12星座全体の運勢

「土壇場で人を救うもの」 

5月5日に「立夏」を過ぎると、野に煙る緑にまぶしい日差しと、初夏らしく気持ちのいい気候が続きます。昔は梅雨の晴れ間を指した「五月晴れ」も、今やすっかりこの時期特有のさわやかな晴天を指すようになりましたが、そんな中、5月12日にはおうし座21度(数え度数22度)で新月を迎えていきます。 

今回の新月はテーマは「(自分だけでなく周囲の)バイブレーションのレベルを上げていくこと」。古来より、飢饉の影響で出る死者は実は春から夏にかけてがピークだったと言われてきましたが、西郷信綱の『古代人と夢』によれば、疫病や飢餓などで人々がみな死に絶えてしまうような事態に陥ると、天皇は「神床(カムドコ)」に寝て夢のお告げを得ることで、やがて疫病はおさまり国家安平になったという逸話が伝えられているそうです。 

これはつまり、人間にとって本当の意味での危機的な状況とは、物質的な欠乏に加え霊的目標の飢餓に陥った状況を指し、逆にそれに飢えている人びとと霊的滋養―導きとなるようなイメージやビジョン等を分かちあうことができれば、乗り切ることも可能となるということではないでしょうか。 

四季にはそれぞれの到来を知らせる風があり、春ならば東風(こち)、冬は木枯らしと決まっていて、夏といえば「風薫る」。すなわち、青葉若葉を吹き抜けて、さあっと吹いて新緑の香りを運んでくる強めの南風がそれにあたりますが、同時にそれは、生きるか死ぬかという人間の土壇場で人を生かしてくれる“いのちの手触り”のようなものでもあったように思います。 

12日のおうし座新月前後までの今期は、そうした生きるか死ぬかの土壇場を乗り切っていく上で、自分なりの美学をいかに持てるかどうか、貫いていけるか否か、ということが問われていくでしょう。 

牡羊座(おひつじ座)

今期のおひつじ座のキーワードは、「心身一如」。

牡羊座のイラスト
精神的な探究が深まれば深まるほど、肉体が崩壊を引き起こしていくという逆説は、プラトン以来の西洋の先鋭的な思想家や芸術家が伝統的に抱える矛盾でしたが、創造性や21世紀的ライフリテラシーなどの研究に長年従事してきた美学者の熊倉敬聡は、『瞑想とギフトエコノミー』(2014)の中でそのような事態に陥る原因を「呼吸を蔑ろにし、抑圧したからに他ならない」と断じています。 
 
そして、対する東洋ではブッダが実践したヴィパッサナー瞑想やヨーガなど、むしろ呼吸の鍛練に基づいて「心身一如」の境地を探究する伝統があったとして、次のように述べています。 
 
そこでは心の静まり、呼吸の静まり、体の静まりが、三つ巴となって深まりあいながら、いわば螺旋的に心身の構造化が蕩尽され、すなわち心身が脱構築化されて、解脱へと赴くのです。それは、心身の完璧な静まり、「止」を求めるとともに、その「止」の中で、生命のエネルギーが全焼することを求めます。」 
 
「心身の構造化の蕩尽=心身の脱構築化」や「止の中で生命エネルギーが全焼する」といったくだりは少し難解ですが、これは例えば、自己をありのままに見ることを徹底していくヴィパッサナー瞑想において、最終的に「見る」自己さえ失われ、<空>が開かれる過程を思い浮かべてみるといくらか腑に落ちるのではないでしょうか。 
 
そして、その<空>とは単に「から」なのではなく、逆に宇宙的な充溢が無限に静かに満ちる<空>なのであり、それは「エロスの浄楽」であり「大日如来の光臨」であり、「太陽からの純粋贈与」に近いものという風にも考えられます。 
 
今期のおひつじ座もまた、そうした東洋的な瞑想的探究の伝統に自身を繋げていく中で、自分なりの「心身一如」すなわち精神と肉体を同時に生かしていく道を見出していきたいところです。 


参考:熊倉敬聡『瞑想とギフトエコノミー』(サンガ) 
12星座占い<5/2~5/15>まとめはこちら
<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ