12星座全体の運勢

「風の便りを受け取って」 

2月19日には節気も「雨水」に変わり、雪や氷が溶けていよいよ春に向けて草木も芽吹き始めますが、そんな折の2月27日にはおとめ座で満月を迎えていきます。 

今回の満月は、2月18日に体制と制約の土星と激しくぶつかり合った変革と解放の天王星と歩調を合わせつつ、後者の影響力を一気に押し広げていくような配置となっていますが、そのテーマを端的に表すとすれば「癖や偏りの昇華」となるでしょう。 

つまり、無理にエネルギーを集中させて単発的に興奮していくというのではなく、みずからの身体の要求を素直に聞いて、瞬間瞬間の生命の流れにうまく乗っていくなかで、ふつふつと静かな快感が湧いてきて、ごく自然に発散が起きてくるというイメージです。 

ちょうどヒヤシンスの花が開いていく時期でもありますが、幕末に伝わったこの花には「風信子」という漢字が当てられています。「風信」は風の便りという意味も持っており、風に漂うほのかな香りがそっと春の便りを届けてくれますが、今期はそうした微細な変化の流れにきちんと身をもって反応・順応していけるかどうかが、各自においていつも以上に問われていくのではないでしょうか。 

水瓶座(みずがめ座)

今期のみずがめ座のキーワードは、「善友」

水瓶座のイラスト
考えてみれば、異界をすっぱりと遮断してしまった東京のような大都会の方が歴史的にも特殊で不自然なのであって、むしろ長い間人間は死者や異界の者たちと共存して生きてきましたし、そうした感覚は決してすべてを迷信として斥けきれない大事なものを含んでいるのではないでしょうか。 

例えば、平安の都は陰謀によって死に追いやられた早良親王(桓武天皇の弟)たちの亡霊につきまとわれていた訳ですが、実際に個人の死後のことが大きな問題となっていったのは平安中期であり、そのきっかけとなったのが源信の『往生要集』でした。 

一箱の肉体はまったく苦である。貪り耽ってはならない。四方から山が迫ってきて逃げるところがないのに、人びとは貪愛(とんあい)によって覆われ、深く色・声・香・味・触の欲望に執着している。永遠でないのに永遠に続くと思い、楽しみでないのに楽しみと思っている。(中略)まして刀山・火湯の地獄がそこに迫っている。」 

本書に出てくる地獄を含む六道(地獄・餓鬼・畜生・修羅・人・天)を輪廻するという死生観は、その後絵画や説教などを通して日本人のあいだに広く定着していきました。現世への執着を捨て、心乱すことなく臨終を迎えることで浄土に往生するという浄土教の教えは当時の人びとにとって決して観念的なものではなく、きわめて現実的で切実な祈念でした。 

そして、ここで注目すべきは恐らく源信自身が指導者となって結成された「二十五三昧会(にじゅうござんまいえ)」というもので、極楽往生を目指すという目的で集まった二十五人で結社を結び、お互いの念仏行を助け合いながら立派に臨終を迎えていくべく、毎月一五日に共に不断念仏として修したのだとか。 
 
今期のみずがめ座もまた、自身の願いを遂げるための「善友」として互いの行を助け合えるような結びつきを一つ一つたぐり寄せていきたいところです。 


参考:川崎庸之・秋山虔・土田直鎮/訳『往生要集 全現代語訳』(講談社現代文庫)
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<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ