初体験は結婚後。27歳まで恋愛経験ゼロの男性が結婚に至るまでの悩みと本音【モア・ボイス15・前編】
1980年──、いまから約40年前。女性の「性」の本音を語る「モア・リポート」が誕生し、延べ1万2千人を超える女性たちの性を見つめてきました。
そして多様性社会を生きる今、「モア・リポート」と並行して性別を問わずジェンダーレスに20・30代の体験談を取材し、彼らの恋愛やセックスの本音に迫る「モア・ボイス」の連載をお届けします!
恋愛経験少ない、性経験ゼロの男性の結婚への道のり
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ーDATAー
谷村さん(仮名)31歳 /会社員/男性
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27歳まで恋愛経験ゼロだった。
――谷村さんは、27歳まで恋愛経験がなかった?
はい。僕は中高男子校で大学も工学部だったこともあり、女性がほぼいない環境で思春期を過ごしました。就職した会社も男性ばかりで、女性との縁がなかったんです。(谷村さん、以下同)
――恋愛はしたいと思っていた?
したいと思っていました。でも、学生時代は恋愛そっちのけで勉強していました。
社会人になって、男子校時代の友人たちにもどんどん彼女ができ、自分も彼女がほしくなりました。だけど普通に生活するだけでは女性と出会う機会がない。それで24歳の頃、マッチングアプリをはじめて婚活パーティーにも行くようになったんです。
――アプリや婚活パーティはどうでしたか?
最初は緊張しすぎて、女性と全く話せなかったですね。事前にいろいろ勉強して挑んでも、いざ女性を目の前にすると、頭が真っ白になってしまって、会話が続かない。だからまずは場数を踏んで、女性に慣れることから始めようと思いました。
――たくさんの女性とお話しするところからはじめたのですね。
はい。目標は3年以内に彼女をつくることでした。24歳から27歳までの3年間で、街コンに17回参加。アプリで、合計で40名ほどの女性と会いました。
――成果はありましたか?
いいえ。成果はほとんどなかったですね……。次につながっても、一回目のデートで終わってしまいました。
――それはなぜですか?
会話が続かなかったことが大きかったです。そんな中でも次のデートに繋がった人がいて、人生ではじめて告白しました。でも、振られてしまいました。
目標だった「27歳まで彼女をつくる」という目標は達成できないかも……と諦めかけていたのですが、27歳になるギリギリのタイミングで、看護師の女性とつきあいました。
初めての彼女とは1か月で破局
――目標を達成したのですね。
そうですね。でも、つきあいはじめてすぐ連絡が取れなくなったんです。僕が「会いたい」と言うと「仕事が忙しいの!」とキレられました。今まで女性とつきあったことがなかったので、こういうときにどう対処したらいいか分からず……。結局付き合って一ヶ月であっけなく振られてしまいました。
――はじめて女性とつきあってみてどう思いましたか?
自分は「彼女をつくる」ことが目的になっていたんだなと気づきました。告白した後、どうやってつきあっていったらいいか、わからなかったんです。彼女もそういう僕の部分に気づいたのかもしれません。その後、もうひとり彼女ができましたが、この彼女とも3か月で別れてしまいました。
数を重ねて、自分の主戦場に気づいた
――その後、どうしましたか?
アプリや街コンで、数を重ねた結果、自分にはアプリよりも1対1のローテーション形式で、じっくり女性と個別に話せるタイプの婚活パーティが向いていることに気づきました。
――経験値を上げた成果ですね。
はい。でも、わかったのと同時に一気に疲れてしまいました。つきあった後、どうすればいいかわからず、2度も失敗したこともあり……。いったん恋人づくりは休憩することにしたんです。
もしかしたらこの先も、自分はつきあうことが目的になって、つきあえたら誰でもいい=人を好きになれないんじゃないか……と悩んだりもしましたね。
――その後、どうしましたか?
しばらく休んでから、街コンに参加しました。恋愛休憩中に行った神社で引いたおみくじの恋愛運がよかったんです。それで、願掛け的な軽い気持ちで街コンに参加しました。
そこで出会ったのが、のちに結婚することになるリエ(仮名)です。
――願掛け成功ですね。今までとアプローチを変えたのですか?
いえ、基本的に付き合うまでのやり方は今までと一緒でした。ひとつ違うとすれば、僕の気持ちですかね。今までは「彼女作らなきゃ!」みたいな焦りと「どうせダメなんだろうな……」という気持ちが混在して、気持ちに余裕がありませんでした。
でも、この時は「まぁ運が良ければ……」くらいに思っていました。そんな気持ちの余裕がよかったのかもしれません。
デートもキスもセックスも。はじめての連続だった
――女性との向き合い方にも余裕が出たのですね。
そうですね。とはいえ人生でまともに女性とつきあったことがないし、デートもほとんどしたことがなかったので、はじめての連続でした。
――はじめてだったことを教えてください。
デートっぽいデートプランをたてることです。当時の僕は「デートは完璧であるべき!」と考えていました。
リエとは、付き合う前に横浜にデートにいきました。中華街に行って横浜でおいしいランチを……と僕の中では完璧なデートの予定を立てていたのですが、思った以上に早く予定が終わってしまったんです。その後のことを全く考えていなくて……。頭の中がまっしろになってしまいました。
――早々に解散になってしまったのですね。
はい。この時「また振られるかも……」と思ったのですが、リエは「今日は楽しかった。またね」と言ってくれて。「完璧なデートじゃなかったけど、次があるかも!」と、思えました。
そして3回目のデートで勇気を出して告白。OKをもらって交際をスタートさせました。その後、手をつなぐのも、キスも、セックスも……はじめての連続でした。
――どのタイミングで関係を進展させたのですか?
デートはもちろん、手をつなぐのも、キスもセックスも完璧でなければ! と思っていました。でも僕にとっては全て初めて、完璧にしたいからこそ時間がかかりました。手をつないだのは付き合って4回目のデート、キスをしたのはつきあってから10か月後、セックスをしたのは3年後です。
――3年後、ですか?
そうです。キスから先に進むまでに凄く時間がかかって。セックスをしたのは、結婚した後だったんです。
取材・文/毒島サチコ