【創刊45周年特別連載】45歳。私が選ぶ道 ——菅野美穂さん

創刊45周年を記念して、MOREと“同い年”の女性にこれまでの歩みを振り返ってもらう短期集中連載がスタート。第1回はこれまでに20回もMOREの表紙を飾ってくれた、菅野美穂さんです。

2022年MORE7月号掲載企画から、インタビュー記事をお届けします。

「“楽”だけが、幸せじゃない。喜怒哀楽が人生の彩りなんだと思う」

菅野美穂さん
「20代の自分が30代の自分をつくる——。人生はレゴのようにつながっていくものなんですよね」

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20代の頃 ——海外を旅して、自分の価値観がいかに偏っているか気づいた

「20代の頃を振り返ると、いただいた仕事を精いっぱいやるだけで、とにかく無我夢中でしたね。刺激的な仕事をさせていただいてありがたいと思いつつ、どこか健康的でないところがありました。

というのも、当時は人の目をいつも気にしていたんですね。『自分が何を好きか』ではなくて、『これを言ったら、どう思われるか』ということばかり考えていて。そんな時、本を読んでいたら、『30代の自分をつくるのは、20代の自分だ』という一文を見つけたんです。それでハッとしました。

20代という10年は、みんなに平等に与えられた時間で、それをどう使うのかは自分次第なんだなって。だとしたら、30代への投資になるように建設的に使いたいなと思ったんです。それでまず始めたのが、英語の勉強でした。

ハリウッドを目指すためではなくて(笑)、海外を旅するためです。外国へ行った時、英語が話せたら楽しいし、もっと自由になれると思ったんですね。

最初にひとり旅をしたのは、22歳の時、ロンドンでした。リュックサックにつっかけサンダルで5つ星ホテルに行き、『予約してないですけど』と言ったら、『部屋はありません』とあっさり断られました(笑)。今考えると当たり前で、欧米ではマナーが重んじられるので、服装も大事なんですよね。『つっかけでスミマセン、次はマノロで行きます!』と誓った私でした(笑)。

その後もインドやタイなど、さまざまな国を旅して歩きました。航空券などの手配も自分でやったので、普段どれだけ周囲の人にサポートしてもらっているかわかったし、何より海外に行くと、自分の価値観がいかに偏っているかに気づかされるんです。日本では当たり前だと思っていたことが、外国では180度、違っていたりする。

そういうことを経験して、自分が解放されていくのを感じました。日本に戻った時も『ここだけがすべてじゃない』と思えるから頑張る力になる。旅のおかげで、心の風通しがよくなったと思います」
2007年MORE10月号
30歳の誕生日にMOREの撮影で訪れた屋久島
2007年MORE10月号

30代の頃

「30代になると、20代の頃より、肩の力も抜けて楽になりました。責任ある仕事も任されるようになって、やりがいも感じていましたけれど、その一方、結婚は遠のいていきましたね(笑)。母が29歳で結婚したので、自分もそのくらいで……と漠然と考えていたのですが、忙しくて、それどころではなくて。

ただ、焦りはなくて、いい出会いがなければ、ひとりでいい、と思っていました。無理に結婚するより、心から尊敬できる人との出会いを待ちたいと思っていたんです。結局、結婚は35歳の時。

私、結婚前は、『結婚しても変わりません』というのが理想だったんですよ。でも、してみたら、そんなことは無理でした(笑)。自分を丸ごと自分自身に捧げられる時期って、人生の中で限られているんだなと知りました。だから結婚前に、精いっぱい、仕事を頑張っておいて、本当によかったと今は思います」

45歳の今

「今は2人の子どもに恵まれて、子育てを優先させながら仕事をしています。海外旅行でトラブルに巻き込まれた経験もあるので、子育てもうまく対処できるはず……と思っていたら、これがインド旅行よりハードで(笑)、地獄のようなため息をつきながら過ごしています。そんな私が今すごく思うのは、『楽しい』とか『楽』だけが幸せじゃないってことです。毎日、子どもに怒ったり、自己嫌悪で悲しくなったりしますけれど、そういう喜怒哀楽が人生の彩りなんですよね。

そういえば、40歳の時、『2回目の成人式がきちゃった』と思って茶道を始めました。60歳くらいで形になればいいかなと思っています。30代の自分が40代をつくるし、40代の自分が50代をつくるし。人生って、そうやってレゴのようにつながっていくんですね、きっと」

悩める読者へのアドバイス

焦らなくたって大丈夫。ゆっくり答えを探して
「結婚を焦ってる人、いると思います。でも、結婚したらゴールってわけじゃなくて、長い人生の中のひとつの出来事にすぎないんだと思います。だから焦らず、ゆっくり相手を見極めて」

PROFILE

Miho Kanno
1977年8月22日生まれ、埼玉県出身。93年に女優デビュー。以降、数々のドラマ、映画、CMに出演し、高い演技力に定評がある。今年の8月に45歳を迎える
Kanno's 45years
15歳 ドラマ『ツインズ教師』で女優デビュー
18歳 ドラマ『イグアナの娘』で演技力が高く評価される
22歳 ドラマ『愛をください』主演、自身が歌う主題歌も大ヒット
25歳 映画『Dolls』で第40回ゴールデン・アロー賞映画賞受賞
30歳 ドラマ『働きマン』主演
35歳 映画『大奥〜永遠〜[右衛門佐・綱吉篇]』出演
    結婚
37歳 第一子を出産
39歳 ドラマ『砂の塔〜知りすぎた隣人』主演
41歳 第二子を出産
43歳 ドラマ『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』主演、
    映画『明日の食卓』主演
    (主演作の一部を抜粋)
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撮影/TISCH(MARE) ヘア&メイク/千吉良恵子(cheek one) スタイリスト/青木千加子 取材・原文/佐藤裕美 構成・企画/内海七恵(MORE)