12星座全体の運勢

「闇への畏敬を取り戻す」 

今年も残すところあと約一か月。占星術的には太陽がいて座に移ると、冬も深まり冷え込み厳しくなる仲冬に入ったのだと感じますが、そんな中、12月4日にいて座12度(数えで13度)で新月を迎えていきます。 

今回の新月のテーマは「新しいサイクルの到来と過去のカルマの噴出」。これはヒット作に恵まれて一躍売れっ子になったスターが、若い頃の苦労話や子供の頃のエピソードを掘り起こされて、波乱万丈ストーリーが作りあげられていくのに似ています。そうして、後者が前者に取り込まれるようなかたちで、壮大な叙事詩を織りなしていこうとするのです。 

例えば、詩人の高橋睦郎はかつて21世紀の第二年を迎える年頭に際して書いたエッセイの中で、「前世紀への反省をこめての今世紀の第一の課題は、光への過信に対する闇への畏敬ではないだろうか」と書いていました。 

ここで「光」と言っているのは、人類の進歩への無邪気な信頼であると同時に、尽きることのない人類の傲慢な欲望のこと。そして、「闇」とは人間がどうしたって暴くことのできないこの世界の不可解さであり、そういう不可解さや、簡単には説明のできないことも、この世にはあるのだと受け入れ、判断を保留にしておくだけの余白を残しておくことこそ、先に述べたような叙事詩的な感性の要となるのではないでしょうか。 

今季のあなたもまた、華やかに賑わい始める街の光景のかたわらで、冬ならではの鮮やかさで心に浮かび上がってくる数々の思い出とともに、闇の感覚を研ぎ澄ませてみるといいでしょう。 
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牡羊座(おひつじ座)

今期のおひつじ座のキーワードは、「隠れた川をたどる」。

牡羊座のイラスト
日本は明治以降、いろんな意味で水路を止め、捉えどころのないものに蓋をし、世界を安定化させ、確固とした近代国家となるよう苦心してきました、しかし、150年以上もの時が経過したいま、かえってどこにも逃げ場のない息苦しさだけが顕著になってきてしまっているように思います。 
 
それだけの期間にわたって水の流れに蓋をしてきたことが、そうした社会に暮らす人びとの感覚や世界観にどう影響するのか、ということについて、宗教学者の中沢新一と俳人の小澤實は次のように言及しています。 
 
中沢 移動をする時、僕らはタクシーに乗ったりしますが、江戸時代の人は自分の家の前から猪牙舟(ちょきぶね)に乗って移動するのが基本だったでしょう。わりあい身近なところに水路が動いているという生活感覚がありました。しかし、現代人はその水路を暗渠にしてしまいました。これがいろいろな意味で日本人の想像力に損傷を与えたのではないでしょうか。 
小澤 水の動きは自然を目に見えるものとして感じさせてくれる大切なものなんですね。水が見えるだけで心が解放される感じがあります。 
中沢 感覚を言語で表現する場合でも、陸地にいて海を見ているのと、舟に乗って動きながらとでは、根本的に違うと思います。 
小澤 そうですね。(中略)舟に乗るということには、命を担保にして風景と向かい合うところがあると思います。それは陸上にいるだけの、安定した見方とは違いますね。」 
 
現代社会ではタクシーはお金の力によって、それこそ水のように動いていますが、このお金の動きはある地層から下へは行きません。江戸時代にももちろんお金は動いていましたが、その下には実際の水が流れていて、それはお金よりももっと底なしのものでした。 
 
おひつじ座から数えて「想像力の最果て」を意味する9番目のいて座で新月を迎える今期のあなたもまた、そうした底なしのものの気配や痕跡を身の回りに感じていくところから、闇の感覚を取り戻していくといいでしょう。 
 
 
参考:中沢新一、小澤實『俳句の海に潜る』(角川書店) 
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<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ