私たちが見ている世界とは? 綿矢りささんの『意識のリボン』

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マウンティングする中年女性の会話を聞きながら、30歳の誕生日にひとり鍋しながら、名字が変わることに戸惑いながら、生死の境をさまよいながら……。浮き沈み、揺れ動く、女であるがゆえの感情を、ときにエッセイのように、ときにモノローグのようにつづった8編の短編集。フィクションであるはずなのに、著者がこの作品群を書いていた時期に実際、結婚、出産を経験したことを思うと、その生々しい心理描写がゾクリとするほどのリアリティを持つ。人生の節目や変化を迎える時は、誰しも不安になる。でも、本作中の「『臆病になっちゃいけないね。大切なものを守りながらも、いろんな景色が見たい』」、「おびえることはない、救いは遠くにあるのではない、私は生まれたときからずっと所有している」といった言葉が、きっと、そっとあなたの支えになってくれるはず。(集英社 ¥1300)

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