9年間で9度死にかける!? 映画史上最も不運な少年の謎に迫った『ルイの9番目の人生』
シャンデリアがベビーベッドに落下してきて全身骨折、毒グモやハチに刺される、食中毒になったり感電して死にかける、叫び続けて呼吸が止まる……などなど、主人公のあまりの不運ぶりに「ギャグ映画?」と疑いたくなる作品をご紹介。イギリス人作家リズ・ジェンセンによるサスペンス小説の映像化で、主人公は生まれてからわずか8年間で、生死をさまよう大事故を8度経験してきたルイ。9歳の誕生日に両親と訪れた海辺で、断崖絶壁から転落するという9度目の悪夢に見舞われてしまいます。なぜこれほど不運に遭遇するのか、そして転落した理由は何なのか。ルイの謎を追う物語を主軸に、昏睡状態に陥る息子の身を案じる母や医師たちのドラマが、神秘的なルイの精神世界と共に紡がれていきます。 注目は、ミステリアスな物語を牽引するキャストたちの名演。特に命の危険にさらされている息子を必死で守ろうとする、母親のナタリーを演じたサラ・ガドンは必見。そこにいるだけで男性の視線を集めてしまう、周囲の女性たちから嫉妬されるほどの美貌に息を飲みます。そしてルイを演じた子役エイダン・ロングワースも、撮影時10歳だったとは思えないほど大人びた演技を披露。世の中を達観しているような、何かを諦めているような、ドキッとする眼差しを向ける聡明さに目を奪われます。『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』で注目されたイケメン俳優のジェイミー・ドーナンが、ナタリーに惹かれていく小児科医を演じているほか、アーロン・ポールが演じた元ボクサーで大酒飲みの父親など、個性的なキャラクターが登場。「腹の奥に何かを隠しているのでは?」と疑いたくなる、思わせぶりな彼らの演技に注目です。 ちなみに映画はだいたいジャンル分けされていることが多いけれど、この作品はひとつのカテゴリーには決しておさまりきらない、多面的な魅力を放つ物語。ラブストーリーなのかファミリードラマなのかファンタジーなのかミステリーなのか、最後まで先の読めない展開に翻弄されながら、ラストには「そうきたか!」と膝を打つ結末が。あまりの予想外の展開に、せつなさでギュッと胸がしめるけられます。なかでも印象的なのが、登場人物たちの愛のドラマ。ルイを思う両親の愛、両親を思うルイの愛、母親に惹かれていく小児科医の愛など、置かれた立場や表現方法は全く違うけれど、様々な愛の形があることを実感させられます。ラストに希望を感じるかどうかは人それぞれ。ぜひ劇場で、意外な愛の物語を堪能してみて。 (文/松山梢) ●新宿ピカデリーほか全国公開中 ©2015 Drax(Canada)Productions Inc./Drax Films UK Limited.