12星座全体の運勢

「飛び地へとアクセスしていくこと」

6月21日には372年ぶりの夏至の日食(新月)がありましたが、7月22日からの「大暑」に前後する7月21日にはそれに続き蟹座での2度目の新月を迎えます。

今回の新月は「取り込まれるべき大きな物語」がテーマだった前回の新月に対するフォローアップ的な位置づけにあり、この一カ月のあいだに土星が山羊座へ戻り“試練や課題”が明確になってきた状況において、改めてこれからその中で生きていきたい世界や価値観を選びなおしていく軌道修正のタイミングなのだと言えるでしょう。

その際、意識していきたいのが「直感に従って選ぶ」ということ。もしいまあなたの前に二つないし複数の選択肢があるなら、以前の自分であれば無意識的にこっちを選んでいたなという“自分が逃げ込みがちな”選択肢(しかし長い目で見れば破綻が明らかな)ではなく、一見奇妙に見えたり、これまでの現実の延長線上から外れたところに現れた“飛び地”的な(したがってほとんど孤立した)特異点、すなわち未知の領野へアクセスするような選択肢を選んでいきたいところです。

山羊座(やぎ座)

今期のやぎ座のキーワードは、「マトモからヘンタイへ」。

山羊座のイラスト
ダイエット依存症の女の子とか、“腐”女子とか、オタクとか、そうした90年代以降の少年少女に見られる現象について論じた中島梓の『コミュニケーション不全症候群』は、次のようなことわりから始まります。

私が一番怖いのはマトモな人です。私が一番キライなのは偉い人です。私が何より苦手なのは立派な主婦のかたと自信たっぷりのおっさんです。そういう人、つまりは由緒正しいお父さんとお母さん軍団のために私たちはこんなに苦しまなくてはなりませんでした。

ここでいう「私たち」とは、“マトモ”でない人、“マトモ”ではいられなかった人のことであり、著者はそういう人たちに向けて次のようなメッセージを送っています。

ひとことで云えば、いまの世の中、ヘンタイにならんで生きてゆけるほうがどうかしてるんだぜ、ということです。また、ヘンタイの底に希望が見える、というようなお話でもあります

ここでいう“ヘンタイ”とは、他人に飼われるために、愛されるために、選ばれるために過剰適応してしまうまともな生き方とは別の、純粋に自分自身の楽しみを追求することができ、かつ自分の病いに或る程度自覚的な人たちのこと。

そして、“マトモ”と“ヘンタイ”、そのどちらを選ぶのかという問いは、今のやぎ座の人たちにとっても切実なものであるはず。もしどちらかで悩んでいるという人は、中島梓の次のような呼びかけに一度向き合ってみるといいかも知れません。

私たちは誰だって本当は父殺し、母殺しを夢見ている子供部屋の奴隷たちだったのではないでしょうか

優等生でなくたって、正しくなくたって、愛されてなくたって、好きに生きていいのだと改めて気づくためにも。


出典:中島梓『コミュニケーション不全症候群』(ちくま文庫)
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<プロフィール>
慶大哲学科卒。学生時代にユング心理学、新プラトン主義思想に出会い、2009年より占星術家として活動。現在はサビアンなど詩的占星術に関心がある。
文/SUGAR イラスト/チヤキ