2021年MORE6月号掲載企画から、インタビュー記事をお届けします。
2021年MORE6月号掲載企画インタビュー、水原希子
みずはら・きこ●1990年10月15日生まれ、アメリカ出身。女優、モデル、デザイナーとしてマルチに活躍中。最近の主な出演作にドラマ『リモートな恋』(2020)、映画『あのこは貴族』(2021)がある。Instagram(@i_am_kiko)のフォロワー数は575万人を超える(4/5現在)

今までと変わらず自分の心の声に耳を傾けながら、30代を楽しみたい。

ふたりの女性の間を行き来する極限の愛を描いたNetflix映画『彼女』。水原さん演じるレイは、痛々しいほどに自分をすり減らしながらも愛する人のすべてを受け入れる。脚本を読んだ時、水原さんが最も強く惹かれたのは、レイというキャラクターそのものだった。

「約10年間役者のお仕事をさせていただいてきた中で、ここまで感情をむき出しにする役に出会ったことがなかったし、今後もなかなか出会えない気がしたんです。レイは本当に不器用な人で、自分が人生で初めて愛した七恵(さとうほなみ)を助けるためによかれと思ってお金を貸したことで、結果的には彼女をより苦しい状況に追い込んでしまう。その事実に目をつぶって何ごともなかったかのように生きることもできたはずなのに、家族やパートナー、たくさんの人を裏切ってもなお彼女との人生を望むんですよね。当然そんなふたりを取り巻く環境はどんどん過酷になるわけですが、人間ってときには愛する人のために、そして自分のために、ボロボロになることを覚悟のうえで決断をしなきゃいけない時があるはずなんです。だから、それができるレイはすごくカッコいいし、彼女が愛する人に対して見せる姿勢にはどこか共感できる部分があるんじゃないかと思います」
自分の心にわき上がる声に耳を傾け、ただひたむきに前へ——。それは、水原さんがひとりの女性として歩んできた人生も同じ。

「20代は、仕事もプライベートもやりたいことを全部やってきました。29歳からは2種類のダンスを習い始めて、パーソナルトレーニングにも通って、大好きなサウナも極めようとしているところ。そうやって目まぐるしく動いていると、たとえばファッションやクリエイティブなものはずっと変わらず私の軸にあるんだなとか、自分自身をより理解できるようになったし、チャレンジしたいことも明確になってきたんです。だから、30代はそういう想いを悔いなく表現していきたい。そこはレイと同じで、周囲には理解されないこともあるかもしれないけれど、一回きりの人生だから今まで以上に自分に正直に生きていこうと思っているんです」

いつか同じように30歳を迎えるモア読者には、こんなメッセージ。

「今の私は、やりたいことを形にできるようになってきたのがうれしくて、〝よし! まだまだいける!〟という感じ(笑)。読者のみなさんにも、30歳になった時の選択肢を広げるために、アクティブにいろいろな挑戦をしてみてほしいです」

Netflix映画『彼女』

Netflix映画『彼女』ビジュアル
仕事も恋も順調な永澤レイ(水原)と、夫から壮絶なDVを受けている篠田七恵(さとう)。高校時代から七恵に恋をしていたレイは、彼女のために七恵の夫を殺害。正しいことも悪いことも、愛も憎しみも限界を超えた、ふたりの美しくもはかない逃避行が始まる。●Netflixにて配信中
撮影/嶌村吉祥丸 ヘア&メイク/白石りえ スタイリスト/小蔵昌子 取材・原文/吉川由希子 構成/渡部遥奈(MORE)