12星座全体の運勢

「幻想の外へと飛び出して!」 

日増しに気温の下がり始める「霜降」が近づき、蟋蟀の鳴き声もいつの間にか聞こえなくなってくると、ますますひんやりとした秋の夜長を愉しめるようになってきますが、そんな中10月20日にはおひつじ座27度(数えで28度)で満月を迎えていきます。 

「大胆な行動」を促す火星や「根本的な変容」を司る冥王星を巻き込む形で配置される今回の満月のテーマは、「子宮内幻想からの脱皮」。これまで無意識的に調子をあわせてきた理想像だったり、なんとなく正しいとされ従ってきた決め事だったり、それらいつの間にか色あせてきつつあった馴染みの「幻想」をいよいよ破棄し、もっとおのれの欲望に忠実になっていくためのきっかけや実感を掴んでいくにはもってこいのタイミング。 

ちょうど秋の日の暮れやすいことの喩えで、よく「秋の日はつるべ落とし」などと言いますが、人によっては「つるべ」を井戸の中に落とすときのように、急速に意識が切り替わっていきやすいでしょう。 

さながら一度も離れたことのない塔から脱け出していくラプンツェルのように、「こうしておけば無難で安全」という領域の“外”へと思い切って飛び出していきたいところです。 
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牡羊座(おひつじ座)

今期のおひつじ座のキーワードは、「職業というより中毒」。

牡羊座のイラスト
九十二年近くの人生で七十八冊の本を出した作家のサマセット・モームは、毎日午前中の三、四時間かけて千から千五百語執筆することにしていたのだと言います。 
 
2004年に出版されたモームの伝記の作者ジェフリー・マイヤーズによれば、「それは職業というより中毒だった」「モームにとって書くということは飲酒と同じで、はまりやすく抜けるのが難しい習慣だった」そうですが、考えてみればそういう中毒や癖を仕事にできるのならそれにこしたことはないのではないでしょうか。 
 
日本社会では、どうしても働くことは苦しいことであり、我慢して苦労することができるのでなければ一人前ではない、といった集団幻想がいまだに幅を利かせているようなところがありますが、以下に紹介するモームに関するささやかなエピソードは、そうした集団幻想の馬鹿らしさを改めて味わうのにちょうどいいように思います。 
 
午前中の仕事を正午ごろ終えると、まだ書きたくてうずうずしていることがよくあった。「書いているとき、ある登場人物を作り上げていくとき、それはつねに私につきまとって、頭のなかを占領している。そいつは生きているんだ」モームはそういい、さらにこう付け加えている。「もしこれを自分の人生から切り離したら、とても寂しい人生になってしまうだろう」」 
 
あなたにも、そういううずうずを感じさせてくれる時間や、離れがたい楽しみの一つや二つ、思い当る節があるはず。 
 
今期のおひつじ座は、そうした楽しみを「当然のように」取りあげようとする大義名分や正論めいた物言いを、ふとした拍子にゴミ箱に放り投げていくといいでしょう。 


参考:メイソン・カリー、金原瑞人・石田文子訳『天才たちの日課』(フィルムアート社) 
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<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ