セックスしたいけど、恋はしない。恋愛感情を抱かないセクシュアリティの話【モア・リポート38】

1980年──、いまから約40年前。女性の「性」の本音を語る「モア・リポート」が誕生し、2017年までに延べ1万2千人を超える女性たちの性を見つめてきました。

そして、恋愛やセックスがいっそう多様化している現在。MORE世代の体験談を取材した新「モア・リポート」をお届けします！

「セックスしたい＝恋愛感情」ではない

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ーDATAー
内海さん（仮名）32歳／独身／会社員
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恋愛感情を抱いたことがない

ーー内海さんは人に恋愛感情を抱いたことがない？

そうですね。人生で「恋愛感情」を誰かに抱いたことはないです。性的欲求はありますが、恋愛感情は、性欲に直結しません。

私の性的対象は同性ですが、同性に対しても、恋愛感情は湧かないんです。（内海さん、以下同）

ーーなぜだと思いますか？

物心がついた時から、そういう感情はありませんでした。もちろん人に対して、大切だとか、愛情を抱くことはあります。でも、世間一般でいう「恋愛感情」は経験がなく。

誰かのことを好きすぎてドキドキするとか、「（恋愛感情として）好きだからセックスをしたい」という気持ちはないですね。

ーー「セックスしたい＝恋愛感情」ではないのですね。

はい。私にとって、セックスと恋愛感情はイコールではなく、完全に別のものです。

ーー「性欲＝恋愛感情」と考える人も多いと思います。

そうですね。私と同じセクシュアリティの人はそれで悩むこともあると思います。
私は、自身のセクシュアリティで悩んだ経験はなくて。それは「相方」と呼べる同級生がいたのも大きかったかもしれません。

恋人でも、友人でもない。「相方」という存在

ーー「相方」とは、どんな存在ですか？

恋人でも友人でもない、10年以上のつきあいになる女性です。お互い支え合いながら今まで過ごしてきました。

ずっとべったりいるわけではないのですが、つらい時はいつもそばにいてくれる大切な存在です。

ーーそれは恋人でも友達でもない？

そうですね。世間一般でいう恋人であれば、性的な欲求が含まれると思うのですが、私は彼女に対して一切性欲は湧きません。それは彼女も同じです。

親友以上の関係ではあるので、友達とも言えないですね。だからお互い「相方」と呼んでいるんです(笑)。

ーー素敵な関係ですね。10年以上続く恋人や友人がいる人は少ないと思います。

そうですね。私たちはほどよい距離感でつきあっています。普段は干渉しないけれど、ピンチにはかならず駆けつける、そういう“距離感”が、私たちがずっと相方でいられる秘訣かもしれません。

セックスする相手は掲示板で。性のグラデーションが安心感に

ーー性欲はどこで解消していますか？

LGBT向けの掲示板があり、そこでお互いの指向が合致した人と会ってセックスをすることもあります。

ーーそういう掲示板があるのですね。

はい。「恋愛はしない、でも性欲はある」という方もいますし、そういう人と後くされない関係を持つこともありますね。

最近は私のようなセクシュアリティを、アロマンティック（※他者に恋愛感情は抱かないが、性的欲求は抱くセクシュアリティ）と表現したりするようです。

アロマンティック・アセクシュアル（※他者に恋愛感情も性的欲求も抱かないセクシュアリティ）という言葉は最近有名になってきました。

ーーアロマンティック・アセクシュアルは、先日『恋せぬふたり』というドラマでも取り上げられていましたよね。

はい。その言葉が世に出始めたのはつい最近で、それまで「私のセクシュアリティって何なんだろう？」と、考えることもあったのですが、名称がつくことで、安心感を持って、自身のセクシュアリティの説明をすることができるようになりました。

とはいえ、人それぞれ、性にグラデーションがあるので、一概に「私はこれ！」というのは難しいケースもあります。

だけど、名称があることで「それに近いセクシュアリティかな」と、説明しやすくなったのはとてもいいことだなと感じています。

相方との未来。そしてこれから

ーーこれから相方とはどのような関係を築いていきたいですか？

今後、同棲して一緒に生活することを考えています。制度が整ったら結婚したいなと考えています。

私は「恋愛したい相手」はいないけど、「セックスしたい相手」「人生を支え合いたい相手」はいます。そしてそれは、違う人です。

だからこれを全部一緒にしてしまう今の結婚制度について、少し違和感を感じることもあります。

相方は私にとって「人生を支え合いたい相手」です。相方とずっと一緒にいられる世界があればいいなと思っています。