12星座全体の運勢

「風の便りを受け取って」 

2月19日には節気も「雨水」に変わり、雪や氷が溶けていよいよ春に向けて草木も芽吹き始めますが、そんな折の2月27日にはおとめ座で満月を迎えていきます。 

今回の満月は、2月18日に体制と制約の土星と激しくぶつかり合った変革と解放の天王星と歩調を合わせつつ、後者の影響力を一気に押し広げていくような配置となっていますが、そのテーマを端的に表すとすれば「癖や偏りの昇華」となるでしょう。 

つまり、無理にエネルギーを集中させて単発的に興奮していくというのではなく、みずからの身体の要求を素直に聞いて、瞬間瞬間の生命の流れにうまく乗っていくなかで、ふつふつと静かな快感が湧いてきて、ごく自然に発散が起きてくるというイメージです。 

ちょうどヒヤシンスの花が開いていく時期でもありますが、幕末に伝わったこの花には「風信子」という漢字が当てられています。「風信」は風の便りという意味も持っており、風に漂うほのかな香りがそっと春の便りを届けてくれますが、今期はそうした微細な変化の流れにきちんと身をもって反応・順応していけるかどうかが、各自においていつも以上に問われていくのではないでしょうか。 

射手座(いて座)

今期のいて座のキーワードは、「ショックの正体」

射手座のイラスト
気付くといつの間にか行きつけにしていた店が閉店していた。そんな事態がもはや日常的光景にさえなってきてしまっている昨今ですが、その他にも不意に飛び込んだ電車やお店にほとんど人がいなかったり、急速にその様相を変えていく都市に何がしかショックを受けている人も少なくないはず。あるいは、ショックを受けていること自体が標準状態になってしまっているのではないでしょうか。 
 
そんな現代人の内的状況に通じるものがあるであろう書物のひとつに、ヴァルター・ベンヤミンの「ボードレールにおけるいくつかのモチーフについて」があります。 
 
19世紀に現れた大都市の群衆は、それ自体が文学者たちに途方もなく大きく、強い印象を与えていきましたが、中でもベンヤミンはエドガー・アラン・ポーの群衆の描写に目を向けます。 
 
大都市の群衆は、それをはじめて目のあたりにした人びとの心に、不安、嫌悪、戦慄を呼び起こした。ポーにおける群衆にはなにか野蛮なところがある。規律は彼らをかろうじて制御しているにすぎない」 
 
しかしボードレールにとっては、群衆は決して厭わしいものではありませんでした。 
 
大都市の群衆は否応なしに彼を引きつけ、遊歩者としてその一員にしたのだが、この群衆が非人間的な性格を持っているという思いは、そのときでもやはり彼の心を去らなかった。彼は自分を群衆の共犯者とし、しかもほとんど同じ瞬間に、群衆から離れる。」 
 
こうした群衆への愛憎半ばする思いこそがボードレールの詩作の基盤となっていった訳ですが、ベンヤミンはこうした都市の群衆の一員として「遊歩者」になっていくことを、次のようにも捉えていました。 
 
生産過程が(機械によって)加速されるとともに、そこでの退屈が生まれてくる。遊歩者は悠然とした態度を誇示することで、この生産過程に抗議する。」 
 
そもそも生まれた時から当たり前のように都市の中に自分を置いてきた私たちですが、コロナ禍の都市で受けるショックの根源にあるものの正体もまたここにあるのかも知れません。つまり、それはほとんど機能していないように見える行政や新自由主義経済への黙認に伴われる“憂鬱”に他ならず、そこではみずからが「遊歩者」であることへの自覚が改めて促されているのではないかと。 
 
今期のいて座もまた、いま都市と群衆に対して自分がどんな印象を受け取っているのか、そしてそれが自分の今後の活動においていかなる前提条件となっているのか、存分に振り返ってみるといいでしょう。 


参考:ヴァルター・ベンヤミン、久保哲司訳+浅井健二郎編訳『ベンヤミン・コレクションⅠ―近代の意味』(ちくま学芸文庫) 
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<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ