コン・ユ主演『トランク』は複雑で難解な展開がクセになる大人向けのミステリーロマンス【韓ドラオタクおすすめの1本】
コン・ユとソ・ヒョンジンが初共演!
韓国ドラマ大好き! なライターが、ぜひおすすめしたい作品を紹介する不定期連載コラムです。今回は、契約結婚仲介サービスで出会った男女の奇妙な結婚生活を描いた『トランク』のあらすじや見どころを紹介します。

『トランク』
全8話
出演:コン・ユ、ソ・ヒョンジンほか
Netflixシリーズ「トランク」独占配信中
あらすじ
音楽プロデューサーのジョンウォン(コン・ユ)は、元妻ソヨン(チョン・ユンハ)から復縁の条件として別の女性と1年間契約結婚することを提案され、非公然のマッチングサービス会社・NMからやってきたインジ(ソ・ヒョンジン)と偽装夫婦となる。少しずつお互いを知っていくジョンウォンとインジだが、湖のほとりで5,000万ウォン(約500万円)以上する限定盤のトランクが発見されたことにより、ある事件の渦中に巻き込まれていく。
ここが見どころ!
偽装結婚から始まるラブストーリーは韓ドラのお決まりとも言えるテーマですが、2024年11月29日に公開された『トランク』はちょっと違います。再婚相手は期間限定の結婚をあっせんする組織で妻を職業としている女性で、その再婚を提案し相手をマッチングしたのが元妻。さらに元妻も同じマッチングサービスを使って別の男性と再婚するという、胸キュンとはかけ離れた偽装結婚なんです。
W主演を務めるのは『トッケビ ~君がくれた愛しい日々~』などのコン・ユと、『浪漫ドクター キム・サブ』、『なぜオ・スジェなのか』などのソ・ヒョンジン。映画『ワンドゥギ』で知られる作家キム・リョリョン氏の同名小説を原作に、『大丈夫、愛だ』、『私たちのブルース』のキム・ギュテ監督が演出を、『花郎<ファラン>』のパク・ウニョン氏が脚本を手掛けています。

元妻ソヨンから“罰と休暇”という名目でインジとの再婚を迫られるジョンウォン。
コン・ユが演じるジョンウォンは、美術館のような大豪邸に住む超セレブの音楽プロデューサー。父親がとんでもない富豪だったため裕福に育ったいわゆる御曹司なのですが、その父親の家庭内暴力のせいで心に慢性的な闇を抱えていて、睡眠薬がないと眠れず、お互いに別の人と1年間再婚したら復縁するという無茶苦茶な条件も受け入れるしかないほど元妻ソヨンに精神的に依存しています。
コン・ユといえば、代表作である『トッケビ ~君がくれた愛しい日々~』が韓国で放送されてから8年以上になるわけですが、映画『トガニ 幼き瞳の告発』や『新感染 ファイナル・エクスプレス』、『82年生まれ、キム・ジヨン』、『イカゲーム』とさまざまなコン・ユを観ていても、筆者の中ではやはり『トッケビ』のアジョシのような、穏やかで優しくて、ちょっと茶目っ気もあるキャラクターが一番に思い浮かぶんですよね。バラエティなどで見せる素の姿も好奇心旺盛でキュートなイメージがありますし。だからこそ、常に不安そうで寂しそうで余裕がない“病んでいるやさぐれ御曹司”のジョンウォンを演じている姿は新鮮。パブリックイメージとは異なるコン・ユの新境地が見られる作品だと感じました。

韓国国内に3個しかない高級トランクを所有しているインジ。
配信されてすぐにイッキ見したのですが、それほど楽しみに待っていたのはコン・ユの相手役がソ・ヒョンジンだから。『僕が見つけたシンデレラ~Beauty Inside~』では月イチで姿が変わってしまうお騒がせトップ女優役を愛嬌たっぷりに演じ、『なぜオ・スジェなのか』では冷徹なカリスマ弁護士役を演じてイメージを一新したように、さまざまな役をこなす豊かな表現力にくわえ、耳に一音ずつはっきりと入ってくる明瞭なセリフ回しの大ファンでして。本作でも持ち前のセリフ回しがジョンウォンに突き放されるような態度をとられても淡々と妻としての業務をこなすインジというキャラクターに説得力を与えています。

巨大な階段とシャンデリアが印象的なジョンウォンの豪邸。
そんなインジにも心の闇が。5年前、結婚直前に婚約者が失踪、ストーカー被害にも遭っていました。結婚とは何か、真実の愛とは何かを見失ったインジは、期間限定の契約妻としてこれまでに4回結婚し、5回目でジョンウォンと夫婦に。「結婚はうんざり」と言いながらさまざまな事情で結婚を必要とする人たちの妻となり、自分の荷物はトランク1つ分だけなのに元婚約者の家はそのまま残しているインジ。いわゆる“普通の結婚”を求めていた過去の自分に対する懺悔や、やり場のない怒り、悲しみを抱えているように見え、彼女も出口の見えない闇を彷徨っているのだと感じました。

湖で発見されたトランクの中身とは?
物語は、銃声が聞こえたという湖でインジのトランクと同じ型のトランクが発見されたところから始まります。その後男性の遺体も発見され、警察は殺人事件として捜査を開始。事件が発覚した現在と5ヵ月前のジョンウォンとインジの結婚生活が交差して描かれる複雑さや、状況を説明するようなセリフを削ぎ落した演出は、まるで小説を読んでいるかのよう。主演の2人も「見る視点によってさまざまな解釈が出てくるだろう」(コン・ユ)、「行間を読むべきところが多い」(ソ・ヒョンジン)と語っており、静けさの中に緊張感が漂うストーリーが斬新で魅力的。腰を据えて観たくなる難しさがクセになります。
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離婚後もジョンウォンを支配しようとするソヨン。
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インジにつきまとうオム・テソン。
自ら離婚しておきながらジョンウォンの家に隠しカメラを仕掛けて監視しているソヨン、再び動き出したインジのストーカーのオム・テソンと、登場人物全員が怪しくてクセあり。湖で発見された遺体は誰なのか、トランクはインジのものなのか。ラストまで「犯人はあの人か? いや、この人かも?」とハラハラさせられる展開が続いて目が離せません。
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インジの前夫(顧客)役でチョン・ギョンホがカメオ出演。
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元婚約者の家を管理する隣人ドダム役に映画『パラサイト 半地下の家族』のイ・ジョンウン。

奇妙な結婚生活の結末は?
ミステリーを絡めながら嫉妬、憎しみ、支配欲、依存とさまざまな愛の形を描いた本作。お互いの傷を癒しながら本当の愛を知っていくジョンウォンとインジが美しく、尊かったです。マッチングアプリが普及したこの時代に配偶者を派遣するマッチングサービス会社が登場する設定もおもしろく、予想していなかった結末に思わず涙が。視聴者に余白を与える独特な雰囲気をぜひ楽しんでください。
配信情報
『トランク』
全8話
Netflixシリーズ「トランク」独占配信中

韓国系ライター。K-POPアイドル、俳優にインタビューを行い、現在はソウルと東京を行き来して活動中。美容/コスメ好きで、美容雑誌やWEBマガジンでは韓国美容のコラムを担当。私生活でも3日に1度はポーチに新入りコスメが増える。韓国人ビューティユーチューバーのメイク動画を見るのが癒し。