12星座全体の運勢

「一石を投じる」 

暦の上で冬に入る「立冬」直前の11月5日、いよいよ紅葉も深まって、冬支度を急いでいくなか、さそり座の12度(数えで13度)で新月を形成していきます。 

「危機と変革」を司る天王星へと思いっきり飛び込んでいく形で迎える今回の新月のテーマは、「リスクを引き受ける力」。 

それはすなわち、普通に日常生活を送っている分にはまず見つからないような可能性を徹底的に追求し、そのために必要な材料をかき集め、まだ誰も試みていないことに手を出してみる勇気であったり、たとえそれがその界隈のタブーを破る行為であったり、厄介な相手に睨まれることになったとしても、ある種の「賭け」に出ていく姿勢に他なりません。 

私たちの心の深層に潜んでいる集合的な変革衝動というのは、社会や現実の屋台骨を担う恒常性(ホメオスタシス)を維持したいという欲求にかならず切断・阻止・妨害される運命にある訳ですが、その意味で今期はこうした葛藤や対立に伴う緊張をヒリヒリと感じつつも、ひょんなことから「不満を大きく」したり、「自分を黙らせておけなくなって」、「もっとよりよくなるはず」という誘惑がどうにもできないほどに強烈なものなっていきやすいのだと言えるでしょう。 

ギリシャ神話では、トロイア戦争に参加した女神エリスが「戦いの兆し」を持って軍船の上に立って雄叫びを上げると、兵士たちは闘争心と不屈の気力が湧き、戦いを好むようになったとされていますが、今期の私たちもまた、そうしたこれまでの膠着状態を破るための「一石を投じる」行動や企てが促されていくはずです。 
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山羊座(やぎ座)

今期のやぎ座のキーワードは、「遍歴の騎士」。

山羊座のイラスト
「自分の神話を生きることは、たんに一つの神話を生きるこということではない」と主張したのは元型心理学者のジェイムズ・ヒルマンでしたが、このヒルマンの主張は、「多様性」という言葉が一人歩きしたまま、実質的には新自由主義社会が規定するような「勝ち組」になることが人生を規定する唯一の基準となりつつある現代社会にとって、ますます重要な問いかけとなってきているように思います。 
 
ヒルマンは一神教であるキリスト教神学や、合理的な真理を追求する科学であれば、意味の単一性を獲得しようと試みるけれど、神話はわれわれの生に内在する「意味の複数性」を提供するのだとして次のように述べています。 
 
私は多くの人物なのだから、私はさまざまな神話の諸々の断片を上演しているのだ。すべての神話が互いに重なりあっているので、いかなる単一の断片も「これが私の神話だ」という陳述によって他から引き離すことができない。神話的なものとはパースペクティブであって、プログラムではないことを忘れてはいけない。神話を実践に使用しようとすることは、われわれを依然として英雄的自我のパターンにとどめ、その行為をいかに正しく行うかを学ぼうとすることに等しい。」 
 
黙って実行すれば全てが自動的にうまくいく「プログラム」から離れ、一つの神話から別の神話への繋がりをたえず想像し、問いかけていくといった「パースペクティブ」を手に取っていくとき、結果的に、私たちの歩む道はまっすぐではなくなります。 
 
すなわち、その道行きはたくさんの無駄にまみれ、まとまりもなくなり、いかにも英雄的だったりヒロイン的には振る舞えず、ある種の滑稽さを宿していくわけですが、ヒルマンはそれを「洞察を拾い集める遍歴の騎士」と呼びました。 
 
心身の不調を抱えてでも満員電車にのって会社に出社しようとしてしまう日本人は、果たして「遍歴の騎士」になれるのか、いやそうなることを自分自身や身近な相手に許すことができるのか。今期のやぎ座は、そうした「意味の単一性」を切断し、いかに「複数性」を割り込ませていけるかが問われていくでしょう。 
 
 
参考:ジェイムズ・ヒルマン、入江良平訳『魂の心理学』(青土社) 
12星座占い<10/31~11/13>まとめはこちら
<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ