12星座全体の運勢

「いっそヒラリと宙返り」 

夏のじめじめとした暑さと梅雨の不安定な天候との合わせ技で、服装選びに悩む衣替えの時期に入った5月30日には、ふたご座9度(数えで10度)で新月を迎えていきます。 

サビアンシンボルは「アクロバット飛行」であり、これは自然のもっとも基本的な働きである"重力”に逆らう力を象徴化した度数です。 

すなわち、年齢を重ねるごとに身体は老化し、体力は落ち、新しいことに挑戦する気概も失せ、心身ともに昔とった杵柄にすがりつき、なるべく現状を維持することに心血を注ごうとする傾向にあり、こうした“重力”はしばしば呪縛ともなってしまう訳ですが、今回の新月ではそうした当たり前のように人生にふりかかってくる呪縛を、いかに解き放っていけるかがテーマになっていくのだと言えます。 

さながら、梅雨の不快な空気感を吹き飛ばす「青嵐(あおあらし、せいらん)」という季語が、青葉を吹きわたる清らかな空気を意味するように、「この年齢ならば」「この立場ならば」こうなって、こうして当然という流れに反するようなアクションやチャレンジを取り入れ、停滞した人生状況に風穴をあけてみるのもアリでしょう。 

いずれにせよ、分かりやすいしがらみから思い切って離れ、地図にない未知の領域へと飛び込んでみることで得られる見晴らしは、あなたの人生をよりエキサイティングなものにしてくれるはず。 

とりわけ、剣の上を渡るとき、氷の上を行くときは。そぞろ歩きを諦めて、いっそヒラリと宙返り。今期はそんなアクロバットを決めていけるかどうかが問われていくでしょう。 
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乙女座(おとめ座)

今期のおとめ座のキーワードは、「家の政治性を振り返る」。

乙女座のイラスト
80年代には主に職場の人間関係において使われ、取りあげられてきた「生きづらい」という言葉が、2000年代に入ってから家庭や家族という身近な人間関係においても使われ、指摘されるようになりましたが、2020年代を生きる私たちは、今や「家」や「家族」というシステムそのものを見直し、具体的に変更すべき段階に入っているのではないでしょうか。 
 
そもそも「家」とは、幸福感などの目に見えない恩恵を受け止めるための共同体の単位すなわち「ハコ」であり、社会的現実のもっとも身近なメタファーとして機能してきた訳ですが、逆に、そうした恩恵を一切受けていない社会的状態以前の「自然状態」について、17世紀の政治哲学者ホッブスは「決定的な能力差の無い個人同士が互いに自然権を行使し合った結果としての万人の万人に対する闘争」と定義しましたが、現代の哲学者ジョルジュ・アガンベンは、「ホモ・サケル」すなわち「剝き出しの生」を現に生きている「難民」などを念頭におきつつ、次のように述べています。 
 
さて、ホモ・サケルの生を、あるいはまた、さまざまな点でこれに似たところのある締め出された者、平和なき者、水火の禁じられた者の生を考察してみよう。その者は、宗教的な共同体からも、あらゆる政治的な生からも排除されている。彼は、(…)その存在全体が、あらゆる権利を奪われた剥き出しの生へと還元されている。自分の生を救うには、彼は絶えず逃亡しているか、あるいは外国に避難所を見出さなければならない。だが、つねに無条件の死の脅威にさらされていることによって、彼は自分を締め出した権力と絶えず関連を持っている。彼は純粋なゾーエー(奴隷の生)である。だが、彼のゾーエーは主権的締め出しの内にゾーエーとして捉われている。彼は、主権的締め出しをつねに考慮に入れ、これを避け、欺くやり方を見出さなければならない。この意味で、流謫にある者や締め出された者であれば知っているとおり、この生ほど「政治的」な生はないのだ。」 
 
ここで語られている「剝き出しの生」はフィクションなどではなく、太古からこうした被差別民や賤民、追放者たちは社会の中につねに存在しましたし、同性カップルを受け入れるための法改正や夫婦別姓問題などを念頭におけば、構造的な差別や、世代から世代への負の連鎖というのは、家庭や家族においても見出されるものであり、きっかけさえ得ればそれはすぐに顕在化ないし狂暴化するものであるように思います。 
 
私たちは現にそういう世界を生きているのであり、そうしたいつ起きるとも知れない狂暴化を抑制するのは、共同体を構成する一人ひとりが、自分の中にある攻撃性や無感覚とどれだけ向き合っていけるかにかかっているのだとも言えます。 
 
その意味で、5月30日におとめ座から数えて「政治的関わり」を意味する10番目のふたご座で新月を迎えていく今期のあなたもまた、最も身近な他者との関わりにおいて、自分がいかに振る舞ってきたかという内省から、自身の「家」観を改めてみるといいでしょう。 
 
 
参考:ジョルジョ・アガンベン、高桑和巳訳『ホモ・サケル 主権権力と剥き出しの生』(以文社) 
12星座占い<5/29~6/11>まとめはこちら
<プロフィール>
慶應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ