生きていてほしいか、無実を信じるか。母と父の切実な思いと作品の力に圧倒されました。

【岡田健史さんインタビュー】映画『望み』の画像_1
子供も親も自分の人生を生きるべき。そう岡田健史さんが気づいたのは、高校に入学した頃。両親に衝撃のひと言を告げたという。

「野球をするために進学した高校で寮生活を始めたんです。身の回りのことがひとりでできるようになり自信がついたと同時に、これまで両親がしてくれたことの大変さを痛感して、めちゃくちゃリスペクトしました。これからは僕のことよりもふたりの人生を楽しんでほしいという思いから、『離婚してもいいよ』って言ったんです。ケンカはしてないし、ふたりは今でも仲よしなんですけどね(笑)」

親子の関係は人それぞれ。映画『望み』は、そんな“家族”について誰かと語りたくなる作品。岡田さんが演じたのは、高校生の役。友人が殺害される事件が起き、同時期に行方不明になった規士は加害者なのか、被害者なのか。父と母の切実な思いが交錯するミステリーだ。

「たとえ加害者だったとしても、お腹を痛めて産んだ息子に生きていてほしいと願う母親と、被害者でもいいから息子の無実を望んでしまう父親。男性と女性の考え方の違いで最後まで引っぱりきる、作品の力に圧倒されました。僕はそんな両親を振り回す役どころなので、社交性をなくすことを意識しました。それが反抗期に見えればいいし、不気味に映ればいいなと思ったんです」

野球少年だった岡田さんが演技に魅了されたのは、野球部引退後の高校3年生。演劇部にスカウトされ、大会に出場したことだった。

「もともとは大学でも野球を続けるつもりで、公募推薦入試を受けて1カ月だけ大学に通ったんです。受験の次の日に演劇の大会があって、『役者になろう!』と決意するんですが、実はその入試で2番目にいい成績を取ったんです。これ、僕の自慢(笑)。勉強も頑張ってました」

両親から「無理はしても無茶はするな」と心配されるほど、興味があることには常に全力投球。その興味の対象は今、お芝居に向いている。

「欲しいものは、卓越した感性。日日いろんな人と会って話したり感じたりしたことが仕事に生きるから、すごく面白いんです。これは果てがないから、手に入れることなく死んでいくのかもしれないですけどね」

デビューして2年。考えを的確に言語化できるクレバーさは、すでに大物の風格。「先輩からもらったことを次の世代にグレードアップして渡せる大人になりたい」と真顔で語ったあと、「いい人ぶっちゃいましたね」と照れ笑いする姿に、少しだけ21歳の素顔が見えた気がした。


おかだ・けんし●1999年5月12日生まれ、福岡県出身。ドラマ『中学聖日記』でデビューし、ドラマ『いとしのニーナ』、『MIU404』などに出演。映画『ドクター・デスの遺産-BLACK FILE-』(11/13公開)、『新解釈・三國志』(12/11公開)、大河ドラマ『青天を衝け』(2021年)が待機中

『望み』

【岡田健史さんインタビュー】映画『望み』の画像_2
誰もがうらやむ幸せな石川家の日常は、高校生の長男・規士(岡田)が突然姿を消したことで一変。規士の友人が遺体で発見される事件が起こり、「もうひとり殺されたらしい」という噂が広がる……。●10/9〜TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
©2020「望み」製作委員会
撮影/刈馬健太 ヘア&メイク/KOHEY スタイリスト/藤長祥平 取材・原文/松山 梢 構成/渡部遥奈(MORE) ニット¥34000・パンツ¥32000/ステディ スタディ(トムウッド) その他/スタイリスト私物