12星座全体の運勢

「断ち切るための旅に出よう」 

今年は6月21日に太陽の位置が最も高くなる夏至を迎え、夜も最も短くなったなかで、6月25日にはやぎ座3度(数えで4度)で満月を形成していきます。 

今回の満月のテーマは、「運命的な旅の始まり」。すなわち、慣れ親しんだ居場所やこれまで繰り返してきた習慣から離れ、あるいは、習慣そのものが変わってしまうような機会に応じていくこと。 

ちょうど6月の末日には各地の神社で「夏越の祓(なごしのはらえ)」が行われます。これは一年の折り返しに際して半年分の穢れを落とし、これから過ごす半年間の無病息災を祈願する行事なのですが、その際、多くの場合、「茅の輪くぐり」といって神社の境内に建てられた茅(かや)製の直径数メートルほどの大きな輪をくぐっていくのです。 

そして、旅の始まりには、往々にしてこうした「禊ぎ」の儀式を伴うもの。例えば、ジブリ映画『もののけ姫』の冒頭でも、主人公アシタカはタタリ神から受けた呪いを絶つために、まず髪を落としてから、生まれ育った村を去り、はるか西に向けて旅立っていきました。 

ひるがえって、では私たちはどんな汚れを落とし、その上で、どちらに旅立っていけばいいのでしょうか? 

おそらくそれは、アシタカがタタリ神に鉄のつぶてを撃ち込んだ真相を知ろうとしていったように、いま自分が苦しんでいる状況の根本に何があって、何が起きており、その震源地の中心に少しでも近づいていこうとすることと密接に繋がっているはず。 

今回の満月では、いま自分はどんなことを「もうたくさんだ」と感じているのか、そもそも何について知れば「こんなこと」は起きないですむのか。改めて考えてみるといいかも知れません。 
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双子座(ふたご座)

今期のふたご座のキーワードは、「猿を愛して何が悪い」。

ふたご座のイラスト
グリム童話であれ日本の昔話であれ、閉塞しきった状況を突き破るのは、得てして平時には“異常”として忌避される力や性質を備えた人物でしたが、現代のホラー作家・平山夢明の作品にも、「たびたび何らかの境界線を越える、あるいは限界を突き破る人物が出てくる」ことで知られています。 
 
例えば、『ヤギより上、猿より下』という短編小説であれば、変態ジイサンに調教された末に売春宿に売られたポポロというオランウータンに惚れこんだお爺ちゃんがそれに当たります。 
 
物語の舞台はそんなとある山のふもとにある売春宿『フッカーズ・ネスト』。ここには春をひさぐ50代の三人の姐さんたちがいるのですが、案の定、売り上げがジリ貧となったところに、新入りキャストとしてヤギの甘汁とオランウータンのポポロがやってきた。さすがに姐さんたちも動物に負けることはないだろうと思いきや、ポポロがまさかの大ブレイク! 姐さんたちが嫉妬や怒りから暴走して醜態をさらしていく中、ついにポポロのサービス料金が姐さんたちより一万円高くなるのですが、そこに登場してくるのが「純情漫画さん」という、どこかの社長さんだというお爺ちゃんです。 
 
「ふえ」純情漫画さんはぱっちりした目の玉を一度だけ見開くと、直後に手を叩いて笑い出しました。「なあんだ。それじゃあ、正真正銘、あいつら猿より下になっちまったんじゃないか……あっははは」 
「ですから、純情さんがそれじゃあ駄目ということでしたら、どうか憐れだと思って人間のあいつらを買ってやってください」 
「はは。ああ、いいよいいよ。儂はね、猿を抱いてるんじゃないんだ。ポポロというひとつの魂と人生を共有させて貰ってるんだ。猿だって人間だって地球に暮らす同じ生命じゃないか。それに人間は元は猿だ。だから猿を愛して何が悪いとすら思ってる。だから、こうして料金が上がるのは逆に嬉しいくらいなんだよ。ポポロを単なる道具くらいにしか考えない奴らが減るだろうからね。いいよ、いいよ。払うよ払うよ。ごっくんごっくん」 
あたいたちが話してる間にも、ポポロはしきりに手招きをしています。 
「じゃあ、ごゆっくり。おほほほほ」 
 
ここで「純情漫画さん」の口から出た「ひとつの魂と人生を共有させて貰ってる」という言葉の背後には、明らかに「文化」と「自然」という異質な原理のハイブリッドとしての「シャーマニズム」があり、宗教学者の中沢新一の言葉を借りれば、それは「人間の神化への可能性を開いている」のだと言えるのではないでしょうか。 
 
今期のふたご座もまた、異常な人間的しがらみをほどくことができるだけの“自然”へと自身の軸足をずらしてみるといいかも知れません。 


参考:平山夢明『ヤギより上、猿より下』(文春文庫) 
12星座占い<6/13~6/26>まとめはこちら
<プロフィール>
應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ