平手友梨奈の“今”が知りたくて

「欅坂46」を離れ新たなステージに立った平手友梨奈。自分の足で歩み始めてから約1年、彼女の中ではどんな変化が起きているのだろうか? 今、あらためて語る平手友梨奈のソトガワ(仕事)とウチガワ(素顔)、そこから見えてきた「変わらない」想いーー。今回は、2021年MORE2月号掲載企画から、インタビュー記事をお届けします。
平手友梨奈
ひらて・ゆりな●2001年6月25日生まれ。8作連続で「欅坂46」のセンターを務め、2020年1月に脱退を発表。今作への出演をはじめパリコレクションのオープニング映像にモデルとして参加するなど、活躍の場を広げている。2021年には映画『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』に佐羽ヒナコ役として出演する

平手友梨奈の“ソトガワ”

下を向く平手友梨奈
新たな道を歩き始めた平手友梨奈の第一歩となる作品が映画『さんかく窓の外側は夜』だ。今作は霊をえる男・冷川(岡田将生)と霊がえる男・三角(志尊淳)が怪奇事件に挑むミステリー。平手さんは物語のキーパーソンとなる呪いを操る女子高生・ヒウラエリカを演じている。

「オファーをいただいてから返事をするまでの間に時間がかかってしまうのも、何ごとにおいても最初は緊張してしまうのも、人見知りなのも、初対面の人には自分から話しかけることができないのも……ずっと変わらないですね」(平手友梨奈さん、以下同)

新たなフィールドで活躍をスタートさせた今、仕事に対する意識に何か変化があったか平手さんに尋ねると、返ってきたのは 何も変わらない という言葉。そんな平手さんのために監督が用意したのが〝予約席〟のプレート。共演者が集まるストーブの近くにそれを置いた平手さん用の席を設置。そこからコミュニケーションはスタート。

「そこで皆さんが〝平手ちゃん座って、しゃべろうよ〟と優しく声をかけてくださって。撮影はすごく楽しかったです。岡田さんと淳君は年齢がちょうど6歳ずつ離れていて、本当の兄妹のように仲よくなれました

そう微笑みながら、一緒に焼肉店に行った話、あき時間に遊んだ話、ドッキリを仕掛けた話を楽しそうに語ってくれた。クランクアップする時には「終わりたくない」と感じたほど「いい現場だった」そうだ。

「完成した作品は新鮮な気持ちで観ることができました。今作はあえてエリカの部分しか台本を読まなかったので。私の知らないところで、冷川と三角はこんなふうに動いていたんだ、と」

自分の台詞だけ読んだ理由は、

「ほかの人の動きや感情、物語の展開をあらかじめ知りすぎてしまうと、演じていて自分が面白くないし、新鮮味がなくなってしまうから

彼女が大事にしているのは「カメラの前に立った時、心がどう動くのか」。

顔に手を当てる平手友梨奈
現場で台本を開かない理由もまた同じ。

「私、覚えるのが遅いんです。それは台詞に限らず歌やダンスも同じ。何ごとも時間がかかる、時間をかけて覚えるタイプなんです」

一瞬一瞬の心の動きを見逃さないように、覚えるべきものはしっかりと自分の中に入れて現場に向かう。そこで飛び出したのもまた 変わらない という言葉だ。作品の世界にグッと入り込み表現する。それは歌もダンスも芝居も同じ。

「楽曲の中でも、ステージでも、誰かになろうとしたり、なっていたり。今までも私はずっと演じていたんだと思うんです。よく今までのお仕事と女優のお仕事の違いについて聞かれるのですが、私にとっては両方とも同じ。場所や形が変わっても表現するのは変わらない。今までも表現してきたし、これからも表現し続けるんだと思います」

平手友梨奈の“ウチガワ”

後ろ姿の平手友梨奈
表舞台での活躍においては「今も昔もこれからもきっと表現することは変わらない」と語った平手友梨奈。しかし、ひとりの女の子としては? 新生活をスタートさせてから約1年、心の内側ではどんな変化があったのか、19歳の素顔を探る。

——まずは公開中の映画『さんかく窓の外側は夜』で演じたヒウラエリカについて聞きたいと思います。彼女の好きなところはどこですか?

「なんだろう、映画ではシリアスというか、あまり喜怒哀楽を見せない感じなんですけど。原作では普通に笑ったり、叫んだり……。特別な力を持ってはいるんですけど、中身は本当に普通の女子高生らしくて。まず、そこに惹かれました」

——ヒウラエリカには共感する部分がたくさんあったとか。

「はい、わからなかったのは、自分が人を呪って殺せないところや、黒い涙を流せないところくらいでした」

——今作の登場人物たちはほかの人が持たない力を持っている。同時に、他者にはなかなか理解してもらえない孤独も抱えています。唯一無二の表現力で注目を集めステージに立ち続けてきた平手さんだからこそ、その〝孤独〟もまた理解できたのかなと勝手に想像してしまうのですが。

「そうですね……でも、私だけじゃないと思うんです。誰もがきっと、どこかで孤独を感じているんだと思う。だからこそ、同じ気持ちを感じている人や自分の気持ちを理解してくれる人に出会うとうれしいというか」

——平手さんもそんな経験をしたことはありますか?

あります、全然あります。音楽や映像が〝同じ気持ち〟の出会いを届けてくれることもありますし。この世界に入ってからずっとついてくれているマネージャーさんだったり、メイクさんだったり。私の気持ちを理解してくれてサポートもしてくれる、周りの人たちとの出会いには本当に感謝していますし。心許せる人と一緒に食事する時間は私にとって大切な楽しい時間でもあって……」

——最近、そんな心許せる人たちと何を食べましたか?

「こないだ、モツ鍋を……。(ここでマネージャーさんから「でも、平手はモツを食べられないんですよ。それを忘れてお店を予約してしまった」という衝撃の発言が)。ふふ、そうなんですよ。でも、お鍋だけじゃなくサイドメニューもあったので……大丈夫。うん、全然おいしかったです」

実はおちゃめで“普通の女の子”な平手友梨奈は、これからも変わらない。

横を向いて座る平手友梨奈
——先ほど「ヒウラエリカの普通の女子高生らしい部分に惹かれた」と言っていましたが、そこもまた平手さん自身と重なる部分だったりするのですか?

「何が普通かはわからないけど、私自身は自分のことを〝普通の女の子〟だと思っています。普通に笑うし、ふざけたりもするし、イタズラするのも好きですし」

——この間も、マネージャーさんにイタズラを仕掛けたらしいですね。

「はい。女性マネージャーさんの家に泊まりにいった時、お風呂に入っている間にインターホンの音をコッソリ変えました。突然、知らない音が鳴り出したら面白いかなと思って(笑)」

——はははは‼ 平手さんのおちゃめな一面が垣間見れたところで次の質問です。新生活をスタートさせてから約1年。お仕事に関しては「変わらない」という言葉が何度も飛び出しましたが、プライベートはどうですか? 何か変化はありましたか?

「なんだろう、何か変わったかな。人を驚かせたり喜ばせるのが好きなのはずっと変わらないし。水辺と雨が好きなのも、大きな音と閉所と怖い大人が苦手なのも、夜はなかなか眠れないのも、変わらない」

——これまで平手さんは「自分に自信がない」、「自分のことを好きになれない」と公言してきましたよね。「自分のことを好き」と思える部分は見つかりましたか?

「いや、そこも変わらないです。今でも自信はないし、自分も好きにはなれない

——大事なのは〝過去〟でも〝未来〟でもなく常に〝今〟。目の前の一瞬一瞬に全力を注ぐ姿勢も変わらないですか?

「はい。同じです」

——2021年は20歳になります。社会的には〝大人〟として扱われる年齢になりますが、平手さんの中で何か変化は起きそうですか?

「いや、たぶん変わらないと思う。18歳になる時も、19歳になる時も、何も変わらなかったし。年齢は数字でしかないという感覚もずっと変わらない。いろいろと考えてみたけれど……うん、私自身はやっぱり何も変わらない。環境は変わったのかもしれないけど、私の中で特に大きな変化はなかったんだと思います」

——では、最後に平手さんの〝これから〟について教えてください。

「目の前にあるものがすべてなので、未来のことは考えることができない。それも変わらないこと。なので、明確なビジョンはなくて。なんか、変わらないことばかりで……ごめんなさい」

——いや、そのまっすぐでブレないところが“らしさ”だ思います。

「でも、なんか、せっかく変化について聞いてくださっているので。一個くらい欲しいですよね。私も〝変わりました!〟と何か言いたい……。(マネージャーさんに向かって)近くで見ていて〝変わったな〟と思うことある? え、焼き鳥屋さんでねぎまを頼むくせに、鶏肉だけ食べるのはやめたほうがいい? それ、変わったことじゃなく、変えてほしいことじゃん(笑)。ちなみに私、ねぎはいつもマネージャーさんに食べてもらっているんです。でも、やめません。風味が大事なんだから、あのねぎ風味がついた鶏肉がおいしいんだから!(笑)」

映画『さんかく窓の外側は夜』

さんかく窓の外側は夜
霊が視える特異体質に悩まされていた三角(志尊淳)は突然現れた除霊師の冷川(岡田将生)に見出され、一緒に仕事をするように。連続殺人事件を調査する中、死者たちが口にする“ヒウラエリカ”という名前。彼女の正体、そして、事件の真相とは……。新感覚の除霊ミステリーエンターテインメント。●1/22(金)〜公開
©2021 映画「さんかく窓の外側は夜」製作委員会 ©Tomoko Yamashita/libre
https://movies.shochiku.co.jp/sankakumado/
撮影/オノツトム(ACUSYU) ヘア&メイク/Mao(maxstar) スタイリスト/笠原百合 取材・原文/石井美輪 構成・企画/福井小夜子(MORE) ジャケット¥64000・パンツ¥36000/マックス アンド コー ジャパン(マックス アンド コー) ブラウス¥30000/ビリティス(ビリティス・ディセッタン) イヤリング¥15500/ソムニウム ベルト¥12000/タロウホリウチ 靴・靴下/スタイリスト私物