12星座全体の運勢

「持ち越して行くべきもの」 

いよいよ激動の2021年も終わり、年が明けてすぐの1月3日にはやぎ座12度(数えで13度)で2022年初となる新月を迎えていきますが、そんな今回の新月のテーマは「超越への意志」。 

ちょうどこの時期は七十二候で言うと「雪下出麦(ゆきわたりてむぎのびる)」にあたり、この雪の下で芽を伸ばす麦のことを、別名「年越草(としこしぐさ)」と呼んだりするのですが、これは秋に発芽して冬を越し、次の年になって実を結ぶ植物(一年草に対して越年草とも言う)の代表が麦であるということに由来しています。 

同様に、年が改まったからと言って、それまでのものが何もかも終わってしまう訳ではなく、むしろ次の年へと何が何でも持ち越していかなければならないものが必ずあるはず。それは大切な人との縁であれ、経験を通じて得られた学びであれ、まだ解決できないままくすぶっている問題であれ、事柄の種類は何であっても構いません。いずれによせ大切なのは、それが確かに在るからこそ自分が強くなれたり、エネルギーが一気に引き揚げられたり、また、人生が未来へと開けていきそうだと心から感じられるかどうかなのです。 

もしそういうものが一つでも見つかったならば、改めて今回の新月の期間には、岩に忘れてはならない教えや掟を刻むがごとく、旧年から持ち越していくべきものとの合一や血肉化を試みてみるといいでしょう。 
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乙女座(おとめ座)

今期のおとめ座のキーワードは、「自分の意識を消すこと」。

乙女座のイラスト
2021年は前年から続くコロナ禍に加え、オリンピックに衆院選に、眞子さまの結婚問題など、とにかくみなが過剰に力んでいて、それはそれで楽しいんだけど、でもやっぱりどこかで疲れてしまった人も多かったのではないでしょうか。 
 
世界にはいろいろなレイヤーがありますが、心身が力んでくると、どうしてもそれを単一のレイヤーで捉えてしまったり、別のレイヤーがあるということ自体を忘れてしまったりしてしまいます。 
 
そういうときは少し、アップテンポになりすぎた精神をチューニングしてスローダウンしてくれるような何かが必要になってくる訳ですが、それには呼吸とかピントを意図的に狂わせる何か、例えば池澤夏樹の『スティル・ライフ』のような小説を読むというのも非常に効果的なように思います。 
 
この小説は染色工場でバイトしている主人公が、佐々井という男に出会って、奇妙な仕事を頼まれ、それが終わると佐々井が去っていくという短い物語なのですが、この佐々井がなかなかに不思議な男で、不意に宇宙の話なんかをしたりするのです。 
 
ぼくたちはそれから川の写真を見た。それは前のと違って、川を降る小舟の舳先から下流に向けられたカメラによって連続的に撮られた一連の写真で、狭い急な渓流が次第に広く緩やかになり、堤防に囲まれ、橋の下をくぐり、一段と濃い青に輝く海が正面に真一文字に見える河口まで延々と続いていた。映画以上の動きがあり、それがなかなかの快感だった。川が終わると、佐々井はまた山に戻った。次第にこういう写真の見方が身についてきて、最初に見た時よりずっと自分の意識を消すことがうまくなった。ぼくの全体が風景を見てとる目に還元された。 
 
部屋のどこかが開いているのか、わずかな風が入ってきて、壁に貼ったシーツを揺らした。映った光景がふわっと動き、それはまるで宇宙全体の背景が一瞬揺れたような印象を与えた。見ていたぼくの脳髄が揺れたのかもしれない。雲となって空中を浮揚し、風のままにゆっくりと流されているような解放感だった。」 
 
今期のおとめ座もまた、現代社会の“速さ”に対する意図的な“遅さ”や“抜きどころ”をつくることのもたらす効果を、改めて引き継いでみるといいでしょう。 
 
 
参考:池澤夏樹『スティル・ライフ』(中公文庫) 
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<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ