12星座全体の運勢

「一石を投じる」 

暦の上で冬に入る「立冬」直前の11月5日、いよいよ紅葉も深まって、冬支度を急いでいくなか、さそり座の12度(数えで13度)で新月を形成していきます。 

「危機と変革」を司る天王星へと思いっきり飛び込んでいく形で迎える今回の新月のテーマは、「リスクを引き受ける力」。 

それはすなわち、普通に日常生活を送っている分にはまず見つからないような可能性を徹底的に追求し、そのために必要な材料をかき集め、まだ誰も試みていないことに手を出してみる勇気であったり、たとえそれがその界隈のタブーを破る行為であったり、厄介な相手に睨まれることになったとしても、ある種の「賭け」に出ていく姿勢に他なりません。 

私たちの心の深層に潜んでいる集合的な変革衝動というのは、社会や現実の屋台骨を担う恒常性(ホメオスタシス)を維持したいという欲求にかならず切断・阻止・妨害される運命にある訳ですが、その意味で今期はこうした葛藤や対立に伴う緊張をヒリヒリと感じつつも、ひょんなことから「不満を大きく」したり、「自分を黙らせておけなくなって」、「もっとよりよくなるはず」という誘惑がどうにもできないほどに強烈なものなっていきやすいのだと言えるでしょう。 

ギリシャ神話では、トロイア戦争に参加した女神エリスが「戦いの兆し」を持って軍船の上に立って雄叫びを上げると、兵士たちは闘争心と不屈の気力が湧き、戦いを好むようになったとされていますが、今期の私たちもまた、そうしたこれまでの膠着状態を破るための「一石を投じる」行動や企てが促されていくはずです。 
>>星座別の運勢を見る

水瓶座(みずがめ座)

今期のみずがめ座のキーワードは、「脱・身体調教」。

水瓶座のイラスト
やってみようとすればすぐにわかると思いますが、心臓の鼓動であれ、全身の血の循環であれ、ほんらい名前もなく、立場もなく、資格もない自分のリアルな身体の生起現場に居合わせることは、非常に難しいことです。 
 
というのも、ぼくたちの意識や思考は、すぐに外界へと旅立ってしまい、<今ここ>を見失ってしまうから。そして、それだけでなく、「身体の調教」という社会文脈もここに重なってきます。 
 
哲学者の古東哲明は、M・フーコーの「社会の軍事的な夢」として概念化した、身体調教を通して人間主体の奥深くにインダストリアル(勤勉な、しかし機械的)な精神をうえつけ、自動的かつ自発的に社会秩序ができあがるようにしようとする近代社会特有の生き方を、本来は「野性体(遊体)」でしかない身体を、容易に操作可能な「<従順体>への改造」と呼びました。そして、そうした改造がすすめば、「かつてのような暴力的外圧(大権力)によって、各主体を抑圧する手間がはぶける」と。 
 
例えば、近代社会が作り出した諸施設(学校、兵舎、工場、病棟、刑務所、学寮)というのは、みなそんな身体改造(サイボーグ化)のための調教装置であり、そこで私たちはさまざまな「身体図式」をインプットさせられていく訳ですが、一方で私たちは半ば本能的に踊りや体操であったり、瞑想や座禅などの宗教的な身体行など、社会や会社のもとめる生産性とは無縁な活動を通して、すっかり規格化され、抑圧された身体の「野性体(遊体)」としての本質をいま一度活性化したり、身体を従順体へと改造するプログラムコードを無効化しようともがいているのではないでしょうか。 
 
今期のみずがめ座もまた、すっかりやせ細って魅力を失ってしまった近代社会的なリアリティを切り崩すべく、どうしたら「身体の調教」という拘束具を脱ぎ捨てられるのかということに、改めて取り組んでみるといいかも知れません。 
 
 
参考:古東哲明『現代思想としてのギリシャ哲学』(ちくま学芸文庫) 
12星座占い<10/31~11/13>まとめはこちら
<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ