篠田麻里子の悪女ぶりも必見! 大森南朋、鈴木浩介、桐谷健太が3兄弟の愛憎劇に挑む映画『ビジランテ』
世界的なラッパーになる夢を見ながらも、片田舎でニート生活を送る不器用な若者の姿を描いた『SR サイタマノラッパー』で、一躍その名を知られるようになった入江悠監督。その後は亀梨和也主演のスパイ・アクション『ジョーカー・ゲーム』や、神木隆之介&門脇麦主演のSF映画『太陽』、韓国映画『殺人の告白』をリメイクした藤原竜也主演の『22年目の告白-私が殺人犯です-』など、様々なエンターテイメント作品を手掛けてきました。今や日本映画界を代表する若きヒットメーカーとして活躍する入江監督が、『SR サイタマノラッパー』シリーズ以来となるオリジナルストーリーに挑んだのが本作。生まれ育った埼玉県深谷市で撮影を敢行し、むき出しの欲望が暴走するバイオレンス・ノワールを完成させました。 主人公は暴君である父親を殺そうとした幼き3兄弟。長男の一郎はその事件の直後に失踪し、成長した次男の二郎(鈴木浩介)は父親の跡を継ぐように市議会議員に。そして末っ子の三郎(桐谷健太)は、デリヘルの雇われ店長として生きていた。ところが父親の死をキッカケに、30年ぶりに姿を現した一郎(大森南朋)。巨大ショッピングモール建設に必要な土地の相続を主張する二郎に対し、一郎は公正証書を盾に「遺産は俺がもらう」と言い放つ。思いもよらない一郎の帰郷によって兄弟の欲望や野心、プライドがぶつかり合い、凄惨な事態へ発展していく……。 とにかく驚くのは、監督自身が「社会的な問題提起、人間の醜い部分や弱さ、暴力とセックスなどの荒々しい部分をゴッタ煮状態で詰め込んだ125分」と表現するように、家族や土地という逃れられないしがらみの中、閉鎖的な地方都市で生きる3兄弟の愛憎を赤裸々に描いていること。コメディ色の強い作品を手掛けてきた監督のイメージを見事に覆されます。ただし、破滅的にしか生きられない一郎の絶望や、地位と家族の間で葛藤する二郎の哀しみ、そして闇社会に生きながらも優しい心根を捨てない三郎の美しさなど、それぞれが抱える背景が立ち上がる深みのあるキャラクター描写はさすが。演じた俳優陣の鬼気迫る演技も必見です。ちなみに、二郎を裏で操る妻の美希に扮したのは篠田麻里子。自分の欲望のためには手段を選ばない、ゾクゾクするような悪女ぶりも新鮮です! (文/松山梢) ●12/9〜テアトル新宿ほか全国公開 ©2017「ビジランテ」製作委員会