12星座全体の運勢

「心の奥底の実感を」 

4月20日に太陽がおうし座へ移り、二十四節気の「穀雨」に入ると、稲の苗もすくすくと伸びていき、いよいよ緑したたる季節へ。そんな中、4月27日にさそり座7度(数え度数8度)で満月となります。 

今回のテーマは「内面の静けさ」。すなわち、これから初夏にかけて存分に生命を燃やし、またそれに必要な備えや人手を取り入れていくべく、ますます賑やかな季節を迎えていくにあたって、今回の満月が「本当にそれでいいの?」と自分自身に最終確認をとっていく期間となるのだということ。 

ちょうど、この季節に使われる季語に「霞(かすみ)」があります。これは水蒸気の多い春に特有の、たなびく薄い雲を総称してそう呼ぶのです。麗らかな春の日にふと動きをとめて、水筒の麦茶でも飲みながら、遠くの霞を眺めているうちに、ふっと何かを思い出したり、妙な気持ちになったことがあるという人も少なくないのではないでしょうか。 

そうして周囲の音が一瞬遠くなったように感じられた時、既存の手垢のついた言葉では形容することのできなかった微妙な感情や、名状しがたい衝動がこころの表面によみがえり、急になまなましく感じられてきたり、実感が追いついてきたり。あるいは、春の夜空に浮かぶ霞たなびく朧月を眺めている時、ふと心のどこかにひっかかっていた違和感が鮮烈に立ち上がってきたり。 

今期はそんな風に、ゆっくりと、ないし、しみじみと心の奥底の実感を浮き彫りにしていくべく、自分のこころやからだと静かに向きあっていく時間を持っていきたいところです。 

牡羊座(おひつじ座)

今期のおひつじ座のキーワードは、「エロティシズムの源泉」。

牡羊座のイラスト
日本人はいつごろからか、悪や暴力性など本来なら宗教と関わるような問題に対して口を閉ざし、代わりに手軽なスピリチュアルをカジュアルに消費するようになりました。 
 
しかしそんな日本も伝統的に見れば、空海などは自分のエロティシズムと真正面から向きあいましたし、彼が中国から京都の東寺にもたらした両界曼荼羅などを見ると、やはり人間というのがいかに快楽的でエロティックな存在かということに対してきわめて自覚的だったのではないかと思わずにはいられません。 
 
というのも、宗教学者の山折哲雄の『悪と日本人』によれば、「戦後になりまして、写真家の石元泰博さんが、その両界曼荼羅を克明に写真に撮ったわけです。そうしたら驚くなかれ、一つ一つの仏菩薩、大日如来が婉然と笑ったコケティッシュな女の集団として描かれているということが明らかになった」というのです。 
 
女性たちが薄絹を着て、豊満な肉体をして、笑ったり、コケティッシュな目つきをしたりしているその様子について、山折は「遊郭の世界のよう」とも評していますが、それが我が国では最も古い由緒ある曼荼羅として、千年以上にわたり礼拝や瞑想の対象とされてきた訳です。 
 
人間の暴力性とエロティシズムは深いつながりがありますから、空海はそういうエロティシズムの恐ろしさを知っていて、宗教とエロティシズムのあいだを深いレベルで行ったり来たりできるようにすることを大切にしていたのでしょう。 
 
つまり、まず自分自身の快楽の源泉、エロティシズムの源泉を見つめよう、と。そこに向きあい、あるいは超えていくということがなければ、宗教的な悟りであったり、神秘体験というものもあり得ないのだ、と。そういう考え方があったのだと思います。 
 
今期のおひつじ座もまた、そんな風に自身のエロティシズムというものと改めて向きあってみるといいでしょう。 


参考:山折哲雄『悪と日本人』(東京書籍) 
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<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ