12星座全体の運勢

「飛び地へとアクセスしていくこと」

6月21日には372年ぶりの夏至の日食(新月)がありましたが、7月22日からの「大暑」に前後する7月21日にはそれに続き蟹座での2度目の新月を迎えます。

今回の新月は「取り込まれるべき大きな物語」がテーマだった前回の新月に対するフォローアップ的な位置づけにあり、この一カ月のあいだに土星が山羊座へ戻り“試練や課題”が明確になってきた状況において、改めてこれからその中で生きていきたい世界や価値観を選びなおしていく軌道修正のタイミングなのだと言えるでしょう。

その際、意識していきたいのが「直感に従って選ぶ」ということ。もしいまあなたの前に二つないし複数の選択肢があるなら、以前の自分であれば無意識的にこっちを選んでいたなという“自分が逃げ込みがちな”選択肢(しかし長い目で見れば破綻が明らかな)ではなく、一見奇妙に見えたり、これまでの現実の延長線上から外れたところに現れた“飛び地”的な(したがってほとんど孤立した)特異点、すなわち未知の領野へアクセスするような選択肢を選んでいきたいところです。

射手座(いて座)

今期のいて座のキーワードは、「籠城と彷徨」。

射手座のイラスト
いよいよ世相は混沌を極めてきていますが、「病気の進行」と「戦争の勃発」と「精神の彷徨」とをひとつの作品に凝縮しえた例として、第一次世界大戦が勃発した1914年から10年の月日をかけて書かれたトーマス・マンの小説『魔の山』をいま改めて取りあげておくことは、それなりの意義があるように思います。

主人公ハンスは3000メートル級の山々が続くスイスで療養中のいとこを見舞いに行きますが、そこで自身も結核を発症しじつに7年間ものあいだ逗留を余儀なくされます。

富裕層が集まり一日5回の豪華な食事が出るサナトリウム(結核の療養所)で食っちゃ寝、食っちゃ寝の生活を送りつつも、彼はそこで恋をしたり、著名な知識人たちのあいだで起こる論争や決闘に立ち会ったりしつつ、小難しいことをいろいろと考えるようになるのですが、それは変えることのできない生まれた時代やみずからの血にまつわる宿命を引き受けていくための文学的な「籠城」に他なりませんでした。

そして、マンは「読者は患者なんだ」という仕方で、その矛先をこちらに向けつつ、結核という細菌やウイルスがもたらす疾病が一個人をこえて人類にとってどんな意味を持つのかという問いを突きつけてくるのです。

今期のいて座もまた、青年ハンスのごとくあえて行動を制限してお籠りモードにしていくことで、自身がぶつかりつつある宿命についての思索をどこまでも深めていくといいでしょう。


出典:トーマス・マン、高橋義孝訳『魔の山(上)』(新潮文庫)
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<プロフィール>
慶大哲学科卒。学生時代にユング心理学、新プラトン主義思想に出会い、2009年より占星術家として活動。現在はサビアンなど詩的占星術に関心がある。
文/SUGAR イラスト/チヤキ