12星座全体の運勢

「引いた視点で俯瞰する」

暦の上で秋となる「立秋」の直前、まさに夏真っ盛りの8月4日に水瓶座で満月を迎えていきます。この時期にはお盆をひっくり返したような激しい雨(覆盆の雨)が降るとされてきましたが、今回の満月は変革と普及をつかさどる「天王星」と激しい角度をとっており、まさに意識の覚醒を促されるタイミングとなりそうです。

テーマはずばり、「現時点での自分のレベルの把握」。2020年の年末にはいよいよ約200年単位の占星術上の時代の移り変わりがあり、モノの豊かさの「土」の時代から、情報や繋がりの多様性が価値基準となる「風」の時代へなどと言われていますが、今回の満月はそうした時代の変化にどこまで同調できているか、またできていないのかということが浮き彫りになるはず。

そこにはかなりの個人差が生じるものと思われますが、とくに痛みや違和感、プレッシャーの感じ方などは、これまでの生き様やその蓄積、ふだん触れている情報や立ち位置、周囲の人間関係、属するコミュニティなどによってまったく異なってくるでしょう。

ともに地球に生き、一見同じ位置にあるように見える人間同士でも、進化における種類と段階の違いは厳然と存在するのだということを、今期はよくよく念頭に置いていくべし。

蟹座(かに座)

今期のかに座のキーワードは、「哀しみのまなざし」。

蟹座のイラスト
南アフリカ出身の作家クッツェーの小説『恥辱』は、52歳の芯から腐ったような男を主人公としたタイトルの通りどうしようもないお話です。

大学の准教授だけれどやる気はゼロで、無教養な人間や田舎者をひたすら軽蔑にしている一方で、性欲をコントロールできずに教え子に手を出すものの反省はゼロ。そのため、その一件で大学を追われた後も転落の一途をたどっていくという非常に重たいストーリーなのですが、どうしたことか読み出すと止まらないのです。

おそらくそれは重くて禍々しい展開を、ひたすら俯瞰的な文体で描いているからでしょう。例えば、主人公が教え子と会話している次のくだり。

「ふたりの関係を心配しているのか?」
「そうかも」彼女は言う。
「なら心配いらない。気をつけるよ。行きすぎないようにしよう」

行きすぎる。この手の話で、〝行く〟だの〝行きすぎる〟だの、なんのことだ? 彼女の行きすぎと、こちらの行きすぎは、果たしておなじなのか?

小説としてはまだ序盤の段階にも関わらず、まるで語り手はすでに主人公を見放しているかのように本音を漏らしています。こうした箇所がその後も随所に出てくるのです。ただ、それは単に主人公を見下しているというよりは、哀しみのまなざしであり、単純な善悪や白黒はっきりじゃないグレーな人間を見つめるそれなのだということも分かってきます。

そして、まさに今のかに座に求められているのも、自身のことをこうしたまなざしをもって見つめていくだけの距離感でしょう。

今期のかに座もまた、「自分を甘やかした考えや行動」や「楽な選択」に走るのではなく、自分を通して人間という事象の裏の裏までを見通すだけの奥行きをあなたの人生に持ち込んでいきたいところ。


出典:J・M・クッツェー、鴻巣友季子訳『恥辱』(ハヤカワepi文庫)
12星座占い<7/26~8/8>まとめはこちら
<プロフィール>
慶大哲学科卒。学生時代にユング心理学、新プラトン主義思想に出会い、2009年より占星術家として活動。現在はサビアンなど詩的占星術に関心がある。
文/SUGAR イラスト/チヤキ