に、この仕事は欧米圏で広まっていて、アジア圏はまだまだ。それを象徴していたのが、2月にベルリンで開催された世界各国のインティマシー・コーディネーターが集う国際会議です。参加者の8〜9割がコケージャン。また、女性以外のインティマシーコーディネーターも少ないのが現状です。多様な人種やさまざまなジェンダーのインティマシー・コーディネーターを育成していくことも、この業界の今後のミッションですね。
ハラスメントを学ぶ
近年、ニュースで“ハラスメント”というワードを耳にする機会が増えました。西山さんは、ICのトレーニングを受けた際に、ハラスメントについても学んだそうですね。
はい、勉強しました。“ハラスメント(個人の人格や尊厳を否定する言動のこと)”の定義や、その行為がどのように始まるかといった知識を身につけることは、自己防衛だけでなく、周囲の人々との関係を健全に保つうえでも非常に重要。自分自身がハラスメントをしてしまうことを未然に防ぐうえでもすごく役立ちます。
たしかに。このトピックについて向き合った時に浮上する疑問が、“ハラスメント”と“指導・注意”の違いだと思います。
そうですね。たとえば、遅刻をしてきた人に注意すること自体はハラスメントではありませんが、その時に、怒りの感情に任せて「育ちが悪い」「頭が悪い」など、人格を否定するような発言をしてしまうと、注意ではなく立派なハラスメントです。そういった事態に巻き込まれない、または自分自身がしてしまわないように、日頃からハラスメントについて学び、冷静なコミュニケーションを心がけることが大切ですね。
いげちゃんのコツコツ日誌
協調性を大事にする教育を受けて育ってきたこともあり、日常で違和感を感じることがあっても、「これくらいならしかたがない」と飲み込んでいた部分があると思いました。ハラスメントについて正しい知識を身につけて、声を上げるべきことには、声を上げる。それが、自分より下の世代のためにも必要だと感じました。
『インティマシー・コーディネーター 正義の味方じゃないけれど』が3/28発売!
西山さんの著書『インティマシー・コーディネーター 正義の味方じゃないけれど』(論創社刊)が3/28(木)より発売! インティマシー・コーディネーターという職業についてや、仕事内容を詳しく知ることができます。また、これからの時代を生きる若者に向けたメッセージも掲載! 日本の映像業界が抱える問題だけでなく、ジェンダーやハラスメントまで、幅広い人にとって知見が深まる内容となっているのでぜひチェックしてみてくださいね!
撮影/野田若葉 モデル/井桁弘恵 ヘア&メイク/山口春奈 スタイリスト/辻村真理 取材・文/海渡理恵