12星座全体の運勢

「大きな物語に取り込まれていく」

6月21日の夏至の日の夕方16~18時にかけて、蟹座1度で部分日食(新月)が起こり、晴れていれば日本全国で欠けていく太陽が観測できます。これは日食と新月、そして一年のうち最も日が長くなる夏至が重なる特別なタイミングであり、時代の移り変わりの上でもひとつの節目となっていきそうです。そのキーワードは、「大きな物語」。これは例えば「むかしむかし、あるところに……」といった語りで始まる昔話のように、歴史ないし共同体のもつ空間的・時間的射程の中に自らを位置づけ直していくことで、個人として好き勝手に振る舞う自由を失う代わりに、手で触れられる夢のような生々しい物語の中へと取りこまれていく。今季はそんな"クラい”感覚の極致をぜひ味わっていきたいところです。

魚座(うお座)

今週のうお座のキーワードは、「三密」。

魚座のイラスト
今回のコロナ禍ですっかり「密」という言葉が禁忌の対象とされつつも、いかに私たちの日常生活や心身の健康というものが「密」に依存していたかも浮き彫りになったのではないでしょうか。

ただ、密と言えばわが国では古くから密教において用いられてきた言葉で、人間の理解を超えている行為のことを言い、身に印を結び、口に真言を唱え、意(こころ)に本尊を念ずることで、仏のはたらきに一致させていくことを「三密」と言いました。

中でも、顕教に対する密教の優位を説いた空海は、初期の頃の著作である『弁顕密二教論』において、次のように述べています。

仏の本来のあり方や、その境地をみずから享受するあり方においては、みずからの真理を味わい楽しむために、自らの眷属(分身やお伴)とともに、それぞれの身体・言葉・心の三つの秘密の境地をお説きになる。

顕教が誰にでも目に見え理解できる世界のみを扱うのに対し、密教では目に見えないものたちが躍動している不可思議な世界に足を踏み入れていきます。

そこでは、近代人のようにただ自然や物事を客観視するのではなく、天地の中ではたらき、また跳梁跋扈している神仏や精霊、悪霊や死者たちの世界にみずから参与していくべきとされており、そのための「三密」だった訳です。

もっと深く、もっと得体の知れない領域へ。趣味であれ仕事であれ、そんな風に自身のコミットを本格化させていくことがテーマとなっていく今季のうお座にとって、あたかも浅瀬の海とはまったく違う魅力と怖さを湛える深海へと誘っていくような空海の歩みは、まさに先導者のそれにふさわしいと言えるでしょう。


参考:加藤精一/訳『空海「弁顕密二教論」ビギナーズ日本の思想』(角川ソフィア文庫)
12星座占い<6/14〜6/27>まとめはこちら
<プロフィール>
慶大哲学科卒。学生時代にユング心理学、新プラトン主義思想に出会い、2009年より占星術家として活動。現在はサビアンなど詩的占星術に関心がある。
文/SUGAR イラスト/チヤキ