『シルク ドゥ ソレイユ』のショーへの出演や、マドンナ、クリス・ブラウン、ジャスティン・ビーバーなど世界的アーティストのバックダンサーを勤めているトップダンサー・有働真帆さん。先月11/20(火)、21(水)に行われたテイラー・スウィフトの3年振りの東京ドーム公演「Taylor Swift reputation Stadium Tour in Japan Presented by FUJIFILM instax」では、“ダンスキャプテン”として会場を大いに盛り上げた。 世界を股にかけて活躍する有働さんに、終えたばかりのツアーのことや、拠点であるLAでの生活、ダンスに対しての想いや今後の目標などについてお話を聞いてきました!
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―――まずは、テイラー・スウィフト3年振りの東京ドーム公演を終えた感想や、印象深かった出来事などを教えてください。

「3年前の東京ドーム公演でも踊ったので、“帰ってきたぞ”と思いましたね。日本人ダンサーということでみなさん注目してくださって、ファンの方々の声援も聞こえてきて、とにかく温かかったです。ツアー中は、誰のどのツアーでも夢を見ているような感じで、どこか現実離れしているんですが、今回もそんな感じでしたね。
印象深かったのは、テイラーがライブ終了後に、僕ともう1人の日本人ダンサー・和田マリアさんの手をとり挨拶してくれたことです。家族や関係者も見てくれている中だったので、とても嬉しく、達成感を感じた瞬間でもありました」(有働さん、以下同)

―――ダンスキャプテンとして挑んだ今回ですが、今までと違ったことはありましたか?

「色々なことが違っていましたね。普段の僕は、“踊っている時とまるで別人”と言われるくらいおっとりしているらしく(笑)、仕切るようなタイプでもないので、ダンサーみんなをまとめることに苦労しました。生じた問題をどう解決しようか悩んだり、何かを伝える時、どう伝えるか、どんな言い方をするかなどよく考えたり、とても勉強になったツアーでした。
あと、今まではダンサーとしてただ踊っていれば良かったのが、今回初めて演出家の方々と話をしたり、作る側の世界を今までよりも少し深く関わることによって、“エンターテイメント”として1つの作品を作り上げていく経験ができたことも大きかったです」

―――いつもライブ前はどんな準備をして臨むんですか?

「当たり前ですけど、まずはストレッチ。絶対に欠かしません。コーヒーも飲みますね。あと、本番前に客席からステージを見ることはルーティーンとして大切にしています。お客さんが会場入りしてからでも、会場内をぐるっと歩いて全体を見渡すんです。そうすると、リラックスできたり、“これからここで踊るんだ”と気持ちが高まります」

―――ワールドツアーでは、気候や食べ物が異なる様々な地域を巡るわけですが、体調管理はどのようにされていますか?

「免疫力を高めるためのサプリメントや、不足しがちな栄養素のサプリメントは常に飲んでいます。風邪を引きそうだと感じたら、速攻でビタミンを摂って、水をたくさん飲んで、寝る。寝れるときにちゃんと寝るようにしています」

―――いつも準備万端な状態で挑まれるんですね!!

「基本的にはそうですね。でも実は、2010年にトルコで行われた『シルク ドゥ ソレイユ』の時、具合が悪かったんですよ。練習中水に当たってしまい、本番当日は上からも下からもゲーゲーで(苦笑)。メイク中何度も止めてもらってトイレに行って……。なので、たまーにフラフラなこともあったりはします(笑)」
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―――ステージに立つ時、気持ちの面で大切にしていることはありますか?

「常に“これが最後”もしくは“今日が初めて”と思って全力でパフォーマンスすることです。僕にとっては何日間かあるうちの一日でも、お客さんにとってはその日しかない特別な1日なわけですし、もしかしたらその人にとって、最初で最後の人生1回のライブかもしれない。なので、1回1回、差が出ることなく全力でやることを大切にしています」

―――では、踊る時に大切にしていることはなんですか?

「そのショーやライブがどういったテーマのもので、“自分に何が求められているか”を考え、きちんと理解した上で、自分らしさを出すことです。例えで言うと……塗り絵ですね。塗り絵って、決められた枠の中をどうしようこうしようって、好きなように塗っていくじゃないですか。だから、僕の中では“ダンスの振り付け”=“塗り絵の枠”で、その枠の中を“どう塗るか”=“自分らしさを出すこと”、だと思うんです。 やっぱりダンサーの中には、“これが俺の踊り方だから、その振りは受け入れられない”と、枠からはみ出たこだわりの意見を主張する人もいます。その気持も分からなくはないんですが、決められた枠の中でしっかり踊り切れるのがプロのダンサー。その人のショーに出るのだから、ボスはその人。でも、枠の中で目立てるチャンスがある時はしっかり目立つ、そういうところですね」

―――小さい頃からダンサーが夢でしたか?

「そうですね。マイケル・ジャクソンの『Smooth Criminal』がかっこいいなと思って、DVDを見ながら真似していたのがきっかけかな? そこからダンスを習うようになりました」

―――ジャズやヒップホップなど、様々なジャンルのダンスをやってきたんですよね。今の道に進もうと思ったきっかけは?

「ジャンルに関してはっきり”コレ!”と決めるのはとても遅かったです。NYに留学していた時、周りには『俺はヒップホッパーになる』、『ジャズダンサーになる』ってしっかり決めていた人達が多かったんですけど、僕は全部のジャンルをやっていたし、その全部が好きで。“どれかに絞らないと成長できないのかな”と悩んだ時期もありましたが、やっぱり全ての“ダンス”が好きだし、とにかく自分がうまくなることだけを考えて練習してたんです。そうしたら、たまたまマドンナのツアーに声を掛けていただいて。その時に、“こういうステージに立つ仕事がしたいな”と思ったのがきっかけですね」

―――12歳からダンスを始めてから今に至るまで、挫折を味わったことはありましたか?

「そんなのいっぱいありますよ(笑)、本当にいっぱい。NYでの留学中は、学校のレッスンで踊れなかったりとか。振りが全く入ってこなくて、クラスを抜けたこともありました。他にもオーディション1回目の選考で落ちたり、そんなことばかりでした」

―――そういう時、どのようにして気持ちを高めたり、モチベーションを保ってきたんですか?

“自分はできなくて当たり前”と常に思っておくことです。挫折と感じたり、できなくて落ち込むってことは、それをできると過信している自分がいるから。だから、できないことがあって当たり前。落ち込んでダラダラしている時期がもったいないので、すぐ切り替えるようにしてきました」
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―――マドンナ、クリス・ブラウン、ジャスティン・ビーバーなど、これまでたくさんの世界的アーティストのバックダンサーを務めてきた中で、最も印象に残っているライブやショー、曲を教えてください!

「一番を決めることは絶対にできません、ムリです(笑)!! 絞れません! 踊ったアーティスト1人1人に思い入れがありますし、お気に入りの曲もそれぞれにあります。......最近だと、ジャスティン・ティンバーレイクのバックで踊った、今年2月の『NFL スーパーボウル』と2017年の『アカデミー賞 授賞式』が強く印象に残っていますね。彼と仕事をするのが1つの目標だったので、2回とも大きな舞台で共演できたことがとても嬉しく、ものすごい達成感でした。『NFL スーパーボウル』当日は、緊張して1日中何も食べられなかったです。
あとは、マドンナならヘルシンキでやったショー。10万人かな? とにかく人の量がすごくて。その時の景色はよく覚えています! あと、ジェイソン・デルーロは、モロッコでのライブ。それもものすごい人がいて、ステージも大きくてよく覚えてます。それからクリス・ブラウンは、「Grass Ain’t Greener」という曲が、振り付けも含めてすごく好きです。自分の中で、“あれは自分の曲”と勝手に思っています(笑)!」

―――目標にしているダンサーはいますか?

「目標としている方はたくさんいます! でも、圧倒的に尊敬しているのは、師匠的な存在であるNYのダンサー・ブライアン・グリーンです。その方のダンスに対する知識の深さと、実際にそれを踊ることができる技術力、追求心……そして、ダンスカルチャーへの愛の深さ。本当に尊敬しています」
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Photo: Jordan Lynn

●うどう・まほ LAを拠点に海外で活躍するトップダンサー。2018年度「NFL スーパーボウル」でジャスティン・ティンバーレイクのハーフタイムショーに出演。クリス・ブラウン、テイラースウィフト、マドンナ、ファーギー、ジェイソンデルーロのワールド・ツアーダンサー。またマライアキャリー、グウェンステファニー、アリーシャキース、ジャスティンビーバー等々の大物アーティストとアワード賞、TVなどで共演する世界が注目するダンサー/振付師。テイラー・スウィフトの「Reputation Stadium Tour」には、ダンスキャプテンとして参加した。

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後編は明日、12/16(日)更新。お楽しみに!