12星座全体の運勢

「社会的秩序の相対化」 

いよいよ春もたけなわに入り、花々が咲いては散ってゆき、それを「惜しむ」思いが深まっていく頃合いに変わってきました。そんな中、「春分」から「清明」へと節気が移ろう直前の4月1日に、おひつじ座11度(数えで12度)で新月を迎えていきます。 

今回の新月のテーマは、「天の采配への同期」。すなわち、ふだん地上を這うように生きている自分の選択や振る舞いのひとつひとつが、みずからの意思や社会の空気によってのみ決定されているのではなく、それらを超えたところで働いている宇宙的な原理によって突き動かされているのだという実感を改めて深めていくこと。 

例えば、春になってあたたかくなってくれば冬鳥の雁は北へ帰っていきます。かつてはその姿が日本のどこでも見られ、子供たちは「棹になれ、鉤になれ(まっすぐに連なれ、鉤形に並べ)」とはやしたてたそうですが、そうして新たな季節の訪れを知らせてくれる渡り鳥が道に迷うことなく、何千キロもの長距離を移動し、それを毎年繰り返すように、私たち人間もまた、食事や睡眠などのごく身近なレベルの日常的行動から、経済活動や軍事侵攻などの集団的行動まで、日々何らかのかたちで、地球の磁気や気候の変動などの惑星規模の影響力によって左右されているのです。 

ここのところ、従うべき法と秩序とは何か、ということが人間中心的なものへ寄り過ぎていましたから、今回の新月では、いかにそうした社会的な通念や常識を相対化し、宇宙的サイクルや天の采配に同期して、自然体へと還っていけるかということが、各自の状況に応じて問われていくことでしょう。 
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水瓶座(みずがめ座)

今期のみずがめ座のキーワードは、「死者とのコミュニケーション」。

水瓶座のイラスト
21世紀に入ってすでに20年以上あまりが経過したいま、改めて「戦争の世紀」であった20世紀とは決定的に異なる21世紀的ライフリテラシーを掲げるとするならば、その筆頭に挙げられるべきは、おそらく「近代合理主義の克服」でしょう。 
 
科学技術が必ずしも人類を幸せにはしないことを嫌というほど痛感させられたにも関わらず、近代合理主義を適切に相対化してくれるような発想の見直しはあまり進んでいないように思えますが、例えば神道の世界においてやはり近代合理主義が疑問視されて以降、見直されるようになった人物に国学者の平田篤胤がいます。 
 
もともと神道というのは現世の問題が中心であり、死後の霊魂の行方などはほとんど仏教任せで議論されることもなかったのですが、篤胤(あつたね)は主著とされる『霊の真柱』において、死者の行く場所はこの世から隔絶された「黄泉」の世界などではないとして独自の説を提示しました。 
 
死者の行く冥府というのは、この生者の住む顕国を離れて別の場所にあるのではない。この顕国の内のどこにでもあるのだが、幽冥であって、現世とは隔たっており、見えない。(…)さて、その冥府からは人のしていることがよく見えるようだが、顕世(うつしょ)からは、その幽冥を見ることができない。」 
 
来世、すなわち死者の行く場所は、地下深くの「黄泉」や、はるか遠方の「極楽浄土」などではなく、むしろ生者にきわめて身近なところにあるのだと考えたのです。この近傍霊界論ともいわれる篤胤の立場においては、死者は「社、または祠などを建て祀りたるは、そのところに静まり坐れども、しからぬは、その墓の上に鎮まり」いるのだと言うのです。 
 
死者の世界から生者の世界を見ることはできるが、生者から死者を直接見ることはできないとしながらも、篤胤は両者のコミュニケーションやネゴシエーション自体を否定することはなく、むしろそうしたコミュニケーションによってたえず動的に揺れ動くものとして霊魂の行方をとらえたわけです。 
 
4月1日にみずがめ座から数えて「コミュニケーション」を意味する3番目のおひつじ座で新月を迎えていく今期のあなたもまた、みずからのコミュニケーションを規定する世界観に、いかに近代合理主義とは異なるアイデアや発想を取り入れていけるか、ということがテーマになっていきそうです。 
 
 
参考:子安宣邦/校注『霊の真柱』(岩波文庫) 
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<プロフィール>
慶應義塾大学哲学科卒。卒業後は某ベンチャーにて営業職を経て、現在西洋占星術師として活躍。英国占星術協会所属。古代哲学の研究を基礎とし、独自にカスタマイズした緻密かつ論理的なリーディングが持ち味。
文/SUGAR イラスト/チヤキ