【岡山天音インタビュー前編】菅田将暉や監督も面白がる、岡山天音の"異形"さとは?
ドラマ『こっち向いてよ向井くん』や『日曜の夜ぐらいは…』、『ミステリと言う勿れ』など、話題作への出演が相次ぐ岡山天音さん。2024年1月5日に公開される最新主演映画『笑いのカイブツ』は、“伝説のハガキ職人”と呼ばれたツチヤタカユキ氏の半生を描いた同名私小説の映像化。笑いに取り憑かれ、まったく笑わない男の衝撃の生き様とは。「どうしても愛してしまうキャラクター」だと語る、ツチヤと岡山さんとの意外な共通点にも迫りました。
主人公・ツチヤと、俳優・岡山天音の共通点
──演じられたツチヤタカユキ役は、テレビの大喜利番組に投稿するために5秒に1本ネタを考え続ける生活を6年間送るなど、かなり独特なキャラクターでしたね。
僕が今回演じたツチヤタカユキは、純粋無垢で切ない人だなと思いました。そもそも自己肯定感が低くて、自分で自分を許してあげられていない。それは苦しいよなって思います。
だから切ないし、愛おしい。外側から見ると“カイブツ”と言われてしまうかもしれないけど、自分としては、どうしても愛してしまうキャラクターでした。
──撮影中について「引き裂かれそうになる日々でした」とコメントされていますね?
タイトルにもありますけど、“カイブツ”を宿している役だったので……。見た目は人間なのに、圧倒的に違う部分が内面にある。それによって外の世界と引き裂かれるみたいな感じでした。ただ部屋で座っているシーンでさえ大変でしたね。人間社会にいる限り辛くて、常に葛藤が伴っているような役でした。
──私生活にも影響がありましたか?
僕はオンとオフをめっちゃ切り替えられるタイプなので、休みの日に友達と遊ぶ時はそれはそれで完璧に楽しめるんです。でもやっぱり、地方で朝から晩まで撮影の時は海から上がっても海水が身体についているみたいな状態で。撮影の合間に筋トレをしたり走ったりして、気分転換していました。
ただ、この役は足し算でたくさん装飾している訳ではなく、引き算をしながら自分の根本に近いところで演じていたので、岡山天音とツチヤタカユキが遠ざかるという心配はありませんでした。
──劇中、ツチヤが自分の気持ちを初めて吐露するシーンがありましたが、岡山さんの迫力に圧倒されました。
一緒にあのシーンを演じていたのが、何度も共演してきた菅田(将暉)くんと松本(穂香)さんだったので、変な思考やザワザワを捨てて思いっきり役に飛び込んでいけたのは大きかったです。
特に菅田くんとは僕が初出演したドラマでも一緒だったので、もう同業というだけじゃないつながりを勝手に見出していて。僕はちょっとツチヤに似て“異形”な部分があるので、菅田くんはそれを面白がってくれる人でもあります。
──“異形”な部分とは?
言葉で簡単に言えることじゃないですけど、「上手いことやれない」っていう感じですかね。みんなが飄々とやっていることとか、飄々と通り過ぎることが出来ることでも、僕は血だらけになっちゃったりするので。このお仕事は本当に器用な人が多いし、10代の頃は特に、そういう器用な人たちが役に選ばれたりもしていて。より自分の異形さを強く意識していた気がします。
──そういえば監督は岡山さんのことを「いい意味で変」とコメントされていましたね。
人から言われる“変わってる”と、自分が思う“異形”って全然違っていて。たぶん、“変わってる”はもっとポップな意味だと思うんです。舞台挨拶や撮影のメイキングを見ていると、自分でも挙動が変だなと思うので(笑)。そういう表面的な部分が“変わってる”と言われる理由のような気がします。
でも“異形”は、もっとはみ出している感じ……。なんか悲しくなってきました(笑)。10代の頃はもっとわかりやすく社会と馴染めていなかったけど、今はさすがに、昔よりも馴染めていると思います!(笑)
Profile
おかやま・あまね●1994年6月17日生まれ、東京都出身。2009 年、NHK『中学生日記』で俳優デビュー。2017 年公開『ポエトリーエンジェル』で第32 回高崎映画祭最優秀新進男優賞、2018 年公開『愛の病』でASIAN FILM FESTIVAL最優秀男優賞を受賞。近年の主な映画出演作は『新聞記者』、『王様になれ』、『青くて痛くて脆い』、『FUNNY BUNNY』、『キングダム2 遥かなる大地へ』、『さかなのこ』、『沈黙のパレード』、『あの娘は知らない』、『BLUE GIANT』、『キングダム 運命の炎』など。『ある閉ざされた雪の山荘で』の公開も控えている。
映画『笑いのカイブツ』
何をするにも不器用。人間関係も不得意なツチヤタカユキ(岡山天音)の生きがいは、テレビの大喜利番組にネタを投稿すること。その実力が認められ、念願叶ってお笑い劇場の作家見習いになる。ネタを書くためにフードコートで長居をしていると、ハンバーガー屋の店員ミカコ(松本穂香)が声をかけてきて、素直にツチヤの努力を尊敬してくれる。ところが笑いだけを追求し、他者と交わらずに常識から逸脱した行動をとり続けるツチヤは周囲から理解されず、志半ばで劇場を去ることに。偶然出会ったピンク(菅田将暉)の紹介で、怪しげなバーで働くことになったツチヤは、カウンターでラジオを聞きながら、番組にネタを投稿するハガキ職人として再起をかける。すると、尊敬する芸人・西寺(仲野太賀)から声が掛かり、構成作家を目指して大阪から上京することに。 ●2024年1月5日(金)テアトル新宿ほか全国ロードショー
撮影/山本仁 ヘア&メイク/森下奈央子 スタイリスト/岡村春輝 取材・文/松山梢