12星座全体の運勢

「いっそヒラリと宙返り」 

夏のじめじめとした暑さと梅雨の不安定な天候との合わせ技で、服装選びに悩む衣替えの時期に入った5月30日には、ふたご座9度(数えで10度)で新月を迎えていきます。 

サビアンシンボルは「アクロバット飛行」であり、これは自然のもっとも基本的な働きである"重力”に逆らう力を象徴化した度数です。 

すなわち、年齢を重ねるごとに身体は老化し、体力は落ち、新しいことに挑戦する気概も失せ、心身ともに昔とった杵柄にすがりつき、なるべく現状を維持することに心血を注ごうとする傾向にあり、こうした“重力”はしばしば呪縛ともなってしまう訳ですが、今回の新月ではそうした当たり前のように人生にふりかかってくる呪縛を、いかに解き放っていけるかがテーマになっていくのだと言えます。 

さながら、梅雨の不快な空気感を吹き飛ばす「青嵐(あおあらし、せいらん)」という季語が、青葉を吹きわたる清らかな空気を意味するように、「この年齢ならば」「この立場ならば」こうなって、こうして当然という流れに反するようなアクションやチャレンジを取り入れ、停滞した人生状況に風穴をあけてみるのもアリでしょう。 

いずれにせよ、分かりやすいしがらみから思い切って離れ、地図にない未知の領域へと飛び込んでみることで得られる見晴らしは、あなたの人生をよりエキサイティングなものにしてくれるはず。 

とりわけ、剣の上を渡るとき、氷の上を行くときは。そぞろ歩きを諦めて、いっそヒラリと宙返り。今期はそんなアクロバットを決めていけるかどうかが問われていくでしょう。 
>>星座別の運勢を見る

双子座(ふたご座)

今期のふたご座のキーワードは、「安っぽい人間」。

ふたご座のイラスト
自分に酔った文章というのは総じてウザイものですが、その極北は何と言っても新聞や雑誌などの人生相談コーナーに寄せられる文章でしょう。 
 
例えば、1971年に刊行された深沢七郎の『人間滅亡的人生案内』は十代から二十代前半の若者の悩みに深沢が答えるという悩み相談の形式をとった本なのですが、そこに寄せられている若者の悩み相談がまた、ポエム調だったり、リズミカルな口語体だったりする文章からは自意識が溢れまくっており、ことごとく何も成していない自分に焦り苛立ちつつも、考えすぎなほど自分のことを考えすぎていて、その自分に陶酔している、というウザイ文章の典型な訳ですが、それに対する深沢の痛快な回答が本書最大の魅力となっています。 
 
例えば、「近頃何故か自分が安っぽい人間に思えて、毎日がイヤで仕方ありません」ということに悩み、「本物になるには大学に入り教養を身につけ、社会に出て、人間を知らねばだめでしょうか」と質問を投げかけてきた無職の十八歳青年に対し、「人間に本物なんかありません。みんなニセモノで」あり、本物になるためには~なんていうのは、「アキレタ考え」であるとした上で、次のように助言するのです。 
 
安っぽい人間ならこんな有難いことはありません。安っぽいからあなたは負担の軽いその日その日を送っていられるのです。安っぽい人間になりたくてたまらないのに、人間は錯覚で偉くなりたがるのです。心配なく現在のままでのんびりといて下さい。いちばんおすすめすることは行商などやって放浪すること、お勤めなどしないこと、食べるぶんだけ働いていればのんびりといられます。」 
 
深沢はここで、頭を使ってやたらとモノを考えることを否定し、さびしさを埋めるために群れることを否定し、動物のように欲望に従い、植物のように何も考えず、ひたすら「安っぽい人間」になることを推奨している訳です。 
 
ここでいう「安っぽい」とは、考えすぎの美学で暗い自意識を膨らませる代わりに、深沢自身もまた実践してきた「やりたいようにやれ。てめぇ一人で」という生き様を貫いていけるだけの“パンクさ”のことでもあるのではないでしょうか。 
 
その意味で、5月30日に自分自身の星座であるふたご座で新月を迎えていく今期のあなたもまた、そんな「安っぽい人間」のひとりとして、堂々と、孤独に、道を歩いて行きたいところです。 
 
 
参考:深沢七郎『人間滅亡的人生案内』(河出文庫) 
12星座占い<5/29~6/11>まとめはこちら
<プロフィール>
慶應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ