1980年──、いまから約40年前。女性の「性」の本音を語る「モア・リポート」が誕生し、2017年までに延べ1万2千人を超える女性たちの性を見つめてきました。

そして、恋愛やセックスがいっそう多様化している現在。MORE世代の体験談を取材した新「モア・リポート」をお届けします!

親との関係=恋愛関係

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ーDATAー
関口さん(仮名)27歳 /独身/カウンセラー
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「お前のためを思って言ってるんだ!」

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――DV彼氏とお付き合いをしていた経験がある?

はい。大学時代に付き合っていた彼がモラハラ気質でした。当時、彼の言動は”モラハラ”ではなく、愛だと思っていたのですが。(以下、関口さん)

――彼のどのようなところが愛だと感じたんですか?

当時彼は「お前のためを思って言ってるんだ」と言って人格を否定されることが多かったんです。

それに対して私は「これが愛なんだ」「私のために言ってくれてるんだ」と思い込んでいたんですよね。彼は理想の恋人だと。一種の洗脳状態だったと思います。

でも、実家に戻った時、なにげなく彼のことを両親に話したら「それはモラハラじゃないか?」と父が言い始めて。

――両親が最初にモラハラに気づいたのですね。

はい。私の父は、某大学の心理学部の教授で。すぐに彼を断ち切るように言われました。父の指示通りにスマホを解約して、彼と絶対にコンタクトをとれないようにしたんです。

――父親のおかげでDV彼と別れることができた、と。

はい。最初はそう思っていました。

でも、彼と別れて「なぜ、私は彼のことを好きになってしまったんだろう」と考えていた時にあることに気づいて。

――どんなことに気付いたのですか?

「彼と両親は似ている」ということです。

恋愛関係は育った環境で決まる

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――どこが似ていたのですか?

両親の口癖は「お前/あなたのことを思って言ってるんだぞ!」でした。それは、彼とまったく同じ。

――両親もモラハラ気質だった、ということですか?

はい。彼と別れるまで”理想の両親”だと思っていたのですが……。

私の父は大学教授、母は専業主婦でした。父は社会的にも立場があり、母が家事育児をこなす。そして私を含め、子どもが3人。

はたから見たら、すごくいい家庭に見えていたと思います。実際、母からよく「あなたはすごく恵まれているのよ」とよく言われていました。

――たしかにそれだけ聞くと素敵な家庭のイメージを持ちます。

そうですよね。でも実際は、機能不全家族(※ストレスが日常的に存在している家族状態のこと)だったと思います。

両親の仲が良さそうに見えましたが、よくよく考えてみると、母は、父の経済的DVとワンオペ育児で常にヒステリー状態でした。

父は私に「こんなことすらできないのか? お前の将来はないぞ」「これが普通なんだ」「俺の言うことが間違ってるっていうのか?」と言って。当時はそのすべてが両親の愛情だと思っていたのですが。

それは私が彼と付き合っていた時とまったく同じ状況だと気付いたんです。

父におびえながら「あなたは恵まれている」と私に語りかける母の姿が、彼と付き合っていた頃の私の最終形態にも見えました。

恋愛関係と家族関係はイコールだ、このままじゃいけない、と感じた瞬間でしたね。

負の連鎖を断ち切りたい。母と自分が重なって

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ーーご自身がモラハラをする彼に惹かれた理由は家族関係にあるのではないか、と。

はい。最初、私が彼に惹かれたのは「この人、両親みたいに私のことを思ってくれてるんだ!」と感じたから。

でも、今考えると、それは愛ではなく支配だったのだと思います。

彼と別れてから「どうして母と父は結婚したのだろう」と、両親の家族関係についても考えてみました。

母は農家の娘で「女は家で家事だけをするべき」と凝り固まった考えの両親のもとで育てられました。一方、父は研究者家系に生まれ、勉強していないと親から殴られるのが日常茶飯事。

でも「そのおかげで自分も大学教授になれたんだ」と自慢げに語る父の姿を見て、なんとなくこの2人が結ばれたのも分かるような気がしました。

父も母も間違った愛の元で育ったのではないか……。私にとって加害者だと思っていた親自身も、見方を変えれば間違った愛の被害者ではないか……と。

そして私は、その負の連鎖を断ち切りたい、と思ったんです。

これからのこと

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――その後、どうしたのですか?

実家を出て、ひとり暮らしを始めました。うつ病をわずらい、2〜3年大学を休んでいた時期もあるのですが、その間に心理学の勉強をして、現在はカウンセリングの仕事をしています。

心理学を勉強する中で、自身と向き合うことができました。男性との出会いもあり、今は大好きな恋人と一緒にいます。

また、恋愛に悩む人に向け「ウィル」というTwitterアカウントで恋愛相談も始めました。

恋愛がうまくいかない時は「彼が悪い」「自分が悪い」と、どちらかのせいにしがちですが、まずは自分が育ってきた環境を振り返ってみることが大切だと思います。

カウンセリングをしていても、恋愛がうまくいっていない方は、親子関係が原因となっているケースが多いです。

支配を愛情と感じてしまっていたり、親に脅されたことを無意識に思い出し、恋人に対しても不安になったり。

一つ一つ向き合っていくことで解消し、穏やかで安心できる恋愛ができるようになるのではないかと思っています。

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取材・文/毒島サチコ