12星座全体の運勢

「社会的秩序の相対化」 

いよいよ春もたけなわに入り、花々が咲いては散ってゆき、それを「惜しむ」思いが深まっていく頃合いに変わってきました。そんな中、「春分」から「清明」へと節気が移ろう直前の4月1日に、おひつじ座11度(数えで12度)で新月を迎えていきます。 

今回の新月のテーマは、「天の采配への同期」。すなわち、ふだん地上を這うように生きている自分の選択や振る舞いのひとつひとつが、みずからの意思や社会の空気によってのみ決定されているのではなく、それらを超えたところで働いている宇宙的な原理によって突き動かされているのだという実感を改めて深めていくこと。 

例えば、春になってあたたかくなってくれば冬鳥の雁は北へ帰っていきます。かつてはその姿が日本のどこでも見られ、子供たちは「棹になれ、鉤になれ(まっすぐに連なれ、鉤形に並べ)」とはやしたてたそうですが、そうして新たな季節の訪れを知らせてくれる渡り鳥が道に迷うことなく、何千キロもの長距離を移動し、それを毎年繰り返すように、私たち人間もまた、食事や睡眠などのごく身近なレベルの日常的行動から、経済活動や軍事侵攻などの集団的行動まで、日々何らかのかたちで、地球の磁気や気候の変動などの惑星規模の影響力によって左右されているのです。 

ここのところ、従うべき法と秩序とは何か、ということが人間中心的なものへ寄り過ぎていましたから、今回の新月では、いかにそうした社会的な通念や常識を相対化し、宇宙的サイクルや天の采配に同期して、自然体へと還っていけるかということが、各自の状況に応じて問われていくことでしょう。 
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山羊座(やぎ座)

今期のやぎ座のキーワードは、「割りきれない問いを持ち続けること」。

山羊座のイラスト
戦争が起きると、その苦しみは大抵の場合、最終的に社会の中の弱き存在、すなわち子供や病人などにしわ寄せがいきます。持てる大人が栄え、持たざる子供が亡くなる。その意味するところは何なのでしょうか。 
 
例えば、精神科医ロバート・コールズが長年かけて子供たちの内面世界における神秘体験を集めた『子どもの神秘体験 生と死、神・宇宙をめぐる証言』という本に、次のようなエピソードがあります。 
 
それはイスラム教の子供と話し合っていたとき、その子はいじめられっ子でしたが、何とか自分を強くしてほしいと頼んだら、アッラーが力を与えてくれたのか、ぐっと相手を睨みつけることが出来たのだと語ったと言います。 
 
けれど、話はそこで終わらずに、いじめられっ子が自分を強くしてくださいと神に祈ったらどうなのかという疑問が生まれ、これに答えてほしいとその子はアッラーに祈った。すると、神の声が聞こえてきて、「一生悩み続けていいのだ。悩みをしまいこんで忘れないよう祈りなさい」と語ったそうです。 
 
そして神の答えに、この子は当惑してしまった。神ならばもっと明快な答えを与えてくれると期待していたのに。けれど、その後もしばらく考え続けるうちに、「悩み続けることに意味がある」ことを悟ったのだと言うのです。 
 
このエピソードには、子供たちが大人の体験するそれをはるかに超えた純粋な光を感じることがある一方で、大人の計り知れぬ闇をもまた経験しているのだという事実を垣間見ることができるのではないでしょうか。 
 
4月1日にやぎ座から数えて「心の支え」を意味する4番目のおひつじ座で新月を迎えていく今期のあなたもまた、子供に負けぬように、世界を狭く小さくしてしまわないように、簡単には割り切れない悩みを抱えてみるのもいいのではないでしょうか。 
 
 
参考:ロバート・コールズ、桜内篤子訳『子どもの神秘体験 生と死、神・宇宙をめぐる証言』(工作舎) 
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<プロフィール>
慶應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ