12星座全体の運勢

「<新しい日常>への通過儀礼」

暦の上では秋が始まる「立秋」を過ぎて最初の新月を迎えるのが8月19日。それは、暑さが落ち着く「処暑」すなわち太陽が乙女座に入る直前、体感的にも夏の終わりを感じさせてくれる蜩(ひぐらし)の鳴く獅子座終盤あたりで起きていきます。

そんな今回の新月のテーマは、「新しい日常へ」。それはどこか空々しく響いてしまう上からの号令によってみな一斉に同じところから始まるものではなく、あくまでここしばらくの悪戦苦闘や悶え苦しむ期間をやっとの思いで抜け出した結果、流れ着いた先で自分がもうすでに新しい日常に立っていることを後から実感していくはず。夢から醒めた後の起き抜けの朝のひとときのようにおごそかに、しかし、確かにこれまでとは決定的に違う世界にいるという確信を胸に、新たな門出の仕度を整えていきましょう。

「もはや夜はなく、<救い主である神>が人間たちを照らすが故に、ランプや太陽の光は要らなくなる」(『ヨハネ黙示録』第二十二章、5節)

この場合の<神>とは、他でもない自分自身であり、あるいは古い自分を先導する新しい自分のことなのだと思います。

牡牛座(おうし座)

今期のおうし座のキーワードは、「秘密と予感」。

牡牛座のイラスト
ユングをめぐっては、心理療法の理論を確立した科学者というより、もはやオカルティストとしてのイメージが強いように感じられますが、最晩年期の彼が自身の人生―特に幼少期に見た夢がいかに自分の人生に影響を与えてきたかについて語っている『ユング自伝』などを読むと、どちらが彼の本質なのかという話以前に、秘密を持つこと自体が彼にとってきわめて重要なことだったということがよく分かります。

彼はおもむろに「子供のときから私は孤独を感じていた」と述べ、おそらく「人は多くのことを知るときに孤独になる」のではないかと読者に投げかけます。

いわく、「孤独な人ほど交わりに敏感な人はいない。そして、個々人がその個性を忘れず、自分と他者とを同一視しないときに初めて真の交わりが生じるのである」。そして、次のように続けるのです。

われわれがなんらかの秘密を持ち、不可能な何ものかに対して予感を持つのは、大切なことである。(中略)それは、われわれの生活を、なにか非個人的な、霊的なものによって充たしてくれる。それを一度も経験したことのない人は、なにか大切なことを見逃している」と。

今期のおうし座もまた、自身が抱えている事実をいかに秘密へと深めていけるか、あるいは、どこまで意図的に孤独を引き受けることができるかということを通して、<新しい日常>の新しさがどれほどのものになるか決まってくるように思います。
 

出典:ユング、河合隼雄・藤縄昭・出井淑子訳「ユング自伝」(みすず書房)
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<プロフィール>
慶大哲学科卒。学生時代にユング心理学、新プラトン主義思想に出会い、2009年より占星術家として活動。現在はサビアンなど詩的占星術に関心がある。
文/SUGAR イラスト/チヤキ