黒谷友香さん48歳「いろんな人と共存しながら、巡りのいい人でいたい。」  

20代から東京と千葉の2拠点生活を続けている黒谷友香さん。未知の環境に軽やかに飛び込み、順応してきた生き方には人との縁を大切に育む健やかなマインドがありました。

座っている黒谷友香さん

ブラウス¥53900・パンツ¥61600・靴¥71500/アノア(セミクチュール) リング¥59400/バウゴヘイアン ブレスレット¥22000/エトワライト イヤカフ¥25080/ノムグ インナー/スタイリスト私物

モデルから俳優へ。人に恵まれたキャリアのスタート

「絶対に叶えたい」と思うほどの明確な夢がなかった私にとって、モデルは生まれて初めて憧れた職業。『MORE』や『non-no』などのファッション誌を読んで「楽しそうだな」という思いがだんだん大きくなっていきました。たまたま本屋で見つけた『mc Sister』の専属モデルオーディションに応募したのが17歳の頃。合格したと知った時は本当にうれしかったし、誌面を見た同級生たちも驚いていました。撮影がある日は地元の大阪から新幹線で東京へ。名古屋から合流するモデル仲間もいたので、毎回、修学旅行の延長みたいでした。都会での華やかな撮影は非日常だったけれど、家庭的な現場の雰囲気がとても楽しかったのを覚えています。

黒谷友香さん19歳の頃

19歳の頃の黒谷さん

高校卒業後に映画に出演しお芝居にも挑戦。初体験のことばかりで刺激的だったけれど、スタッフや共演者のみなさんが優しくてすぐに仲良くなりました。「お芝居って楽しい!」と思い、俳優の仕事に専念するために上京。舞台のイロハもわからなかったけれど、岸谷五朗さんと寺脇康文さんの演劇ユニット地球ゴージャスの旗揚げ公演にも出演しました。環境の違いに戸惑ったり不安に駆られる暇もなく、がむしゃらに取り組んでいたらあっという間に50公演を走り抜けていたんです。今思えば本当に温かい現場が続いたし、人に恵まれたキャリアのスタートだったと思います。

黒谷友香さん横顔

20代前半で始めた東京と千葉との2拠点生活。そこで得た財産

20代前半にスタートさせたのが、乗馬をきっかけに魅了された千葉県・房総半島と東京との2拠点生活。今でこそよく知られるようになったライフスタイルだけど、当時は「なんでわざわざ千葉に家を買ったの?」と、まるで変わり者扱いでした(笑)。東京でのお仕事もすごく楽しかったけれど、自然の中で過ごす千葉での生活がとても心地よかったんです。数少ない友達のご縁をきっかけに、乗馬仲間だけでなく幅広い年代の友達ができました。10〜20代の友達とはガーデニングやDIYをしたり、30〜40代の友達とは一緒に買い物をしたり、60〜70代のお姉さま方には茶道や香道、インテリアやファッションのセンスを学ばせていただいたり。自分の知らないことを教えてもらえるおかげで、価値観を常に更新できる環境に身を置くことができています。東京では出会えない人たちと友達になれたのは、私の財産ですね。

黒谷友香 カバー BART

22歳ごろの黒谷さん BART1998年No.4 撮影/丸谷嘉長

自分で限界を決めつけなければ、可能性は広がっていく

「今の自分をつくったな」と思えるのは、つかこうへいさんの舞台で鍛えさせていただいた30歳前後の経験。ものすごい量のセリフ劇なのですが、稽古したセリフが翌朝に新たに改訂されているということの繰り返し。永遠に完成がないんです。ただし「絶対にこれをしろ」と一方的に言われるのではなく、いろいろな提案で導いてくださるので、気づけばできることが増えていきました。もしもあの時に「もう無理!」と投げ出してしまっていたら、今の私はいなかったかもしれない。自分の限界を自分で決めつけないほうが、可能性が広がることを知りました。

黒谷友香さん全身

具体的にこうなりたいというビジョンだけを追ってきたのではなく、その瞬間を全力で楽しむという選択もしてきたと思います。だから常に「今が最高!」っていう感覚。もちろん失敗したり落ち込むこともあるけれど、そんな時は家に閉じこもらずに千葉へ。仲間とハーブを育てたり、バーベキューをしたり、ドライブをしたり。俳優ではない、ありのままの素の自分を受け入れてくれる人と場所があるからこそ、頭の中をリセットできています。これほど素敵な友達に恵まれている理由は……人見知りをしないから(笑)。自分から話しかけるし、意見が違っても否定せずに「そういう考えもあるんだね」と受け入れます。いろんな人と共存しながら、めぐりのいい人でいたい。きっとこれからも2拠点生活をしながら、楽しく独身でいるんだろうな(笑)。

黒谷友香さんバストアップ写真

あの頃の私へ、伝えたいこと

とにかく今を楽しんでアクションを!

若さの特権は、お金がなくても体力があること。徹夜だってできますからね。自分の時間を自由に使える時期でもあるから、興味があることは思い切ってアクションを起こしてみてほしい。経験してみないと自分に合うか合わないかはわからないから。そしてその経験は、必ずその後の自分の武器になると思います。

Tomoka’s 48years

17歳 雑誌『mc Sister』の専属モデルオーディションに合格しモデルとしてデビュー

19歳 映画『BOXER JOE』のヒロイン役オーディションに合格。俳優に転身地球ゴージャス第1回公演『瓶詰の地獄〜いつまでもたえることなくともだちでいよう〜』で舞台デビュー

20代前半 『チョーヤ梅酒』のCMで広く知られる
乗馬をきっかけに、東京と千葉県・房総半島の2拠点生活をスタート

22歳 『噂の!東京マガジン』の司会を担当

29歳 つかこうへいの舞台『熱海殺人事件・平壌から来た女刑事』に出演

30歳 『TANKA』で映画初主演

46歳 ペニンシュラ(半島)応援特使に任命

黒谷友香

くろたに・ともか●1975年12月11日生まれ、大阪府出身。雑誌『mc Sister』の専属モデルを経て、1995年に映画『BOXER JOE』で俳優デビュー。ドラマや映画、舞台やCM、バラエティ番組など幅広く活躍中。主な出演作は『相棒』シリーズ、『牙狼〈GARO〉ハガネを継ぐ者』、来年公開予定・映画『ゴッドマザー~コシノアヤコの生涯~』など。



撮影/芹澤信次 ヘア&メイク/千吉良恵子(Cheek one)スタイリスト/辻村真理 取材・文/松山梢